和平交渉 第165話 母の思い
エリーはニールから心配される。
2国間和平交渉会議3日目夕方。
ここはグラン連邦国首都、べマン市。
エリーと父ジョンはアーサー卿の屋敷からブラウン商会へ帰ってきていた。帰りの車中、父ジョンは当たり障りの無い話をしてアーサー卿との話しについては何も触れなかった。
エリーは今、ブラウン家母屋2階家族食堂で夕食の準備をしていた。母ニールがエリーに微笑み目で合図をする。エリーは頷きニールのそばに寄った。
「お母様、何か?」
ニールはエリーの手を引っ張ってリビングへと移動した。
「エリー……、あなた大丈夫なの……、私達のために無理をしているのでは無いのですか?」
ニールがエリーの肩を掴み顔を覗き込む。
エリーはニールの顔を見て微笑み言う。
「お母様、無理はしていませんよ」
ニールはエリーを見て言う。
「ちょっと来なさい」
ニールはエリーの手をまた引っ張る。エリーは少し驚きニールの顔を見ると少し怒った顔をしていた。そしてニールの寝室に入るとドアを閉めて施錠をした。
「エリー! 正直に言いなさい!」
ニールがエリーに声を上げる。いつも穏やかなニールが強い口調で言ったのでエリーは驚いった。
「お母様……、何をおしゃっているのですか? さっきから怒っていらっしゃるのは何故ですか?」
エリーが戸惑ったようにニールに言った。ニールはエリーの顔を見て悲しい顔をする。
「エリー……、なぜアーサー卿を以前から知っているのですか? 今日もお願い事をしたのでしょう?」
エリーはニールの顔を見て言う。
「はい、アーサー様にご依頼はしました。ですがお母様に怒られるようなことは心当たりがありません」
ニールはエリーの顔を見て瞳からは涙が出ている。エリーはニールを見て考えた。
(お母様……、何をそんなに悲しんでいるのか? わからない。アーサー様に頼み事をしたことがそんなに悪いことだったのか?)
ニールはエリーを抱き寄せ呟く。
「なんで、エリーあなたは大陸のためにそこまで自分を犠牲にするのですか? 嫌なことはしなくて良いのですよ」
「お母様! 私は自分を犠牲にしていると思ったことなど、有りませんよ」
エリーは機嫌の悪い顔をしてニールを両手で押し返し言った。
ニールは涙を流しながらエリーの手を持って言う。
「私は知っているのですよ。アーサー卿は少女嗜好者です。裏の噂ですがほぼ間違いない情報です。あなたはアーサー卿に依頼の見返りに体を提供したのでしょう! 以前からの知り合いと言っていましたね。いつから関係があるのですか?」
エリーはニールの顔を見て怒った顔をする。
「お母様! そんなことする訳がないでしょう! あり得ない!」
ニールはエリーに声を上げる。
「エリー! 普通アーサー卿に直ぐに面会など出来ないのです。ですがエリーは直ぐに面会出来た。何故ですか?」
エリーは顔を真っ赤にして怒った声で言う。
「私は、特異異能指定者です! ですから中枢院のメンバーであるアーサー様とは以前から面識があったのです。色々支援してくださっていたのです。関係はそれだけです。私が何故!? アーサー様と肉体関係など有りませんよ!」
ニールはエリーを見て頬を触り言う。
「本当なのですね……。嘘では無いのですね」
エリーはニールの瞳を見つめて頷き言う。
「はい、女神ローゼに誓って」
ニールはエリーを抱きしめて呟く。
「ごめんね……、エリーを信じられなくて。うん、その感じだったら嘘はついてない……」
ニールはエリーの髪を撫でながら言う。
「ジョンはかなり気落ちしてたから……、伝えておくね。エリー、さっきまでごめんね」
エリーはニールの瞳を見つめて頷き言う。
「お母様……、心配してくれてありがとう。私は大丈夫だからね」
そうしてニールが顔を拭き笑顔を見せて言う。
「さあ、食事にしましょうか!」
エリーも微笑み答える。
「はい、お母様!」
そう言ってエリーとニールは手を繋ぎ食堂へと向かった。
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