和平交渉 第126話 ユーリを洗礼する。
エリーはユーリを洗礼する。
帝都出撃4日目夜。ここはベランドル帝国、帝都ドール市ドール城、皇帝護衛隊重装機兵整備エリア。
エリーは今レンベルTYPEⅡのコックピットパイロットシートに座っていた。後ろのサブシートにはユーリが座っている。
コックピットシールドは閉じられ内部はモニターの明かりのみがエリーの顔を照らしている。
「ユーリさん、ゴメン・・・・・・、今回全てが終わるまで言うつもりは無かった」
エリーは前を見つめてユーリに言った。
「エリー様・・・・・・、私への配慮には感謝します。しかし私はエリー様に忠誠を誓っております。エリー様に危険があるというのにおそばにいなかった事は残念です。仮に父であったとしても、エリー様に危害を及ぼす者は敵です。排除するだけです」
ユーリが珍しく感情を露わにしてエリーに言った。
「本当にゴメン、でもね。お父様に対して冷静には対処出来ないでしょう。それにお父様を殺すような事はさせられないよ。ユーリさんは私にとって大切な人なんだよ。心にキズなんて負って欲しくないんだよ」
ユーリはしばらく間を置いて口を開く。
「・・・・・・エリー様は私にとって大切お方です。私の光であり希望でもあります。エリー様がお許しになられるのなら一生お仕えしたいと思っております。父とエリー様を選べと言われれば当然エリー様を選びます」
エリーとユーリはしばらく沈黙してからユーリが呟く。
「エリー様・・・・・・、私を洗礼してください。この気持ちのモヤモヤを解消して欲しいのです。私はエリー様にお会いしてから嫉妬深い人間だと気づきました。以前は私は冷静でクールなのだと思っておりましたが・・・・・・、それは違いました。今はセリカさんにも良い感情を抱いておりません。良くないと思い抑制すればするほどより大きくなるのです」
エリーはパイロットシートから体を回してユーリの悲しそうな顔を見て言う。
「ユーリさんの気持ちは理解したよ。私としては色々思うけど、そんな感情があったなんてね。わかったよ。ユーリさんの気が晴れるのなら洗礼してあげるよ」
それを聞いてユーリの顔が少し緩んだ。
「ありがとうございます。これで私も晴れてエリー様の正式な従者となれます」
「ええ、でもね・・・・・・。うん! そうだねユーリさんが喜ぶなら良いよ」
エリーはユーリの嬉しそうな顔を見て微笑んだ。
エリーはパイロットシートから体を乗り出してユーリの方へ体をを寄せると女神スキルを発動する。
「ユーリさん、いいんだね」
エリーはユーリ顔を見て確認した。
「はい、どうぞお願いします」
ユーリは微笑み頷いた。
エリーはユーリの手を優しく掴んで顔を寄せる。エリーの体が白色の光に包まれる。そしてユーリの体もその光に包まれた。しばらくしてその光は迸り眩い輝きを放つと消えた。2人は沈黙してから見つめ合う。そしてエリーが囁く。
「ユーリさん、終わったよ」
「・・・・・・・ありがとうございます。私はこれで身も心もエリー様のものです」
恍惚としてわれを忘れるような表情のユーリを見て、エリーは少し動揺したように言う。
「うん、これでユーリさんも能力が上がったね。魔力制御のスキルも調整しておいたから安心だね」
エリーは背中に回っているユーリの手を振り解こうとする。
「エリー様・・・・・・、深淵が見えました。やはり凄いお方です。私の考えは間違っていませんでした」
そう言ってユーリが珍しく顔を真っ赤にしてエリーの瞳を見つめる。
「ええ、そろそろみんなのところへ行かないと!」
エリーがたまらず声を上げた。ユーリが少し驚いった表情をする。エリーはユーリの手を振り解きコックピットシールド開放ボタンを直ぐに押した。
コックピット内に警報が鳴り響き、ゆっくりとコックピットシールドが上に開放されていく。
「さあ、ユーリさん食事会に行こうか」
エリーは微笑み優しくユーリに声を掛けた。
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