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北部戦線12 後方配置2

ここは、北方戦線、エリー機動大隊現地配備、6日目午前中


 エリー大隊は、帝国特殊部隊の襲撃を受けてから33時間ほど経過していた。

エリー大隊は分散して移動中である。


 エリーは、重装機兵自走運搬車両の後部乗員席に座り窓の外を見ていた。

 

 運搬車両は牽引方式で、荷台車両から前部駆動車両まで含めると25mほどある。荷台はスライド回転式で重装機兵運搬時は、機兵を横に固定して運搬する。前部の駆動車両には2列6名乗車出来る。


 現在、車両は時速20〜30kmほどで走行している。


 エリーの移動班編成は、重装機兵運搬車両10台、兵員輸送自走車両3台、武装装甲自走車両3台となっている。

 そして、部隊旗は偽装のため、特別第三機動連隊第一機動大隊の旗を掲げている。

旗には、赤地にペガサスがあしらわれている。ちなみに、エリー大隊旗は、青地に翼を広げた天使が微笑みを浮かべ弓を引き絞っている図柄だ。


 エリーは隣に座っているセーヌ大尉を見て言う。

「セーヌさん、大丈夫ですか? 気分悪く無いですか?」

 

 セーヌ大尉は、虚な目でエリーの顔を見て言う。「とりあえず・・・・・・、なんとか我慢出来ます」


「疲れているのに、この乗り心地はキツイですよね! 確か、セーヌ大尉は機兵乗りでしたよね?」

 

 前部席に座っているアンジェラが、後を振り返りわざとらしく言った。


「アンジェラ中尉、何かしら、私に喧嘩売っているの?」

 セーヌ大尉がアンジェラに機嫌悪そうに言った。


 エリーはそれを見て思った。

(この二人、相性悪いの? アンジェラさん、もうちょっと気を使ってよ!)


「アンジェラ中尉もセーヌ大尉も、もう少し穏やかにお願いしますね」

 エリーが少し困った様に言った。


 セーヌ大尉はエリーの顔を見て言う。

「エリー少佐、申し訳ありませんが! 振って来るのは、アンジェラ中尉ですよ」


 そうして、時間がしばらく経って軍管区検問所前に到着した。


 検問所下士官が車両と通行許可書を確認して、車列がゆっくり検問ゲートを通過する。


 検問所下士官が、エリーの乗車している重装機兵運搬車両に近寄って手を挙げる。

「申し訳ありません! 連絡事項があります!」


 運搬車両は停車して、セーヌ大尉が車両の窓を横にスライドさせて応答する。

「セーヌ大尉です! なんでしょう!」


「諜報部の方が合流するため、お待ちです!」検問所下士官が言った。


 そして、検問所詰所から二人の士官が出て来る。ダークブルーの軍服、右肩にはモールが付いている。

国軍諜報機関の制服だ。二人とも佐官で、男性の方は中佐、女性の方は少佐の階級章が襟に付いている。


 セーヌ大尉は、慌てて運搬車両のドアを開け地面に降りて二人に敬礼する。

「セーヌと申します! 移動責任者です! 連絡は受けておりませんが!」


 男性の方がセーヌ大尉に敬礼して言う。

「参謀総長から話は通っているはずです」


 セーヌ大尉が驚いた表情で言う。

「申し訳ありません! 私は把握しておりません!」


 やり取りを聞いていたエリーがゆっくりと車両から降りる。

「トッドさん! ユーリさん! どうしたのですか? まさか、派遣される護衛担当者はお二人ですか?」


 女性士官が素早くエリーに近寄り言う。

「エリー様、詳細は後でお伝えしますので、先ずは移動をお願い致します」


 エリーは、茶髪ポニーテールの女性士官を見つめて言う。

「ユーリさん、わかりました。突然で驚いていますが・・・・・・」


 女性士官ユーリが詰所の奥に止まっている車両を指差す。

「あちらへ、いっしょに乗ってお話しをお願い致します」

 

 そこには、1台の憲兵隊旗を掲げた、カーキ色の6人乗り士官用自走車両があり、運転席と助手席に二人がすでに乗車している。

乗車している二人は憲兵隊の軍服を着用しており、腕には憲兵の腕章が巻かれていた。


 ユーリが車両の後部座席のドアを開けて言う。「どうぞ、エリー様」

 ユーリに誘導されて、エリーが車両に乗り込む。

 

