和平交渉 第138話 アレッサンドロと対峙する
エリー達は秘書官ウィンに案内されアレッサンドロ国王の前へ
皇帝暗殺未遂事件翌日夜。
いまエリーとユーリはアレッサンドロ国王の秘書官ウィンと一緒に移動している。そして秘書官ウィンは地下へ通じる隔壁隠し扉を開放する。
「ここから内部は特殊な鉱石で覆われており、マナを通しません。ですので魔力の制限が掛かります」
それを聞いてユーリが言う。
「ローラ様、これはやめたほうが良いかと、閉じ込められでもしたら大変です」
エリーはユーリを見て口を緩めて言う。
「ユーリさん、大丈夫だよ。コスミックエナジーは通ると思うから、最悪切り替えたらいつも通りだよ」
「しかし、このウィン殿はどう見ても怪しすぎます」
ユーリは心配そうにエリーを見て言った。エリーは気にせず秘書官ウィンに続いて扉の奥へと入って行く。ユーリもしょうがなくついて行った。
秘書官ウィンと共に扉を通り階段を降りて行くと少し広い空間に出た。そこには円形の空間を囲むように部屋の扉が5つほどあった。
「こちらの部屋です」
秘書官ウィンがドアを指し示し言った。ドアをノックすると内部から声がする。
「待ちくたびれたぞ。入れ!」
ユーリは気配を消して周囲を警戒する。秘書官ウィンは部屋のドアを開けて室内に入って一礼する。
「アレッサンドロ陛下、お待たせ致しました」
部屋の奥に座っていたアレッサンドロ国王は秘書官ウィンを見て機嫌の悪い顔をして言う。
「もう良いのか。ローラは帰ったのだな」
秘書官ウィンは微笑み一礼して言う。
「ローラ様をお連れ致しました。陛下の真意を汲み取りこのほうが良いかと思いまして」
秘書官ウィンの背後からエリーが姿を現して一礼する。アレッサンドロ国王は驚愕の表情を浮かべ壁に退き声を上げる。
「ウィン! お前は主人を敵に売ったのか!」
エリーの横に立っている秘書官ウィンは微笑み言う。
「いいえ、これが最善の選択だと考えたからです。陛下もおわかりなのでしょう」
アレッサンドロ国王は一瞬考えてから笑みを浮かべて言う。
「そうか理解した。この場なら我々でも勝機があるとそう言う事だな」
そしてアレッサンドロ国王は魔力を上げる。そして身体強化を図りアレッサンドロ国王の体が白色に輝き始めた。
「私は、ここの制限を無効にする魔道具を装着している。だから魔力は落ちん。だが他のものは1/10ほどに落ちるのだ。魔道士ローラと言えど、私にはもはや対抗出来んのだ。よくやったウィンよ」
アレッサンドロ国王は自身満々で言い放った。
秘書官ウィンは微笑み言う。
「アレッサンドロ陛下、何か勘違いされています」
アレッサンドロ国王は不思議そうな顔をする。
「早くお前も魔力発動せんか! ローラを仕留めるぞ」
それを聞いて秘書官ウィンは魔力量を上昇させる。エリーはそれを見て退き少し驚いた顔をする。
(ウィンさんからは悪意も敵意も感じ無かったんだけど。むしろ敬意とか尊敬とかのの波動なのですけど? 今も敵意も殺意とか無い。しかし魔力量が上がった。やり手とは思ったけどかなりだね。このウィンさんを倒すのは厄介そう・・・・・・)
秘書官ウィンはエリーに微笑み言う。
「ローラ様、警戒しなくても大丈夫です。いま陛下の誤解を解きますので」
エリーは秘書官ウィンが何を言っているのか理解出来なかった。
アレッサンドロ国王は怪訝そうな顔をする。
「お前、どうした。何をしようとしている」
「はい、ローラ様には手を出してはなりません。それは敵対行為です」
アレッサンドロ国王は苛立ち声を上げる。
「冗談も大概にせねばならんぞ! お前は何を言っている」
アレッサンドロ国王は魔力量をさらに上昇させると一気にエリーのほうへ飛び出した。エリーは魔力量を瞬時に上げ防御体制をとるが、エリーの間合いに入る前に秘書官ウィンが飛び出してアレッサンドロ国王に蹴りを入れ後ろへ吹き飛ばした。
〈げーーっほ〉アレッサンドロ国王は壁にぶつかり呻き声を上げている。
エリーはその光景を見て驚いている。秘書官ウィンは直ぐに体制を立て直して、倒れているアレッサンドロ国王の前に立って微笑んでいる。
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