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和平交渉 第143話 和平交渉会議

エリーは警戒する。

 ここはべランドル帝国帝都ドール市、中央区官庁街、外務部局施設の一室内。

 ハル中将は、テーブルに積まれた書類を確認していた。

「クロード外務卿は私に丸投げですか? 到着は明日とか言っていましたが、どうなっているのですか。文官を3人だけ送り込んで本人が来ないなんて……」

 

 ハル・ラッセルは参謀本部作戦部長より軍務外事局長に異動となり中将に昇進していた。そして今回の和平事前交渉全権代表を任されることとなり、機嫌が悪かった。エラン皇帝と面識があり、交渉調整が容易と連邦国上層部が適任と外交部局から押し付けられた形になった。連邦国軍初の女性管理部門中将として国家代表は光栄なこととかなんとか言われさんざん周囲からおだてられ、それもハルの機嫌をさらに悪くさせていた。

「クロード外務卿はなんなのですか。ご息女アンジェラさんはこっちで頑張っているっていうのに」

 

 レベッカはハル中将を見て遠慮したように言う。

「エリー様より連絡がありました。ベルニスにて警戒事案発生したとのことです。皇帝陛下及び要人は必ず警護人をつけて行動してくださいとのことでした」

 ハル中将はレベッカを見て少し嫌な顔をする。


「それは緊急事案ですか?」

「はい、正体不明の暗殺者が確認されたとのことです。帝都での皇帝暗殺未遂事件レベルの暗殺者では無いとのことです。私達エリー様の洗礼者に匹敵するレベルとのことで要警戒が必要との指示を受けました」

 レベッカはハル中将を見て少し動揺したように言った。それを聞いてハル中将は髪をかきあげ目を細めて言う。

「私にはレベッカさんがついているから大丈夫よね」


 レベッカはハル中将を真剣な顔で見て言う。

「万全とはいきませんが、ベストは尽くします」

 その言葉を聞いてハル中将がレベッカの瞳を見つめて言う。

「エリーさんの様子がいつもと違うのですね」


「はい、リサから受けた報告ではエリー様は動揺しておられたとのことです」

 ハル中将は椅子から立ち上がり微笑む。

「エリーさんが動揺? いつも余裕のエリーさんが……」


「会議会場周辺にはブラウン商会精鋭部隊、近衛兵団一個連隊を展開させております。会場の出入りも厳重に警戒する予定です」

 レベッカはハル中将を見て一礼するとさらに言った。

「絶対に私から離れないでください」


「ええ、もちろん注意しておきます」

 ハル中将は微笑み言う。

「では、朝食に致しましょう。あと2時間後には会議が始まります」


 そしてレベッカはドアを開けながら言う。

「エリー様は急いで帝都に戻られるそうです。2時間ほどで到着されると思います」


「そうですか。なら安心ですね。」ハル中将はレベッカの肩に手を乗せて言った。


 ◆◇◆◇


 ここはベルニス王都港湾、第一艦隊管理エリア。


「第一艦隊はしばらく接岸せず沖合で待機をお願いします。ベルニスでは何が起こるか分かりませんからね」

 エリーは少し疲れたような顔をしてガイン中将を見って言った。


「はい、ローラ様、了解致しました。不測の事態に備え港湾部には艦隊警備隊を常駐させておきます」

 ガイン中将がエリーの顔を少し心配そうに見て言った。エリーはそれを聞いて一礼すると待機中のランカーⅡに慌てたように乗り込む。エリー達が乗り込むと、搭乗員がタラップを収納ドアを閉めロックを回すと声を上げる。

 「ドアロック完了! 確認ヨシ! 離陸してください!」


 カーター機長がコックピットからキャビンに向かって言う。「只今より、離陸します。各員ベルト着用確認をお願いします」

 ランカーⅡはプロペラ出力を上げるとプロペラ風が周囲の埃を巻き上げる。ランカーⅡが上昇を始めると整列していた第一艦隊士官達が一斉に敬礼した。エリーも窓から手を振る。

 ランカーⅡは規定高度に達すると可変翼の角度を変え前へ進み始め速度を上げた。そして魔道ジェットタービンを始動一気に加速、あっという間に港から見えなくなった。

 エリーは隣に座るユーリを見て言う。

「軽く寝ます。緊急連絡があれば起こしてください。それとトッドさんには、今回の詳細とウィンさんの監視をお願いしておいてください。ブラウン商会の機関員は優秀ですが、さすがに一般機関員では手に余ります」

 

「はい、ですが……、はい了解致しました。最優先事項ですね」

 ユーリは頷きエリーの顔を見た。そしてエリーは目を閉じてシートを倒しブランケットを掛け寝る体制に入る。

 ユーリは機体が安定高度に入っていることを確認すると、ベルトを外し前に座っているリサのところまで移動する。


「リサさん、隣良いかしら? 少しお話があります」ユーリはリサの顔を見て微笑む。


「はい、お話とは何でしょう?」リサは少し困ったような顔をする。


「ええ、今回の件迷惑をかけました。ブラウン商会の諜報責任者として謝罪します」

 ユーリはそう言ってリサの隣の席に座った。リサはユーリの顔をまじかで見て思った。

(エリー様のお気に入り、ユーリさん……、噂では気難し性格だと聞いている。しかし30前のはずだけど? 私とそんなに変わらないように見える。美人だなあ。まあ、無難に付き合わないと……)

「ユーリさん、謝罪など必要ありません。私の落ち度もあります。今後は連絡を密にいたしましょう。今回はアンドレアの情報網を駆使しても防げませんでした」

 リサはユーリに遠慮気味の顔をして言った。

「そうですね。お互いエリー様にお仕えしているのですから、意思の疎通はちゃんとしなくてわいけませんね」

 ユーリはリサに微笑み言った。それを聞いてリサは少し硬い笑顔で答える。


最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました!

今後もよろしくお願いします。

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