和平交渉 第122話 エリー大隊5
エリーは宝物庫から魔道具を取り出す。
帝都出撃4日目朝。ここはベランドル帝国帝都ドール城、皇帝執務室。
エリー達は朝食を済ませて、集まっていた。
「リサさん、よろしくお願いします」
エリーがそう言うとリサは寂しそうに言う。
「はい、役目は果たします」
今回、大魔導師ローラ一行は、ローラ(エラン)、リサ、ビア、アンジェラ、セーヌのメンバーで出動することになっている。そしてランカーⅡ3機に重装機兵2機積載、皇帝護衛隊に扮したブラウン商会傭兵部隊精鋭一個小隊が同行する。
今回の入れ替わりの詳細を知っているのはローラに扮したエランとリサ、そして傭兵部隊長の3人のみである。
エリーがエランに近寄り耳元で囁く。
「昨日、記憶帯の共有化をしたので大丈夫です。それとペンダントは必ずつけておいてくださいね」
エランは昨日エリーから渡された。胸元のペンダントを手で触り確認する。
「ええ、大丈夫です。そちらこそ気をつけてね」
エランは微笑みエリーの朱色の瞳を見つめた。帝都に残るメンバーはエラン(エリー)、セリカ、レベッカの3人。3人は詳細を知っている。そしてハル少将も事情を把握している。
レベッカがエリーを見て言う。
「今回ユーリさんに知らせなくてよろしいのですか? 万が一のことが有ればどうされます。隠しておくのですか」
「はい、一切言うつもりは無いです。ユーリさんのお父様が出て来たら私が対応します」
エリーはレベッカに微笑み言った。
「エラン陛下! それでは行って参ります」
ローラに扮したエランがエリーを見て言った。
「はい、気をつけて行って下さい」
エリーは部屋のメンバーを眺めて微笑み言った。そして出動メンバーが一礼して執務室を出て行く。ドアが閉まるのを確認してセリカがエリーを見て言う。
「エリー様、今回皇帝襲撃はあるのですよね。この陣容で対応出来ると思われているのですね」
「ええ、私たちを上回るような脅威は帝都には存在しません」
エリーはセリカを見つめて言った。
「しかし、私などお役に立てるかどうか、不安です」
セリカがエリーに寄って自信無さそうに言った。
エリーはセリカとレベッカを眺めて言う。
「私の中の序列で言えば、セリカさんは2位だよ。レベッカさんは3位だしね」
レベッカが少し驚いた顔をして言う。
「その序列とはどんな基準なのですか? もちろん1位はトッドさんですよね。ユーリさんは何位なのですか?」
エリーは直ぐに答える。
「総合力で決めたんだけど、剣技、魔力量、魔力制御能力、スキル、とかを総合的に見ての戦闘力かな。因みに剣技だけならユーリさんは2位なんだけど魔力量が少ないから総合4位なんだよね。レベッカさんは魔力量、スキル、魔力制御が高いから3位にしました」
セリカは戸惑ったように言う。
「私が2位・・・・・・。そんな力は有りませんよ」
「セリカさん、私の洗礼を受けたよね。それで能力が爆上がりなんだよね。気づいて無いの?」
エリーはセリカを見つめて口を緩めて言う。
「気づいて無いの・・・・・・、本当に? 魔法だってもう特級魔道士レベルだよ」
エリーはセリカの手を握って言う。
「今から、魔力制御のスキルを付与するからね。リラックスして目を閉じて」
エリーの体が白色の光に包まれるそしてセリカの体もその光で包まれた。しばらくしてその光は輝きを増して消える。
「セリカさん、これで魔力を自覚して制御出来るはずだよ」
「はい、体が熱くなった感じです。そして体の中で渦巻く光の塊が自覚出来ます」
セリカが少し動揺したように言った。
「じゃあ、ついて来てくれますか」
エリーが2人を見て微笑む。
レベッカがエリーを見て言う。
「まだ出発には早いですが?」
「宝物庫だよ。2人に渡したいものがあるんです」
エリーが嬉しいそうに答えた。そしてエリーは執務室室から皇城地下の宝物庫へと移動した。
