和平交渉 第153話 ジョルノ共和国
動き出すジョルノ共和国機甲師団。
2国間和平交渉会議2日目夕方。
エリー達はグラン連邦国よりランカーⅡにてここベルニス王都港湾エリア移動していた。
ランカーⅡが着陸してエリーがジーン大尉と話しているとランカーⅡの搭乗員が慌てたように駆け寄って来た。
「ローラ様! 急ぎ5号機に戻ってください! 帝都から緊急の連絡が入っています」
エリーが搭乗員の顔を見ると強張った表情をしている。
「はい! 了解しました」
エリーは答えるとジーン大尉に軽く頭を下げて5号機に駆け出した。エリーは搭乗口から直ぐにコックピットへ入りヘッドセットをカーター機長から受け取る。
「はい! ローラです。何事でしょうか?」
『こちらエランです! ジョルノ共和国軍が国境線を突破しました! 今、国境付近が混乱状態にあります。至急戻って対処して下さい!』
ヘッドセットから聞こえるエランの声は怒りに満ちている。
「はい、了解しました! 直ちに戻ります! 詳細は出発してから聞きます」
エリーは慌ててコックピットから飛び出すと搭乗口から声を上げる。
「リサさん! 直ちに帝都に帰投します! 早く搭乗してください!」
エリーの緊迫した声にリサは直ぐに只事では無いと判断して直ぐに駆け出した。エリーはジーン大尉に手を挙げて言う。
「申し訳有りません! 緊急事態です! 直ぐに戻ります」
ジーン大尉はそれを聞いて敬礼して声を上げた。
「ローラ様! お気をつけて!」
エリーが敬礼すると搭乗員は直ちに搭乗タラップを収納、ドアを締めロックを回す。
「ドアロック確認! 離陸してください!」
搭乗員の声を聞きカーター機長が直ぐにインカム越しに言う。
「只今より離陸します! 各員ベルト確認願います!」ランカーⅡ5号機は直ぐにプロペラ出力を上げ上昇を始めた。エリーは窓からジーン大尉に手を振る。ランカーⅡは可変翼の角度を変えると速度を上げさらに上昇して行く。
エリーは隣に座るリサの顔を見て言う。
「ジョルノ共和国軍が国境を突破進軍しているようです。前情報は有りましたか?」
リサは直ぐに答える。
「いいえ、危険度はEランクで緊急度は全く上がっていません。おかしいですね? 軍内の暴走でしょうか?」
エリーは少し嫌な顔をして言う。
「何かの陽動作戦かもしれません。各地に警戒を厳にするよう通達してください」
コックピットからカーター機長の声がする。
「ローラ様、エラン陛下から通信が入っています」エリーは直ぐにベルトを外してコックピットへ入りヘッドセットを受け取る。
「ローラです。状況はどうですか?」
『ローラ! こちらは防衛2個師団が既に崩壊して敵の30キロほどの侵攻を許しています。ハリーさんの指示でベルーダを向かわせました。それで進軍の足は止まったようですが、何しろ数が多いので対処に苦慮しています。先頭の重戦車を叩いてください! 既にレンベルTYPEⅡは前線にランカーⅡで搬送中です。それとラムザⅣ2機、アンジェラさん、セーヌさんも向かっています』
エリーは直ぐに言う。
「陽動の恐れが有ります。帝都の警戒を厳重にしてくださいね」
無線のエランは直ぐ答える。
『ええ、ハリーさんもそう言っていました。ユーリさんに残ってもらってます。セリカさんには皇帝護衛隊へ戦闘準備体制を指示しています。近衛兵団へは帝都緊急警戒体制に移行させていますので対処は出来ると思います』
エリーは少し考えたような顔をして言う。
「エラン陛下! 了解しました。私はジョルノ共和国、機甲師団を壊滅させれば良いのですね」
『はい、容赦無く叩いてください。大魔導師ローラのチカラを諸外国に見せつけてください。まだ噂程度に思っているようなので、後悔させてくださいね』
無線の向こうのエランが怒りを込めて言い放った。
「はい、エラン陛下のご指示通りに壊滅させます。国境線も向こうに押し込みますが問題無いですよね」
『ええ、現地に到着次第、指揮権はローラに移管するよう現場には指示しておきます。あとはお願いします』
エランはそう言いて無線を切った。そうしてエリーは嬉しそうな顔をしてカーター機長を見て言う。
「最大速度でお願いします」
「はい、了解です! 現着18:30です」
カーター機長はエリーに答えた。
◆◇◆◇
ここはジョルノ共和国軍、べランドル帝国侵攻軍国境30キロ地点。
「敵航空機による攻撃はとりあえず終わったようです」
重戦車大隊長に指揮車両から連絡士官が声を上げた。
「あゝ、そうだな後方の補給車両が叩かられたようだが。進軍の燃料弾薬補給は大丈夫なのだろうな?」
重戦車砲塔上から戦車大隊長が尋ねた。指揮車両の連絡士官は答える。
「とりあえず被害は大した事はありません。それより気に掛かる情報が有ります」
戦車大隊長が戦闘帽をとり顔を拭きながら聞く。
「何だ! さっさと言え」
連絡士官はためらい声を上げる。
「帝国の大魔導師ローラが出て来るそうです」
それを聞き戦車大隊長は顔を緩ませて言う。「あゝ、あんな帝国の偽情報にビクつく必要など無い。我が重戦車部隊で捻り潰してやる。心配無用だ。それに到着しても明日の昼だ。それまでに100キロは進軍して防衛体制を構築しているだろう」
そして声を出して笑った。それを聞いた連絡士官は少し不安な顔をして敬礼すると指揮車両を戦線後方へと走らせ去って行った。
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