和平交渉 第127話 夕食会
エラン皇帝の夕食会。
帝都出撃4日目夜。ここはベランドル帝国、帝都ドール市ドール城、皇帝居住区エリア。
エリーとエランは並んでダイニングテーブルに座って話をしていた。エランがエリーを見て少し嬉しそうに耳元で囁く。
「今日も大活躍だったそうで、私の武功話しで皇城内が盛り上がっていました。ほどほどにしてくれないと私がもちませんよ」
エリーは少し嫌な顔で言う。
「ベルニスの使節団が訪問を打診して来たそうですね。いよいよ追い込まれた感じですかね」
「2国間条約締結の調整ですが、それほど急いで行う必要も無いのですが」
エランが不怪訝な顔でエリーを見る。
「しかもベルニスのNo.2がやって来るのです」
エランはエリーと顔を見合わせて言った。
「ええ、わかりました。明日ベルニスに第一艦隊視察を名目に行って参ります」
エリーがエランに囁いた。エランはそれを聞いて頷き微笑む。
「お任せしますね。ローラさん」
食堂内にマーク宰相一家が入って来た。そして直ぐにエランの前に来て3人が並び一礼する。
「エラン陛下! 本日お招き頂きありがとうございます」
エランは視線をマーク宰相に移して頭を下げる。
「マーク宰相もお忙しい中、ありがとうございます」
マーク宰相はエリーとエランを見て微笑み言う。
「エラン陛下とローラ様は、仲がおよろしいのですね」
エランがマーク宰相を見て微笑み口を少し尖らせた。「そうですね。ローラさんを頼りにしていますからね」
ソフィアが少し強張った顔でエランに深く頭を下げて言う。
「エラン陛下、お初にお目にかかります。マーク・トライアンフの娘、ソフィアと申します」
ソフィアはそう言って頭を深く下げた。
エランは軽く頭を下げて微笑みソフィアを見て。
「エランです。ソフィアさん、よろしくお願いしますね」
「ミリアさん、その後はどうですか?」
エランがミリアを見て微笑み言った。
ミリアは少し嬉しい顔をしてエランに一礼して。
「はい、問題ありません。ありがとうございます」
エランはマーク宰相に微笑んで言う。
「どうぞ席に着いってくださいね」
そして給仕が直ぐに3人を席に案内する。エリーがソフィアを目で追うと少し緊張しているのか動きが硬いのがわかった。
マーク宰相がエランのほうを見て言う。
「本日はお疲れ様でございました。暗殺未遂事件は現在調査中です。詳細は判明次第お伝え致します。それより、帝都市内では
皇帝自ら暗殺者を撃退したとの話が広がり大変な騒ぎとなっております」
「そうですね。無事で何事もなくて良かったです。これもローラさんの指導のお陰ですね」
そう言ってエランはエリーを見て少し嫌な顔をする。
(えーーっ! やり過ぎ? 皇帝の力を示す。それは既定路線ですよね! 怒られるようなことはないはずですが)
エリーはエランの顔を見て微笑み顔を傾ける。
エランは立ち上がりにこやかに両手を広げて言う。
「私の側近を改めて紹介しておきますね」
そしてテーブルの端にいる。セリカを指して言う。
「皇帝護衛隊隊長、兼諜報情報統制官であるセリカさんです」
セリカは立ち上がり一礼する。
「その隣がローラさんの秘書官である。リサさんです」
「その隣が外務担当官のユーリさんです」
「そしてこれは公には出来ないのですが、連邦国からお越しのハル様とレベッカさんです」
「最後に私の友で有り、我が帝国の最大の実力者、魔導士ローラです」
(へーーっ! そんな紹介しなくても、まあうちうちとはいえ、妹とは紹介出来ないよね)
エリーは嫌な顔をしてエランに視線を向けた。エランはそれを見て口を少し緩めて言う。
「明日よりまた、ローラさんには地方都市を廻って頂きます。地方では皇帝より人気が有るとか無いとか聞いておりますが。さぞ大歓迎を受けることでしょう」
それを聞いてマーク宰相が直ぐにエランを見て言う。
