和平交渉 第129話 エリー出発する
エリーはベルニスへ向け出発した。
皇帝暗殺未遂事件翌日早朝。ここはベランドル帝国、帝都ドール市ドール城、皇帝護衛隊重装機兵整備エリア。
「システムチェック完了! 積載お願いします」
エリーはレンベルTYPEⅡのコックピットから這い出すと技官に声を上げた。
エリーは4時間ほど寝たあと、いまベルニス出発準備を忙しくしていた。
レンベルTYPEⅡのタラップを降りるとリサがそばに寄って来る。
「ローラ様、第一艦隊港湾本部には車両手配を連絡しております。それとガイン司令官はまた会えると喜んでおられました」
(へーーっ! 私はやはりおじ様に人気があるみたいですね)
エリーが少し変な顔をして遠くを見つめているとリサが言う。
「ユーリさん雰囲気が少し変わったような気がします。ベルニスで何かあったのですかね」
エリーはその言葉を聞き流して言う。
「さあ、出撃しましょう。あと5分で出ますよ」
「はい、了解致しました」
リサは一礼するとエリーから離れる。入れ替わりにユーリがエリーに寄って来る。
「ローラ様、おはようございます」
ユーリは嬉しそうにエリーを見て言った。
(ユーリさん機嫌良さそうだね。母国に帰れるからかな?)
「ユーリさん、おはようございます」
エリーはユーリを見て微笑み頭下げた。
「ローラ様、到着次第行きたい場所があるのですがよろしいでしょうか?」
エリーはヘッドギアを外しながらユーリを見て言う。
「ベルニス国内ですか? 要件はどのようなことですか?」
「はい、ベルニス王都郊外です。暗殺者を処理したいのです。出来る限り目立たぬ様にするつもりです」
エリーはユーリを見て少し嫌な顔をする。
「ベルニスで暴れるのは少し問題あるかもしれませんね。こちらの素性さえ漏れなければ問題はないのですが・・・・・・」
「はい、ですのでエリー・・・・・・いえローラ様に一緒に来てもらえれば直ぐに片付きますのでお願いします」
ユーリはそう言ってエリーに頭を下げる。
「ええ、良いですけど、あまり激しい戦闘は露呈する恐れがありますので、穏便な形でお願いします。それで相手はどのような者達なのですか?」
エリーはユーリの顔を見て微笑み言った。
「はいベルニスの国王配下魔道士です。エラン陛下襲撃メンバーの仲間です。トッドさんが情報を掴んだものでいま商会の機関員が張り付いています」
ユーリはエリーの顔を見て嬉しそうに言った。それを聞いてエリーは少しためらった顔をしてユーリの手を握って言う。
「洗礼後しばらくは、気持ちが落ち着かないことが有ります。だから感情に引っ張られて行動しないよう注意してくださいね。まあユーリさんなら大丈夫だと思うけど」
「はい、心得ております。ローラ様」
ユーリはエリーの瞳を見つめてしばらく沈黙したあと言う。
「父への配慮感謝致します。意識が戻りましたら面会に行くつもりです。ありがとうございました」
「うん、出来る限りのことはしたつもりだよ。ユーリさんには悲しんでもらいたくないからね」
そこへカーター機長がやって来て一礼する。
「ローラ様、そろそろ搭乗お願いします。予定時刻ですので」
「はい、了解です」
エリーは頷きユーリのほうを見てランカーⅡ5号機へと歩き出した。周囲のプロペラ風でエリーの髪が巻き上がる。エリーは髪を抑えてランカーⅡのタラップを上がり機内へと乗り込んだ。ランカー搭乗員がエリー達が乗り込むとタラップを収納、ドアを閉める。
搭乗員が3ヶ所のドアロックを回して声を上げる。
「ドアロック完了! 確認!」
カーターが声を上げる。
「只今より、離陸します! 各員ベルト装着確認して下さい!」
ランカーⅡ5号機、2号機はプロペラ出力を上げ上昇を始める。ドール城の城壁に立っている近衛将兵が手を振っているのが見えるとエリーは窓越しに勢いよく手を振って答えた。ランカーⅡは規定高度に達すると可変翼角度を変えて高度を上げ加速して行く。
エリーの前の席に座るリサがエリーのほうへ顔を向けて言う。
「0700、到着予定です。仮眠をとられたらどうですか? 今日も激務ですよ、たぶん」
「ありがとう。リサさん、そうするよ」
エリーはシートを少し倒してブランケットを掛けて目を閉じる。そしてその横の席に座るユーリはエリーを見つめて微笑んでいた。
◆◇◆◇
ここはベルニス王国、王城国王執務室。
アレッサンドロ国王はソファーに座り早目の朝食を摂りながらサンドラと話していた。
「ローラ一行は第一艦隊で昼食後、訪問とのことです。フランキー、ハルドロ、シンシアの3人は午前中には王城に到着しますので問題ありません」
サンドラが魔道士3人の到着について報告した。サンドラの顔は冷たくアレッサンドロ国王を見ている。
「そうか、問題無しだな。茶菓子でも準備しておけ、ローラは甘い物に目がないそうだ」
サンドラが冷たい視線をアレッサンドロ国王に向けて言う。
「私は、魔導戦闘スーツを着用しておきます。まあ念のためですが」
「そうか、私も準備しておくか」
アレッサンドロ国王はサンドラを見て少し嫌な顔をする。
「陛下は大丈夫です。ローラに怪しまれたら困りますから、最悪退避してください」
アレッサンドロ国王は残念そうな顔をしてサンドラを見る。
「陛下、ご安心してローラをお迎え下されば結構です。あとは私にお任せください」
サンドラは一礼すると執務室から出て行った。
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