和平交渉 第137話 アレッサンドロの従者
エリーはアレッサンドロのニセモノと接見する。そして秘書官ウィンから思わぬ申し出を受け戸惑う
皇帝暗殺未遂事件翌日夜。
エリーはベルニス王城を再び訪問していた。今は応接室で食事をしていた。
「ローラ様、悠長に食事とは・・・・・・」
リサが反対側のテーブルから言う。それを聞いてユーリが少し悲しそうに言う。
「リサさんはまだローラ様を理解されていませんね。あなたはローラ様の秘書官なのに」
リサは内心ムッとしたがグッと堪えて顔には出さない。万が一そんな顔をユーリに見られて敵認定でも受けたら後々支障が出るからだ。
「申し訳ありません。ローラ様の秘書官として至らぬ点はあります。ユーリさんどうかご容赦ください」
リサはユーリに頭を下げた。
「お腹減ったらダメでしょう。いざという時力が出ないから、それに毒なんて入って無いからね。いまの城内の雰囲気は以前と比べ物にならないくらい歓迎ムードだよ。ほんと自分の屋敷にいるみたいな感じだよ」
エリーが嬉しそうに2人を見渡して言った。
「そうですね。敵意とか警戒心が無くなりましたね。不思議なくらい敬意を感じます」
ユーリが少し戸惑ったように言った。
リサがスプーンを持ちスープを口に運び一飲みしてから言う。
「確かにお料理美味しいですね。その敬意はたぶんローラ様の慈愛を感じたからなのでは無いのでしょうか。アレッサンドロ国王治癒の時、魔力が周囲に拡散しましたからね」
「アレッサンドロ国王に病床見舞いを治療を兼ねてお願いしています」
エリーは嬉しそうに言った。
それを見てユーリは少し戸惑った顔をして言う。
「アレッサンドロ国王にお会いするのがそんな嬉しいにですか?」
「ええ、どんな対応をするのか、楽しみです。我々が気づいているとも知らずにね」
エリーは少し悪い顔をして言う。リサがそれを見て言う。
「ローラ様、顔が意地悪ないやらしい顔になってます」
「あゝ、ゴメンつい楽しくなて顔が緩んじゃった」
エリーは表情を直ぐに切り替えて微笑んだ。リサは驚いた顔をして頭を下げた。
応接室のドアがノックされる。ユーリが頷き声を上げる。
「はい、どうぞお入りください!」
ベルニスの役人は入室すると深く一礼してから言う。
「ローラ様、大変お待たせ致しました。只今よりご案内致します」
エリーは椅子から立ち上がり嬉しそうに言う。
「感謝致します」
「申し遅れました。わたくしアレッサンドロ陛下の秘書官をしております。ウィンと申します。それではこちらへ」
ウィンと名乗った秘書官は微笑みエリーを見ている。エリーは秘書官にに案内されて国王寝室へと入った。
エリーはベットのそばに寄ると深く一礼して言葉を発する。
「アレッサンドロ国王陛下、帝国魔道士ローラお見舞いにお伺いしました。スキルでお体を診療する事をお許しください」
ベットに横たわるアレッサンドロ国王は頷き了承する。そしてエリーはスキルを発動すると白色の光に包まれる。周囲のベルニスの役人達は少し驚きエリーを見て跪き敬意を示した。白色の光はアレッサンドロ国王を包み込む。
しばらくして光は徐々に縮小して消えた。周囲のベルニスの役人達から声が漏れる。〈女神様降臨されておられたのだ・・・・・・》
エリーは耳に入る声を無視して秘書官ウィンに微笑み言う。
「アレッサンドロ国王陛下は、もう何の問題もありません。若干体力が失われていますが。2、3日もすれば元通りです」
秘書官ウィンはローラに深く頭を下げて言う。
「大魔導士ローラ様、この度は感謝致します。ベルニス王国政府を代表して御礼申し上げます」
エリーは笑みを浮かべて一礼して言う。