「ローラ様はしばらく帝都におられた方が良いのではないのでしょうか?」
「いいえ、出向いてローラさんに障害を取り除いてもらうのです」
エランはそう言って椅子に座った。
「では、今回の暗殺未遂事件は黒幕がわかっていると」
マーク宰相はエランを見て少し嫌な顔で言った。
「ローラさんが当たりをつけています。確定はしていませんが」
エランはそう言ってエリーの顔をを見た。エリーは少し考えた顔をしてから言う。
「はい、ある程度は、ですが国名等は出せませんのでご容赦ください。そのために明日より出かけるです」
そう言ってエリーは頭を下げた。
「はい、そうですか。了解致しました。余計なことはしなくても良いと、そう言う事ですね」
マーク宰相がエランとエリーのほうを見て遠慮したように言った。
「では、食事に致しましょう」
エランが嬉しいそうに声を上げると料理が運び込まれテーブルに並べられて行く。
セリカがエリーのほう見て何か言ったそうな顔をした。エリーは顔を傾け微笑む。
(何か? 思い当たることが無いのですけど)
「ローラ様、後でお話しをよろしいでしょうか?」
セリカがエリーに微笑む。
「はい、なんでしょう?」
エリーは直ぐに尋ねる。
「あとでお話し致しましょう」
そう言ってセリカは頭を下げると食事を始めた。
「はい、わかりました」
(ここでは話せないことなのですね。はい、了解です)
そしてエリーも食事を始めた。ソフィアがエリーを真剣な顔で見つめている。視線に耐えかねてエリーはソフィアに声を掛ける。
「ソフィアさん、食べてくださいね」
「はい、ローラ様、ありがとうございます。ですがここにお集まり方々はお父様以外は、すべて女性で有ることに驚いております。感動して食事が喉を通らないのです」
「そうですね。確かにそうですね」
エランが頷き微笑む。ソフィアが目を輝かせてエランを見て言う。
「帝国がここまで女性を登用したのは初めてです。凄いです」
エランが微笑みソフィアを見て言う。
「勘違いしてはダメですよ。女性だから登用したのでは無く、実力が有ったから登用したのですよ」
「はい、理解しております。ローラ様にもお言葉を頂きました。実力無き者は仕えることは許されぬと。精進致します」
ソフィアはそう言ってエランに頭を下げた。エリーはステーキ肉を切り分けてフォークで、突き刺し口に次々と放り込みながら頷いている。
「でも、ミリアさんも良い娘さんが出来て良かったですね」
エリーはステーキを眺めながら言った。
「ええ、そうです。ソフィアさんは良い娘さんです」
ミリアが少し疲れたように言った。エランがそれを見て言う。
「何か?」
「いいえ、なんでもございません」
ミリアは微笑みエランに頭を下げた。
「明日でも、お茶でも致しますか? ミリアさん2人だけでね」
エランがミリアを見て微笑む。
「はい、ありがとうございます。是非お伺い致します」
ミリアは少し嬉しそうな顔をして言った。エリーはミリアの顔を見て微笑む。
(ミリアさん、わかってるよ。ソフィアさんにウンザリしているんだね。お姉様にお話ししてスッキリしてね)
エリーはステーキをあっという間に平らげる。そしてエランに囁く。
「お手洗いに行って参ります」
「ええ、どうぞ」
「それでは」エリーは席を立ち上がり一礼すると食堂からで出って行った。
ユーリも一緒に一礼してついて来た。
「エリー様、トッドさんから緊急連絡がありました。ベルニスに動きがあるようです」
ユーリは直ぐにエリーの後ろに付いて報告した。
「そう、では朝イチに着くようにしますね。行動は早いほうが良いです。ベルニスの外交部に通達してください。第一艦隊視察で王城にも寄りますのでよろしくお願いしますと」
エリーがそう言うとユーリは直ぐに一礼して離れて行く。
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