皇帝権限奪還 第115話 皇帝護衛隊22
エリーはエランに報告する。
帝都出撃翌日夜遅く。ここはベルニス王国、王城接待客室エリア。
「エリー、ご苦労様・・・・・・」
エランはエリーを見て少しためらいながら言った。エリーは第一艦隊訪問からベルニス王城に帰って来てそのままエランの客室を訪れていたからだ。エリーの白い軍服がはドス黒い血痕などでかなり汚れていた。
「申し訳ありません。着替えてこようと思ったのですが、疲れているのでお風呂に入ったら動く気がしなくなると思ったのです」
エリーは疲れた表情でエランを見て言った。
「何があったのですか?」
「ええ、アクセリアルの技術痕跡を確認したので報告しておきます。第一艦隊の艦船火災は発火装置を使った意図的に仕組まれたものでした」
「それは厄介ですね」
エランはエリーの顔を見て少し嫌な顔をした。
「ベルニス王国にはアクセリアルが関わっていると思った方が良いと思います。ただどの程度関係があるかは不明ですけどね」
エリーはそう言って、ふーーっと息を吐いてダラケタ顔をする。
「今日も魔力をだいぶ使って疲れました。もう眠いのでお風呂に入ります」
「エリー、負担を掛けてゴメンね。もう少し楽をさせられると良いにだけど、今は無理なのよね。私だって手一杯だしね。ゴメン・・・・・・」
エリーは疲れた表情をして言う。
「お姉様だって疲れているでしょう。見ればわかります。お互い様ですよ」
エリーはエランの肩を軽く叩いて言う。
「それではお風呂に入って寝ます」
「今日は一緒に寝ないの?」
エランが寂しそうにエリーを見た。
「大丈夫です。ユーリさんが部屋の前で警戒しています。それにぐっすり寝たいので別室で寝ます」
そう言うとエリーは部屋から出て行った。
◆◇
ここはベルニス王城内、アレッサンドロ国王居室。
「港湾内での騒ぎはどうなった?」
アレッサンドロ国王が機嫌悪そうに言った。
「はい、収まったようです。申し訳ありません。伝達ミスで一部の者が動いたようです。念のため工作員は処分致しました」
サンドラが頭を下げて言った。
「気づかれてはいないだろうな」
「はい、問題は無いと思います。ただ帝国の大魔導師ローラが現場に居合わせたようです。少し気掛かりですが、証拠は残っているとは思えませんので大丈夫だと思います」
「我々の目的はアルカン大陸全土を弱体化させることにある。そのことを絶対に気づかれてはならん」
アレッサンドロ国王はサンドラを見て言った。
「はい、しかし帝国は厄介ですね。エラン陛下より大魔導師ローラが障害になりそうな気がします。対策はしますが下手に動くとこちらが潰されそうです」
サンドラはファイルをアレッサンドロ国王に渡した。
「本来は帝国が連邦国に大攻勢を掛けるはずだったが、それはもはや無理だな。連邦国の動きも和平で決まっているようだ。このままでは大陸全土が結束する恐れがある。それだけは阻止しなければならんな。本国の支援を要請する方が良いのかもしれん? サンドラはどう考える」
サンドラは少し考えてから言葉を発する。
「本国の支援要請はまだお待ち下さい。私達が無能と判断されかねません。打てる手を打ってからに致しましょう」
「そうだな・・・・・・、しかし帝国の皇帝がここにいるのに手を出せんとはなんとも歯痒い」
「辛抱下さい。今回、帝国は我々に探りを入れて来ているのは間違いありません。でなければこのような陣容で訪問して来る訳がありません」
サンドラがアレッサンドロ国王を見て微笑む。
「ガルフに指示を出します。機会を見てエラン陛下を処分でよろしいですね」
サンドラはアレッサンドロ国王の顔を見る。
「あゝ、それで良い。大魔導師ローラも厄介だがかなり強い。少々の暗殺者では返り討ちにあうだろう。それならエラン陛下をやるほうが容易だな」
それを聞きサンドラは一礼すると部屋から出て行った。
◆◇
ここはベランドル帝都ドール城内、宰相居住エリア。
マークは娘ソフィアとの会食後、一緒に帰って来ていた。
「ミリア・・・・・・、今日は一緒に寝ないのか?」
マークが寂しそうにミリアを見た。
「ええ、しょうがないですね。ソフィアさんが一緒に寝ないのかと誘われたのですから、まあ親睦を深めるためにも良いでしょう」
ミリアは少し嬉しそうにマークを見て言った。
マークは諦めた顔をしてミリアを見て言う。
「あゝ、広い寝室でひとりで眠るのは寂しいが、我慢するよ」
「お父様ゴメンね。新婚なのに、今日だけだから我慢してください」
ソフィアが嬉しそうにマークを見て言った。
「では客室のほうへ行って来ます。マークおやすみなさい」
「お父様、おやすみなさいませ」
ミリアとソフィアは嬉しそう手を繋ぎリビングから出て行った。
マークはため息を吐き閉まったドアをしばらく見つめる。
(ミリアとソフィアがあんなに仲良くなるとは予想外だった・・・・・・)
そしてマークは立ち上がり寝室へと寂しそうに移動した。
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