北部戦線13 後方配置3
ここは、北方戦線、エリー機動大隊現地配備、6日目午後。
エリー大隊は、帝国特殊部隊の襲撃を受けてから37時間ほど経過していた。
エリー大隊は後方配置命令を受け、特別第三機動連隊ベースキャップへ向かっている。
エリーは、憲兵隊自走車両の後部座席でうとうと居眠りしていた。
エリーは、ユーリの肩に頭を乗せて小さな寝息を立っている。ユーリは、エリーの髪の毛を優しく撫でながら思う。
(もうあらから五年近く経っが、エリー様は相変わらず愛おしいままだ・・・・・・、エリー様にこうも惹かれるのは何故なのか?)
「あゝ、ユーリさん・・・・・・、ゴメンナサイ」
エリーが目を覚まして慌てた様に言った。
ユーリが優しくエリーの肩に手を回して言う。
「お気になさらず、そろそろ到着しますが、打ち合わせ通りお願い致します」
エリーはユーリの優しく輝くグリーンの瞳を見つめて言う。
「はい、理解してます! アンジェラさんにはユーリさんが説明して下さいね!」
そして、特別第三連隊ベースキャップへ到着する。ベースキャップ入口前に各車両が停車、連隊警備士官から確認を受けている。
警備士官が声を上げて言う。
「エリーブラウン少佐! どこに居られますか! 連隊長がお呼びです!」
エリーが憲兵隊車両から降りて手を挙げる。
「はい! ここです! エリーです!」
警備士官がエリーに駆け寄って来る。
警備士官は手前で立ち止まって敬礼して言う。
「連隊長がお待ちです! ご案内しますので、どうぞこちらへ!」
「諜報部の方もご一緒にお願いします!」
警備士官が再度敬礼してユーリ達に言った。
警備士官が先導して、エリー達三人がベースキャップ内を歩いて行く。しばらく歩くと警備士官が士官用プライベートテントの前で立ち止まりエリーに声を掛ける。
「ここです! お待ちください!」
「ブライアン中尉です! エリー少佐お連れしました!」
テントの中から女性の声がする。
「ブライアンご苦労! 入れ!」
「はっ! 入ります!」
警備士官が答えて、入口を開ける。そこには、エリーに馴染みの顔が微笑んでいた。
「エリー着いたか! ご苦労!」
赤髪のショートボブの髪型は変わらず、紫色の瞳が嬉しいそうに微笑んでいる。
この女性士官は、特別第三機動連隊長ジェーン・ジョージア中佐である。そして、エリーの士官学校時代の元専任指導教官でもある。
エリーはテント内部に入りジェーンに敬礼して言う。「特一機動連隊、第一大隊エリー少佐! 只今より、ジェーン連隊長の指揮下に入ります!」
そう言うと、ジェーン連隊長の顔を見て微笑んだ。
ジェーン連隊長は、後ろのユーリに気付き顔を強張らせて言う。
「ユーリさん、お久しぶりです・・・・・・、相変わらずですね、その闘気消してもらえませんか?」
トッドがユーリの肩を軽く叩き言う。
「申し訳ないです、ジェーンさん! ユーリは、貴女に対抗心むき出しなんですよ」
トッドが申し訳なそうにジェーンに頭を下げる。
ジェーン連隊長はトッドを見て少し微笑む。「トッドさん、構いませんよ!」
「ブライアン! 下がってよい!」
ジェーン連隊長が警備士官に言った。
「はっ! 失礼します!」
警備士官がジェーン連隊長に敬礼してテントから出て行く。
ジェーン連隊長のテントは連隊長専用プライベートテントで広さは15畳ほどある。一番奥はベットがあり仕切りで見えない様になっている。入口付近にはテーブルがあり、周りを囲んで椅子が6脚置かれている。
「まあ、座って話しましょう!」
ジェーンがトッドを見て言った。
エリーがジェーンの隣の椅子にゆっくり座ると、トッドとユーリがテーブルの反対側の椅子に座った。
ジェーンが全員の顔を見てから喋りだす。
「今回の件、参謀総長から直接極秘指示が出ていますので、詳細内容は現在のメンバー以外へは洩らさない様お願いします」
「先ず、トッドさん、ユーリさんは、諜報士官設定になっているのでよろしくお願いします。目的はエリー少佐の身辺護衛、調査となっていますので、エリーに張り付き離れない様にしてください」
「それと任務中、他者がいる場合は、軍人らしく行動してください。あとは、名前階級で、お互いを呼び合って下さい。私からは以上です!」
ジェーンが静かな口調で言うと、三人が頷き微笑んだ。
エリーがジェーンの顔見て戯けて言う。
「ジェーン連隊長、なんか雰囲気変わったね! なんか真面目な女性士官みたいな感じになってる?」
ジェーンが少し困った顔をして言う。
「当たり前だ! 昔とは違う! 部下を二千人預かっているし・・・・・・、結婚もしたしな、それにハリーに言われるのだよ、ちゃんとしろとな・・・・・・」
エリーはジェーンの瞳を見つめて言う。
「あんなに毛嫌いしていたのに、まさかだよね! ハリーさんと結婚するなんて思わなかった」
ジェーンが少し恥ずかしそうな表情になって、エリーの肩を左手で掴み抱き寄せて、昔の様にエリーの髪の毛を掻き回した。
「しょうがないだろ・・・・・・、奴から口説かれたのだから、意外と良い奴だったそれだけだ!」
「ハリーさんとは、会えているのですか?」
「あゝ、首都のブラウン商会のアパートで一緒に住んでいるのだが、転戦中は中々会えんな・・・・・・、もう1ヶ月会っていないな」
ジェーンが寂しそうに言った。
ユーリが少し機嫌悪そうに言う。
「ジェーン連隊長! 私達を連隊将兵に紹介していただけますか!」
ジェーンが視線を下げて立ち上がり言う。
「ユーリ少佐! そうだな、部隊員に紹介しよう!」
そして、他の三人も椅子から立ち上がる。
「そうだな、先ずは、連隊本部に行こう!」
連隊本部テントは直ぐ隣にあった。
ジェーンがテント入口に立ち声を上げる。
「紹介したい者がいる! 全員注目してくれ!」
本部テント内に居た15名ほどの将兵が一斉に立ち上がりこちら注目した。
ジェーンが視線をトッドに向け頷く。それを見てトッドが敬礼して言う。
「諜報部中佐、トッドウオールです。しばらくご一緒しますのでよろしくお願いします」
今度は、ユーリが一歩前に出て敬礼する。
「諜報部少佐、ユーリローガンです!
よろしくお願いします!」
そして、エリーが前に出て姿勢を正し敬礼する。
「特別第一機動連隊、第一機動大隊長、エリーです! 皆さんよろしくお願いします」
連隊本部内の士官の自己紹介が終わり、次に重装機兵整備ブロックに移動する。
ジェーンが手を挙げ整備責任者をこちらに呼ぶ。
「連隊長なんでしょう?」
整備責任者が機嫌悪そうに言った。
「ブラウン商会の人間が勝手に立ち入って! 場所占拠してるんですけど、どうなっているんですか!」
整備責任者はかなり機嫌が悪い。そして、更に言う。
「あそこに、グリーン迷彩の新型機兵! 邪魔でなのですが!」
責任者が指差して言った。
ユーリが申し訳無さそう言う。
「あゝそれ、私の機兵です・・・・・・」
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