地下へ入ると宝物庫の隔壁扉がある。その前には警備の近衛兵が2人立っていた。
「エラン陛下! 御用でしょうか」
2人の近衛兵はエリーを見て敬礼して声を上げた。
「ええ、中へ入ります。後ろの2人も同行しますのでよろしいでしょうか」
「はっ! どうぞこちらへ」
近衛兵が隔壁扉の動作スイッチを操作して扉がゆっくりと左右に開いて行く。分厚い金属製の扉は開くまで10秒ほど掛った。
「それでは中へどうぞ」
近衛兵が声を上げて腕を上げて誘導した。
「私達は中へは行けませんので、時間はどの程度でしょう」
エリーは少し考えて答える。
「10分くらいですね」
「はい、了解致しました! 空調換気システム作動、酸素濃度問題ありません。お気をつけて」
エリーはそれを聞いて隔壁扉の奥へと進む。セリカとレベッカもエリーのあとを追って奥へと進んだ。通路を10mほど進むと金属製の扉がある。その横には操作パネルがあった。エリーがそれを操作すると音声が流れる。
〈エラン・ドレーク認証しました! セキュリティシステム解除! ドア開放!〉
警告音が鳴り響きドアがゆっくりと開放されて行く。そしてドアが開放されると内部の照明が点灯された。エリーはドアの内部へと進む。
レベッカがエリーに寄って言う。
「ここが宝物庫ですか。すごいですね」
内部の広さは50畳ほどの空間がある。そこに棚が並べられそれぞれの宝物が保管されている。
エリーが微笑んで言う。
「私も入るのは初めてなんですけどね。お姉様の記憶から場所はわかっていますから」
エリーは一番奥の棚へ行き棚の扉を開ける。
「魔導剣、ゲルトの雷、これだね」
エリーはそう言って剣を棚から取り出した。エリーは剣を鞘から抜き眺めて言う。
「うん、本物だね。魔導反応が凄い」
そう言って鞘に収めて言う。
「セリカさん、これをどうぞ」
そしてセリカに渡した。セリカは戸惑った顔をして言う。
「これは、魔導剣ですよね」
「はい、ベランドル王国に伝わる。魔導剣のひとつです。これは汎用品の魔導剣とはレベルが桁違いです。セリカさんの適性に合ってる剣です。受け取ってください」
エリーはセリカに微笑み言った。そう言ってエリーはさらに別の棚に移動して扉を開ける。
「魔道具、ドークの加護のネックレス」
エリーはそう呟いて、箱からネックレスを取り出して眺めて微笑み言う。
「本物だね。レベッカさんこちらへ」
レベッカが隣に来るとエリーは金具を外して言う。
「屈んでもらえますか。ネックレスをつけます」
レベッカが屈むとネックレスを首に回して金具を留める。そうしてエリーは魔力を通してネックレスをロックした。
「レベッカさん、これはかなりの魔道具です。魔力量制御、防御力の強化、身体強化等レベッカのレベルを一段階以上向上させます」
レベッカは頷き言う。
「はい、自覚出来ます。ですが、今回の相手それほどなのですか?」
「いいえ、今のままでも十分対応出来る相手だよ。用心もあるけど、殺さず生け取りにするためには圧倒的な力が必要なんだよ」
エリーはさらに言う。
「今後の戦いのためには、みんなにはさらに強くなってもらわないとダメなんだよね。そのためには早く使って慣れてもらわないと、だから今回は3、4割使いこなせれば良いかと思います」
セリカがエリーを見て言う。
「今後、さらに強力な敵が現れると、そのための準備ということですね」
エリーは微笑み言う。
「はい、その通りです。今後ますます強くなってもらわないと困りますからね。あなた達は、女神に選ばれた逸材なのですからね。自覚して下さいね」
そう言ってエリーは2人を見て言う。
「では、今回の件さっさと片付けましょう」
2人は頷き言う。
「はい、エリー様」
そうして3人は宝物庫から出て行く。
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