北部戦線14 特三機動連隊1
ここは、北方戦線、エリー機動大隊現地配備、6日目午後。
エリー大隊は、帝国特殊部隊の襲撃を受けてから43時間ほど経過していた。
エリー大隊は後方配置命令を受け、特別第三機動連隊へ配置になった。
機兵整備ブロックでの問題は、トッドが平謝りして重装機兵を一旦外に出す事で解決した。
そして、後日ブラウン商会から重装機兵整備用プレハブが届く手筈になっている。
エリーはラムザⅣユーリカスタム機兵のコックピットシートに座り、システム同調作業をしていた。コックピット上部にはユーリとブラウン商会技術担当者がいる。
「エリーお嬢様、大丈夫なのですか?」
技術担当者が心配そうに言った。
エリーが嬉しいそうに技術担当者に言った。
「デリックさん大丈夫だよ、この機体は軍の管理外だから問題ない」
実は、エリーの愛機レンベルは連隊長許可がないと搭乗出来ない。しかも24時間監視付きのため、持ち出すことが出来ないそのためここにエリーは来ているのである。
エリーがデリック技術担当を見て微笑みながら言う。
「魔導融合炉は限界付近までセットアップ、リミッターは上限設定でお願いします」
ユーリが少し不安な顔をしてエリーを見る。「自爆したりしないですよね?」
「この機体の制御システムはレンベル並みだから心配ないよ!」
「デリックさん起動シーケンススタンバイお願いします」
それを聞いて、デリック技術担当が接続端末を操作する。するとコックピット内の警告ランプが点灯して機体のスピーカーから女性の声でアナウンスが流れる。〈起動シーケンススタンバイクリア! 起動シーケンス、スタートして下さい!〉
エリーがコックピット正面パネルを見て確認呼称する。「起動異常アラーム無し! オールグリーンランプ確認! 起動シーケンス、スタート!」そしてセーフティーロックを解除、起動スイッチを押した。
重装機兵の融合炉が起動、高周波モーターの様な音が鳴り始める。
「ユーリさん! 連隊本部に行って機体番号を認証連絡して下さい。それと出動許可もお願いします」
ユーリは直ぐに機体タラップから降りて連隊本部に向かった。
エリーはモニターを見て各関節稼働部コア、ジェネレータ出力数値を確認する。
「この機体ノーマルとかなり差がある様ですが? デリックさんどうなっているのですか!」
「はい、それは次期新型重装機兵のプロトタイプパーツを組み合わせているためです」
「融合炉は出力二倍以上、外装素材は新素材魔導複合装甲を使用して軽量化、強度アップを図っています」
「性能はノーマル機体の比では無いのですが! コストは十倍以上掛かっていますのでエース級パイロット用機体です」
エリーがコックピットから這い出して、デリック技術担当の顔を見て嬉しいそうに言う。
「レンベルと比べてどうなのですか?」
デリック技術担当は少し考えた顔をして言う。
「比べるレベルではないですね! 底が違うと言いますか、レンベルは限界を見せていませんので」
「レンベルはブラウン工廠で製造したんでしょう?」エリーがデリックの顔を見て言った。
デリック技術担当は少し困った表情をして言う。
「レンベルは・・・・・・、実は魔導融合炉コア部分とフレーム骨格は外部から持ち込まれたものなのです。外装材とシステムは設計書により再現作成したのですが」
エリーは少し驚いた顔をして言う。
「壊したら治せないてことは無いよね?」
デリックが答える。
「根幹部分に関してまだ、解析再現が出来ていない部分があります。その部分は修理は現在不可能です」
「え・・・・・・、それってマズイよね?」
エリーがデリックを見つめて言った。
「修理は出来ませんが、レンベルは予備フレームが存在しますのでご安心して下さい」
「予備フレームがあるんだ! どこに保管されているの」
「それは、私は存じません。極秘事項で一部の者しか知らない様です」
「そうなんだ、安心したよ」
エリーがタラップを降りてデリックに微笑んだ。
(レンベルやはり! ただの機体ではないようですね)エリーが思っているとユーリが戻って来た。
ユーリがエリーの瞳を見て微笑む。
「準備完了です! いつでも出れます」
エリーが機体上のデリックを見上げて言う。
「デリックさん! 出ます! 行けますか?」
デリックは操作端末を確認して繋いでいたケーブルを外して右手を上げた。
「起動完了です! コックピットに搭乗して下さい!」
そしてデリックはタラップを降りてエリーに軽く頭を下げる。
「お嬢様! お気を付けて行ってらっしゃいませ!」
エリーはユーリからヘッドギアを受け取り言う。
「デリックさん、行って来ます」
エリーがタラップを上り、コックピット内に入ると、ユーリが後ろのサブシートに座りベルトを着ける。エリーもベルトを着けて言う。
「ユーリさん、いいかな? コックピットシールド閉めるよ」
「はい、閉めてください」
エリーはシールド安全装置を外しシールド開閉ボタンを押した。コックピット内にアラームが鳴り響き、シールドがゆっくり閉まっていく。
エリーが正面パネル確認して呼称する。
「起動完了! 異常警告表示無し! 制御システム異常警告無し! 兵装制御システム連動異常警告無し!」
エリーはユーリに言う。
「連隊本部と通信確認お願いします!」
「はい! 了解致しました!」
ユーリは直ぐにヘッドギアの無線ボタンを押して言う。
「こちらユーリ少佐! 連隊本部確認願います!」
『ハイ! 受信確認! こちら特三本部!」
「ユーリ今から出ます! 以上!」
『本部了解! お気をつけて!』
ユーリのカスタム重装機兵は立ち上がり、歩行を開始する。
「夜間認知システム作動! 味方識別信号起動! コックピット空調システム作動!」
エリーが手際良く各機器を作動させていく。
「エリー様・・・・・・、この機体は初めてですよね?」
エリーはユーリの方に顔を向けて不思議そうに言う。
「どれも同じ様なもんだよ、直感的になんとなく出来ちゃうだよね」
「それじゃ、この子とシンクロするね」
エリーはそう言うと左右のレバーを離し、手前にある左右の空間に手を入れた。
機体のスピーカーから女性のアナウンスが流れる〈機体パイロット認証システム作動! 認証しました! エリーブラウン確認! シンクロパイロットシステムに移行確認!〉
「ユーリさん! 全開で行くね」
ユーリが慌てて大声を上げる。
「エリー様! 待ってください! ここは基地内です! 被害が出ます!」
「あゝ、そうだね、嬉しくて」
エリーがすぐに機体のパワーを下げる。
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