和平交渉 第160話 幼年学科訪問
エリーはルイカと一緒に幼年学科を訪問する。
2国間和平交渉会議3日目午前中。
ここはグラン連邦国首都べマン市。
エリーは朝食を済ませてルイカとリサを連れて久しぶりの市内を商会のリムジン車両で移動していた。リサは相変わらず表情が硬い。
「リサさん、睡眠は取れましたか? 疲れているようですが」
リサは向かい合わせての席から無理に笑顔を見せて言う。
「はい、エリー様、大丈夫です。回復魔法で十分回復しております」
「それなら良いのですが……。まあ今日、1日はゆっくりして良いとエラン陛下から許可はもらっています。せっかくだからくつろぎましょうね」
リサはエリーを見て少し表情を緩めた。
(エリー様……、昨日までの雰囲気とは違う。張り詰めた感じが無くなった。家族と会われたからか?)
ルイカがリサに微笑み尋ねる。
「リサ様、どこのご出身なのdすか? 良家のお嬢様なのですよね」
リサがエリーに視線を送るとエリーは頷く。
「ルイカ様、私はアンドレアの出でございます。そしてお嬢様などではありません。申し訳ありませんが、ルイカ様に様付けで呼ばれる身でもございません」
ルイカはそれを聞いて言う。
「いいえ、リサ様は私の先輩です。そして魔道士としてもかなりの能力をお持ちでいらしゃいます。私の理想のお方です」
リサはルイカの瞳を見つめる。
「……、困ります。ブラウン商会のご息女にそのような……。私はただの魔道士にすぎません」
ルイカはリサに微笑み言う。
「ダダの魔道士では、エリーお姉様のお付きにはなれません。一定以上の力量をお持ちなのは確かです」
(ルイカ様……、まだ確か12才のはず! さすがエリー様の妹様、雰囲気が違う。それに超絶美少女! でも私への評価が高すぎてちょっと……)
リサが戸惑った顔をしているとエリーが言う。
「リサさんは確かに頼りになりますよ。ルイカにはわかるんだね。魔法の修練もしているのですか?」
ルイカは微笑み言う。
「もちろんです。お母様に鍛えてもらっています」
そうしてリムジン車両は懐かしい国軍幼年学科の校門前に到着した。
エリーがルイカを見て微笑み言う。
「ルイカ、許可は取っています。見ておきますか」
「お姉様! ありがとうございます」
ルイカは嬉しそう言った。護衛がドアを開けるとエリーはルイカと直ぐに校門の前に立った。リサ慌てて降りて来る。
「リサさんもご一緒にどうぞ!」
エリーはルイカと手を繋ぎ歩き出す。
校門内に入ると誰も居ない。授業中のようだ。
「とりあえず、学科長に挨拶に行きましょう」
エリーは直ぐに第一教棟の守衛室に向かいID証の手続きを行う。守衛室の下士官は驚いたような顔をして慌てて手続きを行う。
「エリー中佐! お会い出来て光栄です!」
下士官は敬礼するとID証を3人分渡してくれた。下士官はエリー達が教棟内に入っていくと慌てたように内線電話で連絡していた。
「随分昔のように感じます。あの頃は良かった」
エリーがポツリと呟く。そうして廊下を進んでいると前から威圧感のある男性が歩いて来る。エリーは微笑み声を上げる。
「学科長! お元気ですか?」
「ええ、元気ですよ! 活躍は聞いていますよ」
ゲードニー学科長はエリーに近寄ると肩に手をやり顔を覗き込む。
「あの頃とは雰囲気が変わりましたね。軍人ぽくなりました」
エリーは少し表情を緩めた。
「学科長は変わりませんね。あの頃のままです」
ゲードニー学科長はルイカを見て微笑み言う。
「妹さんですね。びっくりするほどの美少女です。ルイカさんでしたね。エリーさんとは違う雰囲気で利発そうです」
ルイカはゲードニー学科長に一礼する。
「ルイカ・ブラウンと申します。来期、入学を希望しております」
ゲードニー学科長はリサを見て微笑み尋ねる。
「お嬢さんはかなりの魔道士のようですが。エリーさんの同僚ですか?」
リサはゲードニー学科長に一礼する。
「エリー様の秘書官をしております。リサ•ヒューズです。よろしくお願い致します」
ゲードニー学科長はエリーを見て少し嫌な顔をする。
「エリーさん、このような美人の秘書官を連れているのですか? 出世されましたね」
エリーはゲードニー学科長を見上げて言う。
「立ち話もなんなのでお部屋へ入りませんか?」
ゲードニー学科長は、エリー達を学科長室へと案内する。
エリーはソファーに座ると言う。
「国内の雰囲気はどうですか?」
ゲードニー学科長はカップに紅茶を注ぎながら言う。
「ええ、悪くはないですね。しかし、どうでしょうか? これから大戦が始まるなどとは思っていないでしょうね」
エリーはルイカを見て微笑み言う。
「ルイカは知っていますか? これから大きな戦争が始まる事を」
ルイカは直ぐにエリーを見て答える。
「はい、お父様や周囲の人達の話しを聞いていればなんとなくは感じています」
ゲードニーは紅茶のカップをテーブルに並べて置いっていく。
「ルイカさんも紅茶でよろしかったかな?」
「はい、ありがとうございます」
ルイカは微笑みゲードニー学科長を見つめる。
エリーは紅茶カップを手に取り口に運ぶ。
「学科長は、現場には復帰されないのですか?」
「ええ、お呼びは掛かりませんね。エリーさんは今、ハル中将の直属ですね。同期なのにかなり差がつきましたね」
ゲードニー学科長は少し機嫌悪そうに言った。
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