皇帝権限奪還 第107話 皇帝護衛隊14
エリーはミナの彼氏と会う。
帝都出撃翌日早朝。エリー達がアンドレアを出撃してから29時間ほど経過している。ここは帝都ドール城内。
エリーは城壁外周を修練着でランニングしていた。
「おはようございます! ローラ様!」
エリーが声のほうを向くと、見覚えのある近衛士官が立っていた。
(あゝ、昨日の食堂にいた士官達の中にいた見覚えがある)
エリーは立ち止まり微笑む。
「お疲れ様です! 昨日はどうも」
「早朝からトレーニングですか? やはり大魔導師様となると日頃の鍛錬が違うのですね」
「ええ、イメージと体のズレは命取りですからね」エリーは頭を下げて走り出そうとすると近衛士官が言う。
「パンの美味しいお店があるのですが。よければどうですか? あと少しで勤務が終わるのでご一緒にどうですか」
エリーは少し驚いたような顔をして言う。
「それはお誘いですか? 私を誘う・・・・・・、失礼と思いますが、あなた少し変わっていますね。普通は誘いませんよ」
近衛士官が少し微笑み言う。
「ローラ様とお近づきになってお話をしたいと思ったのですが。それは失礼な事と承知しております。ですが興味が湧いたので自分に正直に申し上げたのです」
エリーは少し考えてから言った。
「ええ、良いですよ。そのパンがおいしいのなら食べて見たいですね」
近衛士官が嬉しそうな顔をして言う。
「本当ですか。ローラ様、味は保証致します」
エリーは改めて近衛士官を見る。階級章は中尉、身長はエリーより20cmくらい高い長身だ。髪は金髪で目鼻立ちは整っている。瞳はブルーでイケメンの部類だった。
(この人、手慣れている。口が回るタイプだな、たぶんモテるタイプなんだろうけど。残念! お父様には及ばないけどね)
エリーは微笑み言う。
「彼女はいらっしゃると思いますがよろしいのですか?」
「ええ、そういう感じでは無いのでよいと思います。それにいまアンドレアで消息不明になっているのです。あゝ、すみません。名を名乗っておりませんでした。近衛兵団、皇城警備隊、中尉、ハンス=エドマンです」
エリーはハンス中尉を見て言う。
「その行方不明の彼女の名前は、なんとおしゃるのですか?」
ハンス中尉はエリーの顔を見て言う。
「はい、ミナ=イーストと申します」
エリーは少し考えて言う。
「近衛兵団飛行艦隊、近衛中尉、ミナさん・・・・・・、詳細は申し上げられませんが。連邦国内で捕虜になっています。生きていますよ」
ハンス中尉が戸惑った顔をしてエリーを見る。
「それはどういった? ミナが生きているのですね」
「ええ、間違いなく。連邦国との和平が成れば帰国出来ると思いますよ」
エリーは微笑み言った。
「今日はやはりやめておきます。そのソワソワした感じではダメですね。ハンス中尉また今度誘って下さい」
エリーは微笑み頭を下げる。
ハンス中尉は少し戸惑った顔をして言う。
「はい、そうですね。今日はやめておきましょう。また後日お誘い致します」
ハンス中尉は頭を深く下げた。それを見てエリーは駆け出した。
◆◇
ここは帝国領上空、帝国軍飛行船キャビン内。日が上り空が明るくなって行く。
マーク中将はキャビン内座席に座り、隣のミリアに話し掛ける。
「あと二時間ほどで帝都か、ミリアはどうだ・・・・・・」
ミリアを見ると虚な顔でマーク中将を見て言う。
「昨日は激しくて少し疲れました。マークはタフですね。流石に基礎体力の差を感じます」
マーク中将はキャビンの窓を見て少し寂しい顔ををして言う。
「今日、新体制が発足し運営方針が決まります。私は宰相を拝命する。これから帝国はどこに向かうにですかね」
ミリアがマーク中将の肩にもたれ掛かり言う。
「ここに集まるメンバーは、選ばれし者達です。良いほうに向かうはずですよ」
「楽しみです。エリー様と直接会うのは14年ぶりですかね。エネル=ダルクとの約束が果たせます」
マークが少し嬉しいそうに言った。
「エネルとはどなたですか?」
ミリアがマーク中将の腕を肩に巻き付けて言う。マーク中将はミリアの顔を見て微笑む。
「あゝ、私の尊敬する師匠のご子息だ。そしてエリー様の今の父親でもある」
ミリアは少し考えて言う。
「ジョン代表ですか? 今回の全面的な皇帝支援・・・・・・、あゝ、納得がいきました」
マーク中将が少し遠慮したように言う。
「今日の夜、娘との時間を作る。よろしく頼むな」
ミリアは少し虚な表情から嬉しいそうな顔をして言う。
「まあ、気に入られる努力はします・・・・・・」
「娘はミリアと同い年だ。たぶん思うところは有るだろうがな」
そう言ってマークはミリアの肩に手をそえた。
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