和平交渉 第162話 エリーとルイカ
2国間和平交渉会議3日目午後。
ここはグラン連邦国首都べマン市。
エリー達は連邦国軍幼年学科を訪問していた。そしてエリーは今、修練着を着て剣技場試合エリア内に立っている。
「エリーお姉様! よろしくお願い致します!」
ルイカが白の修練着を着て木剣を構え対峙している。エリーはルイカに一礼すると声を上げる。
「2年振りですね! 楽しみです! それでは行きますか」
エリーはそう言って木剣を上段右斜に構える。白線エリアの外ではリサが2人の様子を緊張した顔で見ている。
「それでは参ります!」
ルイカが声を上げると前へ飛び出した。エリーはルイカを視感して思った。
(私が入学した時より身長も高い手足も長い、そして、熱心に修練している! 魔力の使い方も上手い! でも絶対的魔力量が少ない……)
エリーはルイカの斬撃を外に払い足を引き間合いの外へ退がる。直ぐにルイカは踏み込み右からの斬撃を放って来たが、エリーは体を振って難なくかわした。そしてルイカは右足を前に蹴り出しエリーと間合いをとった。
エリーは直ぐに下段左斜めに木剣を構えるとルイカの前に飛び出して下方からの斬撃を放った。ルイカは慌てたように木剣を振り下ろし、エリーの斬撃をいなそうとするが簡単に弾き飛ばされる。ルイカは反射的に上体を引くがエリーの剣先が修練着の表面を擦れて上方に抜けていく。そしてエリーは瞬時に体を沈めて木剣を前へ突きを放つと、ルイカの胴防具にまともに入りルイカの顔は一瞬歪む。そして後ろへ倒れ込んだ。
「あゝ、ゴメン! でも不用意過ぎます! もう少し魔力を上手く使って!」
エリーは直ぐにルイカに声を上げた。
ルイカは直ぐに立ち上がったが、痛みで顔が歪んでいる。
「エリーお姉様……、申し訳ありません」
エリーはルイカの顔を見て言う。
「剣技を高めたいのならもっと考えてね。振り回すだけではダメです! 剣の角度、方向、速度、そして魔力量の調整を細かくしてね。私はまだほとんど魔力を使っていませんよ」
ルイカは直ぐに魔力を体に通して痛みを抑える。
「エリーお姉様に勝てるとは思っていません……、ですがこれほどとは、改めて凄さが理解出来ました。お姉様はまだ1割も力を出していないというのに……、私の修練はまだ全然足りないようです」
エリーはルイカに微笑み言う。
「大丈夫だよ。幼年学科内だったら、3年生の上位と良い勝負だと思うよ。これから入学までに修練を積めば大会も優勝を狙えるレベルになるよ」
ルイカは直ぐに声を上げる。
「それではダメです! 士官学校で優勝を狙えるぐらい出ないと!」
エリーはルイカを見つめ、一呼吸置いて木剣を構える。
「ルイカ! 気持ちが乱れ過ぎています。今日はやめましょう! 怪我をしますよ」
エリーはそう言って木剣を引いて、ルイカに近づき手をとった。
「ルイカ……、大丈夫だよ。焦らずね。剣技は驕らず謙虚に向き合うことが肝要だからね」
エリーはルイカの肩に手を乗せて言う。
「ルイカ、防具を外そう。もう帰ろうね」
「はい、お姉様、申し訳ありません。私は……」
ルイカは寂しそうな目でエリーを見つめる。
「良いよ。わかったから。今日は帰ろう」
エリーはルイカの顔に優しく触れて言った。
そばで見ていたリサは2人を見て思っていた。
(ルイカ様はさすがだ。エリー様にはまだまだ及ばないが、12才とは思えない。並の剣技士程度なら余裕で倒せるだろう。将来が楽しみですね)
エリーはリサに近寄り言う。
「リサさん、お待たせしました。それでは帰りましょう。緊急な要件とか無いですよね?」
「はい、大丈夫です」
リサが答えると、エリーはルイカと一緒に並んで更衣室へとむかった。
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