和平交渉 第123話 エリー大隊6
エリーは準備する。
帝都出撃4日目昼。ここはベランドル帝国帝都ドール城、皇帝執務室。
エリーは食堂に行かず、マーク宰相と帝国再生案について話しながら昼食を食べていた。
「新たにビトー港湾地区に工業地帯を隣接建設の案ですが、ブラウン商会の支援が受けられるようハリー部長に話しておきました」エランに扮したエリーが言った。
マーク宰相は少し考えて答える。
「ブラウン商会は凄い勢いで成長していますね。もはや対抗出来る勢力もあまりありません。私としては嬉しいのですが、あまり喜ばない連中もいますので適度にバランスも必要です」
「ええ、それはもちろん配慮しますよ」
エリーは少し嫌な顔をしてから直ぐにエリーは嬉しいそうにマーク宰相を見て言う。
「ミリアさんとは正式な夫婦になられたのでしょう? どうですか新婚生活は」
マーク宰相は少し困った顔をして言う。
「それが、ミリアが実家のほうへ挨拶に行きたく無いと」
「あゝ、知っています。でもミリアさんのご両親から許可はもらったのでしょう」
エリーは少し遠慮気味で言った。
「エラン陛下は、ミリアとも交流があるのですか? 詳しい話はしていないはずですが」
エリーは微笑み言う。
「ええ、そうですね。エリーとはよく話すので」
「あゝそうですね。寝室もご一緒でしたね。ですが今日から地方都市にお出かけで寂しですね」
マーク宰相はエリーの顔を見て言った。
「ええ、なかなかひとりでは寂しいですね」エリーがマーク宰相を見て言った。
「夜もミリアさんとは仲がよろしいのですか?」
エリーが嬉しそうに聞くとマーク宰相は視線を下げる。
「それが娘ソフィアがミリアに入り浸りで困っているのです」
「良いではありませんか。仲良しなのでしょう」
「ミリアが取られそうな勢いで」
エリーが思い出したような顔をして。
「あゝ、もうそろそろ時間ですね」
エリーがマーク宰相を見て言った。
「商工金融会議ですね」
マーク宰相がエリーを見て少し遠慮気味に言った。
「もし訳ありません。本来なら私が出席しなければならないのですが、和平交渉調整で今、手を離せないので」
「今はしょうがないですよ。では準備がありますので、私は居室に戻ります」
エリーがそう言うとマーク宰相は椅子から立ち上がり一礼して言う。
「はい、私も軍との打ち合わせがありますので、失礼致します」
マーク宰相は直ぐに執務室から出て行った。
エリーはセリカを内線電話で呼び出した。直ぐにドアがノックされセリカが入って来て一礼すると言う。
「準備は整っております。レベッカさんの部下がすでに待機しています」
「相手は短時間で一気に来ます。絶好の場所を用意しましたらね。市民を巻き込む訳にはいきませなから」
しばらくしてレベッカがノックして部屋に入って来て言う。
「今日来るのは確実のようです。人数は10人程度、そしてかなりの凄腕のようです」
エリーはレベッカを見て言う。
「凄い情報収集力ですね。誰かその集団の中にいるのですか?」
レベッカは困った顔をする。
「エリー様、私は従属の契約を結んでいるのです。エリー様は心を読もうと思えばすぐにわかる事です」
エリーはレベッカ顔を見て微笑んで言う。
「ええ、でもね。人形にはしたくないですからね。拘束は簡単です。ですがレベッカさんの能力を活かすためにはこのままで良いです」
エリーはレベッカとセリカの肩を抱き寄せ呟く。
「今日は、おふたりの晴れ舞台ですから、存分に暴れて下さい。私は後ろで備えておきますからね」
そしてエリーは優しく手を離して執務室から出て行った。
◆◇
ここは帝都ドール市北区商家の2階の一室。
襲撃メンバー達は一旦解散してから、少し前に再度集合していた。全員椅子に座ってテーブルの真ん中に置かれている地図を眺めていた。
銀縁メガネの男性が言う。
「予定通り、エラン陛下は商工金融会議に出席する。警備体制に変更は無い。周辺に近衛兵団1個小隊が展開。皇帝周辺には皇帝護衛隊の10名ほどがつく。そしてもちろん皇帝護衛隊隊長セリカはそばに控えている」
黒髪の短髪口髭の男性が銀縁メガネの男性に視線を向けて言う。
「ベーグルさん、あんたは皇帝に行くのかい?」
ベーグルと呼ばれた銀縁メガネの男性は、視線を一番奥に座っている50代の男性に向けて言う。
「ガルフ様が配置を決めておらる。私はそれに従うだけだ」
そしてA4サイズのファイル紙を地図の上に置いた。
《ガルフ エラン皇帝バックアップ支援
ベーグル 護衛隊セリカ リーダー
ボリス 護衛隊セリカ
コービン エラン皇帝 リーダー
アドリー 護衛隊セリカ
カーティス 護衛隊セリカ
エイミー エラン皇帝
バーネス エラン皇帝
シエル バックアップ支援 リーダー
イレイナ バックアップ支援
フリア バックアップ支援 》
ガルフ以外のメンバーがテーブル上の分担表ファイルを見入る。
赤髪ロングヘアの女性が口を開く。
「この割り振りは、ガルフ様がお決めになったにですか?」
ガルフと呼ばれた男性は椅子から立ち上がり全員を見据えて言う。
「現状の情報から判断した。皇帝護衛隊のセリカを皇帝から引き離す。そして皇帝エランを仕留める。短時間で一気にやらねば周辺から応援もある。想定時間は最大5分以内だ。それでけりがつかなければ我々は敗北する」
黒髪の短髪口髭の男性が声を上げる。
「ガルフ様、サンドラ様の見立てを疑っている訳では無いが、こいつらそんなにヤバいのか? 俺たちが3人もいれば大体の事は片付けてきた。それが今回はこのメンバーで失敗なんてありえない」
「ボリス! 君は感じないのか? ここ最近の帝都のマナエナジーの流れが変わったことに」
ガルフはボリスと呼ばれた黒髪の短髪口髭の男性を睨みつけた。
「ガルフ様、申し訳ありません。ボリスには良く言っておきますのでご容赦を」
銀縁メガネのベーグルが立ち上げ頭を下げた。
ガルフは銀縁メガネのベーグルを冷たい目で見て言う。
「ベーグル、君は感じているか? この異様な感じを」
銀縁メガネのベーグルは答える。
「はい、皇城を中心にして膨大な量が流れております。つまりそれだけのマナエナジーを扱える術者がいるということです。そして今もあまり変わっていない。つまり皇帝エラン、皇帝護衛隊セリカこの2人はかなりのものだということですね」
ガルフは頷き声を上げる。
「君達は強い! だがそれは弱者を相手にした時だ。今回の相手は強者中の強者だ。明らかに君らより強い。だから我々は力を合わせて仕留める。我は捨て去りお互いに協力するよう頼む。でないと勝機は無い」
そう言ってガルフは頭を下げた。そしてメンバー全員がガルフに一礼して言う。
「我にお任せを、必ず成功させましょう」
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます! これからも、どうぞよろしくお願いします。