「いいえ、そのような感謝など不要です。私は同盟国ベルニス王国に対して当然のことをしただけですから」
エリーは秘書官ウィンの顔を見て言う。
「アレッサンドロ国王陛下と少しお話しをお願いしたいのですが?」
秘書官ウィンは少し間を置いて言う。
「はい、結構です。あまり長くならないようお願いします」
エリーは秘書官ウィンに微笑み一礼する。
「ありがとうございます」
エリーはアレッサンドロ国王の枕元に寄って耳元で囁く。アレッサンドロ国王は動揺した顔をしてエリーを見て声を上げる。
「何と無礼な! 命の恩人とはいえそれは許せることではありません! お引き取りください」
エリーはアレッサンドロ国王を見て一礼する。
「大変失礼いたしました。これ以上お話しすることはないと思いますので、これで失礼致します」
秘書官ウィンが慌てて寄って来て言う。
「ローラ様、何と言われたのですか? もうお帰りになるのですか」
エリーは秘書官ウィンを見て言う。
「ええ、本物の国王陛下でなければお話し出来ませんので、これで失礼致します」
秘書官ウィンは一瞬考えてからエリーの耳元で小声で言う。エリーは秘書官を見て驚いた顔をして頷き言う。
「ええ、良いでしょう。別室に移動しましょう」
エリーは後ろに控えていたユーリとリサに目で合図した。2人は頷きエリーに寄って来た。
「応接室に移動します」
そう言ってエリーはアレッサンドロ国王に深く一礼する。そして秘書官ウィンについて部屋を出て行った。
「ローラ様、どうしたのですか? そんな真剣な顔をされて」
ユーリがエリーを見て言う。
「はい、部屋に入ってからお話しします」
エリーはユーリに直ぐに答えて少し早足で歩いた。リサも慌てて寄って来て言う。
「秘書官に何か言われたのですか? ローラ様それから様子が変わられましたが」
「ええ、アレッサンドロ陛下に会わせてくださるそうです」
エリーが小声でリサに言った。
「へーーっ! それはどう言う」
リサは幼い顔から少し動揺した表情をした。そして秘書官ウィンと一緒に応接室に入るとドアを閉めた。
秘書官ウィンはエリーの前に跪き頭を下げて敬意を示した。
「ローラ様、やはり欺け無いことは承知しておりました。ご無礼を謝罪致します」
そして秘書官ウィンは顔を上げてエリーの顔を見て言う。
「ローラ様、お約束通り陛下のいる場所にご案内致します」
ユーリが直ぐに声を上げる。
「ローラ様! これは罠です。こんな話しある訳がありません」
秘書官ウィンはユーリを見て言う。
「ごもっともなことです。しかし私は嘘は申しておりません。ローラ様はこの大陸に安寧と秩序をもたらさられるお方だと、そう私は思ったにです。ですから陛下を裏切りローラ様に付くことにしたのです」
それを聞いてエリー達3人は顔を見合わせて戸惑った顔をした。
「アレッサンドロ陛下を裏切る?」
エリーは秘書官ウィンを見つめて言った。
「はい、そのように申しました。何か問題でも」
秘書官ウィンはエリーを見て平然と答えた。
ユーリは不怪訝そうに秘書官ウィンを見て言う。
「ウィン殿あなたは、主君を裏切るとそう言われるのか? そうも簡単に」
秘書官ウィンは再度頭を下げて言う。
「ローラ様、お役に立ちたいのです。ただそれだけです」
エリーは秘書官ウィンを見て言う。
「アレッサンドロ陛下は何処に?」
秘書官ウィンは立ち上がり嬉しそうに一礼してから言う。
「はい、この城の地下深くの結界の張られた隠し部屋の中におられます」
そして3人を見渡して頭を下げた。
「それでは、ご案内致します」
エリー達3人は頷き秘書官ウィンに付いて応接室を出て行く。
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