和平交渉 第167話 リサのエリー像
2国間和平交渉会議4日目朝
ここはグラン連邦国首都、べマン市。
エリーは早朝に目覚め寝ているルイカを置いて部屋を出ていた。ここは父ジョンの執務室。
「エリー様、以上が昨日の周辺国の状況です。特に問題は有りませんでした」
エリーの前のソファーに座っているリサが報告を終わり微笑んだ。
「ありがとう。リサさん、まとまっていてわかりやすかったです」
エリーはリサの顔を見て微笑み尋ねる。
「リサさん、緊張が取れたようですね。良かったです」
リサが直ぐに立ち上がり戸惑った顔をして言う。
「はい、自分でもわかります。確かにそうです。エリー様のご家族が普通の方で良かったです」
「そうですよ。私の家族はそんな怯えるようなものはいませんよ。それで2国間条約は明日仮調印出来るのですね。エランお姉様も一安心されていますね。諸国の不穏な動きも無く良かったです」
エリーはリサを見て少し間を置いて尋ねる。
「アンドレアへは戻らなくても良いのですか? ブライアン師団長にも会いたいのではないですか」
リサが不思議そうな顔をして答える。
「何故です。定期報告はしていますし、特に必要では有りませんが」
「それなら良いのですが。大切な部下をお借りしているので、こちらも一応気を使っているのですよ」
エリーはソファーから立ち上がりコップに水を注ぎ一気に飲み干した。
「エリー様から離れずお役に立ってと命を受けております。ですのでエリー様がもう良いと言われるまで離れる事は有りません」
リサはエリーに深く頭を下げた。エリーはそれを見て言う。
「リサさん、今まで一緒にいて私のことをどう思っていますか?」
エリーがリサの瞳を見つめる。リサは少し困った顔をして間を置いて答える。
「私は……、本心を申し上げれば、エリー様の本当の従者になりたいと思っております。もちろん、私の実力ではとても叶わぬことも承知しております。レベッカさんやセリカさん、ユーリさんが洗礼を受けエリー様と従者契約を結んでおられる事は……、正直羨ましいく嫉妬心さえ芽生えます。エリー様は何においても私の理想のお方です。私の全てを捧げてお仕えしたいと思っております。ぶちまけてしまえば、私はもうアンドレアなどどうでも良いと思っているのです。エリー様さえ良ければそれで良いと……、申し訳有りません。このような物言いはダメですね。もっと自分を高めエリー様の従者に相応しいものになります」
リサは言い終わり顔を伏せた。エリーはリサの手を優しく握って言う。
「リサさん……、勘違いしてるよ。私はそんな立派な人間じゃないよ。リサさんは幻想を膨らませているだけだよ。だって……私が女神の加護を持っているからみんな集まって来る。それだけだよ」
エリーは少し機嫌の悪い顔をしてリサを見ると、リサは悲しい顔をして言う。
「違います。エリー様の……、いえ、これ以上はもうやめておきます」
リサはそう言ってエリーの手を離して離れた。エリーはリサに体を寄せて顔を覗き込み微笑み言う。
「朝食食べましょう!」
リサは少し動揺したあとに無理な笑顔で言う。
「はい、食事に参りましょう」
エリーはリサの手を取り並んで部屋を出て家族食堂へと向かった。
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