和平交渉 第120話 エリー大隊3
レベッカからの情報。
帝都出撃3日目夜。ここはベランドル帝国帝都ドール城。城内皇帝居住区食堂。
エリーはダイニングテーブルに座り遅め目の夕食をエラン達と摂っていた。今日は肉料理メインのコース料理だった。隣にはエランが座り、エリーを眺めて微笑んでいる。テーブルの反対側にはハル少将、アンジェラ、セーヌが並んで座っている。
「ハル閣下! 中将へのご昇進おめでとうございます」
エランがハル少将に微笑み言うとハル少将は頭を下げて言う。
「エラン陛下、ありがとうございます。今後ともよろしくお願い致します」
ハル少将はいつもの軍服でなく黒のスーツを着用していた。さすがに連邦国軍の軍服姿では帝国内では支障をきたす。
「軍関係は先ほどお話した通りです。連邦国議会ではすでに全体的和平案は、ほぼまとまっているようです。損害賠償、国境線等で若干の調整があるようですが。数日中には確定すると思います」
ハル少将がエランを見て言った。
「はい、こちらは閣僚会議で現在進めております。全権代表にライド前元老機議長、現外務卿が選出されています。こちらも数日中にはまとまると思います」
エランはハル少将に言うと隣りのエリーを見て嫌な顔をする。
「ローラさんは、明日から地方都市を周ってもらう事になっているので、よろしくお願いしますね」
エリーは少し疲れた顔をして言う。
「ええ、了解です」
そう言いてスプーンでスープを掬い口に運んだ。少し間を置いてエリーはアンジェラとセーヌを見て言う。
「アンジェラさん、セーヌさん明日からよろしくお願いしますね」
「はい、重装機兵は準備出来ています。ブラウン商会の新型です。当然、帝国軍仕様になっています」
アンジェラが嬉しいそうに言った。それを見てエリーは言う。
「機体の最終調整は終わっているのですか?」
「はい、システム調整は完了しています」
「では直ぐに出発出来るのですね」
エリーは切り分けた牛肉をフォークで口に運びながらアンジェラを見て言った。
「はい、朝イチで大丈夫です」
アンジェラは直ぐに答えた。そして食堂の入口からレベッカが入って来て慌てたようにエリーに近づき耳元で囁く。エリーはそれを聞いて一瞬考えた顔をしてエランを見て言う。
「エラン陛下少し問題が発生しました。予定を変更してもよろしいでしょうか?」
エランはエリーを見て嫌な顔をする。
「ここでは言えないことですか?」
「はい、部屋に移動してからのほうが良いと思います」
エリーが答えると、エランは直ぐに椅子から立ち上がる。
「申し訳ありません! 私とローラさんは執務室へ参ります。みなさんは食事を続けてください」
エリーは立ち上がり一礼すると、レベッカの顔を見て頷きエランと共に食堂から出て行く。
そして皇帝執務室に入ると直ぐにエランがエリーの顔を見て尋ねる。
「何があったのです? 急を要することですか」
エリーの隣について来ていたレベッカがエランに報告する。
「エラン陛下、帝都に刺客が侵入しているようです。目的はエラン陛下の暗殺です。刺客はベルニスからのものと思われます」
エランは少し動揺した顔をしてレベッカを見る。
「私の暗殺? 情報は確かなのですか?」
「はい、アンドレアの信頼できる情報網から上がって来たものです。ほぼ間違いないと思われます」
エランはソファーに座ってエリーに微笑む。
「何か対策があるのでしょう」
「はい、私と入れ替わります」
エリーはエランの反対側のソファーにゆっくり座った。
「明日からの地方都市周りにお姉様に行ってもらいます」
「えーーっ! それは無理です。出来ません」
エランが声を上げる。
「大丈夫です。何か問題がありますか?」
エリーが不思議そうにエランに言った。
「私・・・・・・。重装機兵なんて操縦出来ないし。剣んなんて素人ですよ」
エリーはソファーから立ち上がり手を上げる。
「お姉様に簡易的にスキルを付与します。それと操縦はしなくても良いです。アンジェラさんの機体に同乗して下さい」
エランは少し不安そうに言う。
「エリー、私にローラを演じる自信はないけど、何とかなるのかしら」
エリーは黒縁メガネを外しエランの顔に掛ける。そして偽装スキルを発動、エリーの魔力波動を再現してエランに被せる。
「大丈夫。よほどの術者でなければ見破れないよ」
エリーはエランの魔力波動を再現して偽装した。
「レベッカさん、どうですか?」
レベッカは戸惑った顔をしてエリーの顔を見て言う。
「いま目の前で見ていたので、何とか見分けれます。ですが、外見と雰囲気が全く入れ替わったのには驚きです」
エリーがエランを見て言う。
「では食堂に戻って試してみましょう!」
エランはエリーが意地悪い顔をしていのに気づいて少しガッカリしたように言う。
「エリー、私の評判下げないでよね」
「お互い様です」
エリーが嬉しそう言った。そして3人は執務室を出て食堂へと向かった。
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