和平交渉 第118話 エリー大隊1
エリーはベルニスを発つ。
帝都出撃3日目夕方。ここはベルニス王国、王城内広場。
2機のランカーⅡはプロペラを予備回転で回して出発に備え待機している。
エリーとエランが並んで姿を広場に表すと、整列している衛兵達が敬礼する。
エランの横にはアレッサンドロ国王が笑顔で会話しながら歩いていた。
「ローラ様とはもう少しお話しをしたかったですね。またお越しの際は美味しい料理を準備して歓迎致します」
エリーはアレッサンドロ国王を見て微笑み一礼する。
「はい、ありがとうございます。機会があれば是非お願い致します」
アレッサンドロ国王は立ち止まりエランに手を差し出して握手を求める。エランはアレッサンドロ国王を見て微笑み握手した。
「今後ともよろしくお願いします。聡明なアレッサンドロ国王陛下ならご判断を間違われることは無いと信じております」
そう言ってエランは深く頭を下げた。
「エラン陛下、お手柔らかにお願い致します」
アレッサンドロ国王はエランの手を握りしめて言った。
そうして2人はランカーⅡ5号機に乗り込む。搭乗ドアが閉まりランカーⅡは上昇を始めるとアレッサンドロ国王達が手を振り見送る。そして2機のランカーⅡは可変翼の角度を変えると速度を上げてあっという間に見えなくなった。
アレッサンドロ国王はサンドラを見て言う。
「大魔導師ローラ、あれは危険だ。見た目と内包する力のギャップが大きい。大きな障害になることは間違いない。港湾での活躍も大きな話題となっているようだが。そのような魔道士が現代にいようとはな」
「はい、エラン陛下を仕留めるのも容易ではないと思います。しかしやらねばならないのです。我々に打つ手はあまりありません。もう帝都に送り込み準備を進めております」
「そうか、証拠は残さぬようにな。我々とわかれば潰されるぞ。あのローラに」
アレッサンドロ国王は頷き空を見上げた。
2機のランカーⅡは速度を上げ高度7000mで帝都へ向け飛行していた。
「エリー、第一艦隊は明日出発するのですか?」
エランが隣のエリーに話し掛ける。
「ええ、その予定です。受け入れ改修ドックの準備はカラにして待っている状態です。ブラウン商会の担当者はすでに第一艦隊に着任しています」
「段取りはバッチリね。お金はしっかり取るんでしょ?」
エランが嫌そうな顔をして言う。
「もちろんです。タダなんてある訳ないでしょう。いくらお姉様でもね。帝国国庫からしっかり頂きます。それに借りをつくリたく無いでしょう」
エリーは嬉しそうにエランを見て言った。
「でもブラウン商会は、今や大陸全土に影響力を持つ巨大商会ね。穀物から兵器まで取り扱わない商品は無いのよね。絶対に敵には出来ないわ」
エランがエリーを見て微笑み言った。
「そうですか、ジョンお父様はやり手ですからね」
そう言ってエリーはシートを倒し寝る体勢をとる。
「トッドさんが残ったのは残念ですわ」
エランが寂しそうな顔でエリーを見た。
「ベルニス監視のためです。しょうがないですね」
エリーは目を閉じて言った。
「トッドさんとユーリさんはどういった関係ですか?」
エランが心配そうに言った。
「上司と部下の関係です。ユーリさんはトッドさんを尊敬していますが、恋愛感情は無いです」
エリーはブランケットを足に掛けて仮眠をとる準備をしている。
「エリーには見えるのですよね」
「はい、見えますよ。どんな感情を抱いているか、でも極力そう言う感情的ものは見ないようにしています。私の精神的な負担が大きいので」
エランは目を閉じているエリーを見つめて言う。
「では、私がトッドさんに抱いている感情も見えるのですよね? エリー」
「・・・・・・ええ、見えますよ」
エリーは窓のほうへ向きを替え口を閉じた。
「そう、なら良いです」
そう言ってエランも目を閉じる。
◆◇
ここはアンドレア共和国、首都ニュードレア、外交関係施設内。
ハル少将は椅子に座りレベッカと話している。
「私に帝国との事前協議の段取り指示がありました。政府にはエラン陛下と面識があることが完全にバレているようです。それと内示がありました。軍務行政官への異動と中将への昇進です」
レベッカはハル少将に一礼して言う。
「昇進おめでとうございます。ですが、軍は準備を全てハル少将に丸投げですか? 頼りにされているのは結構ですが、北部戦線から休み無しですよね。1日くらいは休まれないとダメですよ」
ハル少将はレベッカを見て微笑む。
「大丈夫です。今日はエリーさんに会えるのですよ。帝都出発は予定通りお願いしますね」
レベッカはハル少将を見て言う。
「はい、ランカーⅡ7号機が郊外に待機しています。では1時間後に出発しますのでよろしくおねがいします」
ハル少将はレベッカを見て言う。
「エリーさんの大隊メンバーを商会職員として数名連れて行く予定ですね。よろしいですか」
レベッカが一礼して答える。
「はい、アンジェラ中尉、セーヌ大尉の2名です。合流後は皇帝護衛隊の応援をするそうです」
ハル少将は立ち上がりレベッカを見て言う。
「では、お願いします」
レベッカはハル少将に頭を下げると、部屋から出て行った。
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