皇帝権限奪還 第117話 皇帝護衛隊24
エリーとエランは腹を割って話す。
帝都出撃3日目昼過ぎ。ここはベルニス王国、王城接待客室エリア。
エリーは帝国第一艦隊訪問からベルニス王城へ帰って来ていた。目の前にはエランがいる。
「エランお姉様、撤退の調整は完了しました?」
「ええ、問題なく終わりました。ベルニス側も表面上は平静を装っています」
エランは微笑みエリーを見る。
「私が調整役なんて、ほんとハリーさんも人使いが荒いです。私はまだ10代半ばのいたいけな少女なのに・・・・・・」
「へーーっ!」エランが驚いた声を上げる。
「なんですか! 何か!」
エリーが機嫌悪そうな顔をしてエランを見る。
「確かに見た目は・・・・・・、でもやっている事は大国の凄腕国王にも引けを取りませんよ。まさに武も智も兼ね備えた英雄ですよ。そしてエリーの周りには優秀な者も集い羨ましい限りです。私には徳が無いのかもそのような者がいません」
「そんな寂しいことは言ってはダメですよ。エランお姉様は魔力量も多いし、ちゃんと修練制御すれば戦うことだって出来ます。それに血統者としての受け継いだ徳だってあります」
エリーはエランの手を握って優しく言った。
「まあエリーには絶対勝てないことは理解しています。それはエリーには女神様がいて私にはいないのですからね。私を洗礼してくれればよいのですよ。そうすれば力だって倍増するのでしょう?」
エランは寂しいそうに言った。エリーは顔を近づけエランの瞳を見て言う。
「洗礼は出来ません! 女神の洗礼すれば確かに能力は飛躍的に向上します。でもね、私に逆らえなくなるのですよ。それに隠し事が出来なくなるのです。お姉様には私が間違ったことをした時に止めて欲しいにです! ですから出来ません! なんでも言い合える姉妹でいたいじゃないですか・・・・・・」
エリーは少し悲しそうな顔をしてエランを見た。
「ゴメン・・・・・・、エリー私はダメね。エリーの気持ちを理解していない」
そしてエリーの手を握り締めた。エリーはエランの顔を見て微笑み言う。
「では、昼食に致しましょう!」
「あゝ、うん、エリーは切り替えが早いわね」
エランが口を緩めて少し笑った。
「夕方には出ますよね。その前に国王陛下にご挨拶しておかないといけませんね」
エリーは微笑み言うとエランは少し考えて言う。
「国王はエリーのことをかなり警戒しているようですよ。まあ釘を刺して置いてくださいね」
「では、お部屋で食べますか?」
エランがエリーに尋ねる。
「王宮食堂へ行ってみませんか? 最後ですしね」
エリーが嬉しいそうに言った。
「じゃあセリカさんに連絡してもらいます」 エリーが客室のドアを開けてセリカに声を掛ける。
「申し訳ありませんが、接待担当者に王宮食堂に行きたいと伝えてもらえませんか?」
セリカは直ぐに頷きその場から離れる。
しばらくして王城接待担当者が皇帝客室にやって来る。接待担当者はエランに一礼して言う。
「少しお待ちください。今準備をしております。準備が整いましたらご案内致します」
エランが接待担当者に言う。
「どのくらいですか。ローラさんがお腹を空かして大変なのです」
「はっ、大急ぎでいま準備しております。どうかご容赦ください」
接待担当者は焦ったように深く頭を下げる。少し時間が経ってドアの外に食堂の担当者が来て接待担当者に小声で話している。
「エラン陛下! 準備が整いました。どうぞご案内致します」
エランとエリーは立ち上がり客室から出るとセリカとリサが横に寄って来る。
客室エリアから少し出ると海の見える通路を移動して王宮食堂へ到着した。
食堂の海側には大きな窓があり綺麗な景色が広がっている。
食堂の担当者達が整列してエランが入室すると一斉に深く頭を下げる。接待担当者がエランに尋ねる。
「メニューはいかが致しましょう」
エランが微笑み答える。
「お任せ致します。軽くさっぱりしたものでお願いします。海辺ですしね海鮮ものでよろしいかしら」
エリーは微笑み言う。
「エラン陛下、担当者がお困りですよ。簡単なもので良いでしょう」
「そうね。ローラさんが選んでください」
エランは微笑みエリーを見る。エリーは嬉しそうに言う。
「じゃあ、海鮮もので何かおすすめがあればそれをお願い致します」
食堂担当者がエリーに一礼して言う。
「ではお刺身コースでよろしいでしょうか? 朝一採られた新鮮なお魚のお料理です」
エリーは微笑み答える。
「はい、それでお願い致します」
◆◇
ここはベランドル帝都ドール城内、政府執行機関エリア、宰相執務室。
マーク宰相は執務机で書類の処理を忙しくしていた。執務室の入口付近には秘書官の机がありミリアが席に座って電話の対応をしていた。ミリアが受話器を置くとマーク宰相が話掛ける。
「覚悟はしていたが、それ以上だな。軍司令官の比では無いな」
マーク宰相が言うとミリアがマーク宰相の執務机の前までやって来る。
「マーク閣下! 何弱気な事言っているのですか。まだまだこれからですよ。エラン陛下やローラ様だっていま頑張っておられるのに・・・・・・、あなたはこれぐらいの事でガッカリです。マーク閣下は選ばれたのです。そのことを理解して頑張ってください」
マーク宰相はミリアの顔を見て寂しそうな表情をする。
「あゝ、すまないミリア・・・・・・、だが弱音ぐらい吐かせてくれ。言えるのはミリアぐらいなのだからな」
ミリアはマーク宰相の顔を見て言う。
「理解はしています。プライベートなら優しくいくらでもします。愚痴だってお聞きします。ですが今は執務中です。そして私はマーク宰相の秘書官です」
「あゝ、わかった・・・・・・、話は変わるが、ソフィアはまだ帰っていないのだな」
「はい、今日の皇帝陛下の夕食会に参加させて欲しいとのことですが、親睦会なのでたぶん参加は問題はないと思います」
ミリアがマーク宰相に微笑み言った。
「予定では、1800帝都へ戻って来られる予定だが、ローラ様が目的だろう。一緒に帰って来られるかはわからんぞ」
マーク宰相が言うとミリアが少し困った顔をする。
「もしローラ様にソフィアさんがお会いしたら、終わりですね」
「何が終わりなのだ?」
マーク宰相が言う。
「ソフィアさんがなぜ、私をあんなに受け入れたと思いますか。それはローラ様の弟子だからです。昨晩も私にべったりくっついてローラ様の話しを聞いてばかりでしたからね」
ミリアはマーク宰相を見て少し嫌そうな顔をして言う。
「ソフィアさんはローラ様に完全に魅了されて、従者になるとか言いかねませんよ」
マーク宰相はミリアを見て頷き言う。
「そうだな、出来れば避けたいが・・・・・・、嬉しくもある」
「だが、娘は魔道士教育も軍の教育も受けておらん一般課程の大学を出ただけだ。だからお役には立てんと思う」
「ですが、ローラ様には能力を見抜き覚醒させるお力がお有りです」
ミリアがそう言うとマーク宰相は椅子から立ち上がり言う。
「昼飯だな。ミリア、食堂へ行こう!」
「ダメですよ! こちらの決済は終わらせてください!」
マーク宰相が少ししょげた顔をする。
「・・・・・・、わかりました。そんな顔しないでください。では食後にお願い致します」
マーク宰相は嬉しそうな顔をしてミリアを見て言う。
「ありがとう。ミリア」
2人はそして執務室から食堂へと向かった。
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