 事情を知らないとアンジェラがユーリに駆け寄って話掛ける。

「ユーリさん! 諜報少佐だったのですね! エリー少佐は何か問題を起こしたのですか?」

 

 ユーリはアンジェラの不安そうな顔を見て言う。

「いいえ、問題はありません! 後ほど説明致しますので、戻って頂けますか」

「エリー様はこちらでしばらく預かります」


 セーヌ大尉は、トッドから簡単な事情説明を受け納得して運搬車両に乗り込んだ。

 アンジェラは状況が理解出来ない様子であったが、とりあえず運搬車両に戻り乗り込んだ。

そして、車列が再び動き出した。


 エリーは少し微笑んで隣に座っているユーリに言う。

「この状況どう見ても、私がやらかして拘束された感じですよね」

通過する検問所の下士官達がこちらを見てコソコソ話している様子が見える。


「エリー様! 大丈夫です、お気になさらず」隣のトッドが言った。

エリーが不思議そうにトッドの顔を見て言う。

「何で、諜報の軍服なのですか? 諜報機関員だったのですか? 私には理解出来ませんが、説明をお願いします」


「エリー様、お父様が参謀総長にお願いした件、ご承知だと思いますが! エリー様の護衛をブラウン商会から派遣することになったのです」


「はい、ミーナ連隊長から聞いています」


「それで、参謀総長から国軍の士官護衛に民間人を置くわけにはいかんだろうとなりまして、それでこうなりました」

エリーの顔を見てトッドが言った。


「理解出来ません!」

エリーが不機嫌そうに言うと、慌てユーリが説明する。

「国軍内である程度自由に活動出来る様にと諜報機関の佐官となったのです。私が少佐でトッドさんが中佐です。縛りが無く軍管区内でも自由に移動出来ますし、佐官待遇なら文句を言う者もいないだろとの事でした」

 そう言って、ユーリが身分証をエリーに見せる。〈グラン連邦国軍 参謀本部 第一諜報部 第一諜報課 主任 少佐 ユーリ ローガン 29才〉

 

 エリーが身分証を手に取り眺めて言う。

「すごい! 本物ですね、ユーリさん諜報少佐だったですね」


 ユーリが困った顔をして言う。

「違います! ですから偽りの身分で国軍に入っただけです」

 エリーがユーリの瞳を見つめて笑みを浮かべて言う。「冗談ですよ、理解しました」


 エリーはユーリの少し不機嫌そうな表情を見て言う。

「でも、外部の人間に簡単に国軍の身分を用意出来るんですね?」

 

 トッドが窓の外に視線を移して言う。

「エリー様のお父様は、中枢院にも影響力があるとの事ですから、この様なことは簡単なことなのでしょう」


 ユーリがエリーの左手を両手で包み込み言う。「わたしが、エリー様の危険はすべて排除致しますので・・・・・・、どうぞご安心ください」


 エリーはユーリの瞳を見つめて微笑んで言う。「でも、私は機兵パイロットだからいつも一緒とはいかないよ」


 ユーリがエリーに微笑み返す。

「大丈夫です、ラムザⅣカスタム機兵を持ち込んでいますので、ご一緒出来ます」


 エリーが驚いた表情をして言う。

「新型ラムザⅣのカスタム機体? ユーリさん操縦出来たんだ」


「はい、ブラウン商会重工業部門のトップ技師による私専用のチューンナップ機体です、スペック的には通常機体の二倍くらいです」

 ユーリが誇らしげな顔をして言った。


「さすが」ブラウン商会だね!」

 エリーが呆れた顔でユーリを見て言った。そしてエリーは視線を前部席の憲兵に移して言う。

「前の憲兵さんも偽物ですか?」


 ユーリが答える。

「はい、うちのもの達です。憲兵車両なら自由に動けるし、憲兵隊に文句を言う者もいないだろとのことです」


 前部助手席の憲兵が振り返り、敬礼する。「憲兵中尉のカイです!運転手が憲兵軍曹のサラです」運転手がバックミラー越しにエリーに会釈する。


 エリーが運転手を見て女性だったと気付いて少し微笑んで言う。

「よろしくお願いします」

 


 

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

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