皇帝権限奪還 第111話 皇帝護衛隊18
アレッサンドロ国王との会談。
帝都出撃翌日午後。エリー達がアンドレアを出撃してから40時間ほど経過している。
エリーはベルニス王城内、応接広間にいた。隣にはエランが椅子に座っている。
「アレッサンドロ国王陛下、これにより帝国はベルニスにある行政府、守備軍の順次撤退を行いますのでどうぞ宜しくお願い致します」エランはアレッサンドロ国王に淡々と言った。
アレッサンドロ国王からの反応は薄い。
「エラン陛下、帝国は我がベルニスと対等な同盟条約を新たに結び、関係を改善するのですな」
エランは微笑み言う。
「ええ、対等な関係をですね。今までのように従属はしませんから、貴国には不都合が生じるものと思いますがご容赦をお願い致します」
アレッサンドロ国王は少し眉を上げてエランを見る。
(アイクルの話しでは、バカな小娘と聞いていたが! とんでもない娘だ。私と対等以上に渡り合っている。それにこの自信のある表情はなんだ。まるでお前らの事は全て知っている。大人しく話を聞け、そうでなければ酷い目に遭わせるぞ! そう言った感じの雰囲気で私を威圧している)
「はい、エラン陛下のご配慮に感謝致します」
アレッサンドロ国王は言葉を発すると椅子から立ち上がり、エランに近寄る。
「エラン陛下がこれほどご聡明とは、失礼ながら驚きました」
アレッサンドロ国王は隣りのエリーを見て微笑んで言う。
「大魔導師ローラ様。お噂はベルニスにも届いております。私ともどもベルニスをよろしくお願いいたします」
(この娘がローラか? 情報では先先代より王宮に仕えた大魔導師。先の帝国動乱で消息不明になっていたが、今回急に現れた。確か年齢は60を超えている。やはり魔力で細胞を活性化しているのか? どう見ても20才前後しか見えん! ババアなのか? しかし厄介な奴が皇帝についたものだ。アイクルをはじめ手練を片付けたのはたぶんこいつだ。本当に厄介だ・・・・・・)
エリーは不思議そうな顔をしてアレッサンドロ国王を見る。
「はい、国王陛下! 失礼致しました」
エリーは椅子から立ち上がり深く一礼した。そしてエリーはエランの耳元で囁く。
アレッサンドロ国王はそれを見て少し眉を顰める。
(何を相談している・・・・・・、何か気づいたか?)
「ええ、ローラさんよろしいですよ」
エランは微笑み言った。エリーは嬉しそうに一礼する。
「国王陛下! 私は一旦これで失礼致します」
エリーはそう言って応接室から出て行った。
アレッサンドロ国王は少し動揺したように言う。
「ローラ様はどこへ?」
「ええ、ローラには私の代理で出向いてもらう場所があるので行ってもらいました」
エランがアレッサンドロ国王を見て言った。
「そうですか。では今日のお話は終わりですね。エラン陛下にはお部屋で御休憩をお願いします。夕食会を準備しておりますのでそれまでおくつろぎください」
アレッサンドロ国王は頭を下げる。
「お心遣い感謝致します」
エランは頭を下げる。そして後方で待機していたセリカがそばによりエランと共に応接広間から出て行った。
アレッサンドロ国王はエランを見送ると言葉を発する。
「サンドラ!」
アレッサンドロ国王の近くに男性が寄ってくる。
「どう思う。お前は計画を進めるべきと思うか?」
サンドラは答える。
「はい、見送るべきかと進言致します。今回、皇帝訪問メンバーを確認しましたが・・・・・・、かなりの実力者揃いです。特に3人ほどはかなりの者です。これほどの陣容を揃えられるとは、アイクル殿は一体何をやっていたのでしょうか? エラン陛下はただのわがまま娘とか言っておりましたが、大魔導師ローラをはじめ手練をこれほど取り込んでいたとは、驚きです。エラン陛下の血統者としての力を侮っていたアイクル殿の完全なミスです」
アレッサンドロ国王はサンドラを見て言う。
「そう思うか。ではしばらくは大人しくしておくか。下手に手を出して潰されたのではたまったものではないからな。しかしエラン陛下を見るのは二度目だが、雰囲気がもはや王者そのものだった。生かしたのは失敗だったのだな。第二王女を拘束出来ていれば今頃は違っていたのだろうがな」
「はい、見送り中止と通達致します」
サンドラはアレッサンドロ国王に一礼して去って行った。
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