和平交渉 第134話 王城訪問
エリー達はベルニス王城を訪問する
皇帝暗殺未遂事件翌日午後。
エリーは第一艦隊港湾管理エリアからベルニス王城へ海軍士官車両で移動中であった。
「アレッサンドロ国王陛下への謁見は手筈通りにお願いします」
エリーが後部席の隣に座るユーリに言った。エリー達3人は皇帝護衛隊第5種軍装を着用している。白色の艶消しアーマードプロテクター、胸元には皇帝護衛隊のマークが大きく入っている。
助手席のリサがインカム通信をしたあと、後ろを振り返りエリーに小声で囁く。
「サンドラ行政官が王城から出たようです。目的は不明。この時間に出るのは不自然です。用心したほうが良いと思います」
隣りのユーリがエリーを見て言う。
「トッドさんによると、サンドラ行政官はかなりの切れ者だとおっしゃっていました。頭も良く、戦闘技量も高いとのことです」
「ええ、承知しています。本来ベルニスを回しているのは彼だと思います」
エリーは頷き言った。
「サンドラ行政官の調査を行いましたが、20年前以前が不明でした。謎で過去が追えませんでした。力不足で申し訳有りません」
ユーリがエリーに申し訳なさそうに言った。エリーはユーリの肩に手を添えて優しく言う。
「そんな事はないですよ。わからないのはしょうがないですよ」
エリーがリサのほうも見て言う。
「アンドレアではどうですか? 何か掴んでいますか」
リサは少し遠慮したように言う。
「・・・・・・はい、アクセリアルに関係があるとの情報を得ています。ユーリさん報告が遅れ申し訳有りません。ですが確実性のある情報は上がってきていません」
リサはユーリを見て頭を下げた。
(ユーリさんは、エリー様のお気に入りの1人だ。そして諜報の中心人物、腕も立つ。だが気難しい面もあり下手に悪感情でも抱かれたら厄介なことになる。穏便に済まさないと・・・・・・)
リサはエリーの顔を見て言う。
「報告ミスです。申し訳ありませんでした。今後この様なことがないよう注意致します」
そう言ってリサは頭を下げた。エリーはそれを見て、少し考えた顔をして言う。
「情報収集能力は流石にアンドレア諜報だと思います。ですが得意不得意があるので協力してやっていきましょうね」
ユーリはリサを見て言う。
「リサさん、アンドレアの諜報の凄さはレベッカさんから聞いて知っています。些細なことでも共有しましょうね。今後ともよろしくお願いします」
リサはユーリからの言葉を聞いて瞳を見ると一礼して助手席で前に向き直った。
(ユーリさん・・・・・・、やっぱり目が冷たい。怒ってる訳じゃないけど。私はまだまだのようです)
エリー達の乗車した海軍士官用車両は、ベルニス王城中央門に到着した。
中央門の警備士官が車両に駆け寄って来る。
◆◇◆◇
ここはベルニス王城、国王執務室。
アレッサンドロ国王は椅子に座り余裕の無い表情をしている。
「サンドラがつかまらん、どうなっている。策の準備でもしておるのか?」
アレッサンドロ国王は警備士官を見て機嫌悪そうに言う。
「サンドラが城から出て行ったのは確かなのか? 配下20人を連れて出て行く・・・・・・。私に連絡もせず、そして、私の魔導戦闘スーツも持ち出している。どう言うことだ。理解出来ん」
執務室の内線電話が鳴る。隣りに付いている。秘書官が受話器を取るりしばらくして声を上げる。
「アレッサンドロ陛下! 帝国魔道士ローラ様がご到着されたそうです。謁見の間にお通し致します」
アレッサンドロ国王は困惑した表情をして言う。
「あゝ、わかった・・・・・・」
アレッサンドロ国王はソファーから立ち上がると秘書官の耳元で何か囁く。秘書官は一礼すると慌てて執務室から出て行った。入れ替わりで外務担当官が入室して来た。
「陛下、ローラ様があと5分ほどで謁見の間にご到着されます。お急ぎください」
外務担当官はアレッサンドロ国王に深く頭を下げた。
「あゝ、あまり気乗りしないが向かうとするか」
アレッサンドロ国王は執務室から出て謁見の間へと向かうのであった。そしてその足取りは極めて重かった。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!
これからも、どうぞよろしくお願いします。