皇帝権限奪還 第106話 皇帝護衛隊13
帝都出撃当日夜遅く。エリー達がアンドレアを出撃してから22時間ほど経過している。ここは帝都ドール城内。
エリーはエランのベットで隣りで寝ていた。エリーは横向きで寝ていたが視線を感じる。寝返りをするとすぐ近くにエランの顔があった。
「え・・・・・・! まだ眠ってないの?」
「はい、眺めていたくて・・・・・・」
エランが囁いた。エリーはエランの朱色の瞳を見つめて言う。
「明日も大変ですよ。寝れる時に寝てないと疲れが取れませよ」
「エリー・・・・・・、ユーリさんをベルニスに連れて行くつもり?」
「ええ、そのつもりです。何かあるとしても今後のために・・・・・・、ユーリさんとは一緒にいたいですからね」
エリーは少し嫌な顔をした。
「それがユーリさんに残酷な結果になってもですか?」
エランがエリーの顔を見つめる。エリーは寝返りをして反対側を向いた。
「ええ、そうですね。そうならない事を願いますが、でもユーリさんに真実を知る機会は必要だと思います」
「エリーは残酷だね。もし情報が本当なら最悪の結果を招く事だってあるんだよ」
「ユーリさんは私にとってもうひとりのお姉様みたいなものですからね・・・・・・、だからこそ、今回は外せません! もし連れて行かなかったら遺恨を残して、ユーリさんは私のもとを去るでしょう。そういう人です」
「・・・・・・そう、エリーがそう決めたのなら従うわ。まあ、私に出来る事はあまりなさそうだけど、やれる事は手伝って上げます」
エリーは頷き言う。
「エランお姉様、心配してくれてありがとう」
そう言ってエリーは目を閉じた。
◆◇
ここは帝国領バーグア市、帝国軍第三軍司令本部、司令官室。
マーク中将は疲れた顔をして執務机の書類の片付けをしていた。
「なんとか終わった・・・・・・、もうあと5時間もしたら出発だな」
ミリアが棚のファイルを整理している。
「ええ、終わりましたね。司令部からも手伝いに来てくれたので助かりましたね」
マーク中将がミリアを見て言う。
「あゝ、そうだな。昼からずっとだからな」
「夕食もとらずにぶっとしですものお疲れ様でした。私もお腹空きました。マーク帰ったら何か作って下さいね」
マーク中将が少し嫌な顔をして言う。
「ミリア悪いがそんな気力が無い。たまにはミリアが作ってくれても良いのだが?」
ミリアはマーク中将を見つめて少し驚いた顔をして言う。
「ええ、私はダメです。料理はセンスが無いので、やはりマークにお願いしますよ」
マーク中将はため息を吐いて言う。
「あゝ、わかった簡単なものを作ろう。それでは帰るか」
ミリアはマーク中将のそばにより囁く。
「大陸で不穏な空気があるようです。明日、閣僚会議終了後、陛下とエリー様がベルニスに向かわれるとの連絡を受けております」
「私はどのようにすればよい?」
マーク中将はミリアを見つめる。
「閣下は留守番をしっかり頼むとのことです」
ミリアが微笑み言うとマーク中将はミリアの手を取り言う。
「就任早々、大変そうな感じだな」
「じゃあ、今日は早く帰って寝ないとな」
マーク中将がミリアの手を引っ張りドアの前まで行くと執務室の照明を消した。そして廊下を2人で歩いていると当直士官が廊下に10人ほど並んで一斉に敬礼する。
「閣下! ご苦労様でした! 今後のご活躍お祈り申し上げます!」代表の士官が声を上げて頭を下げた。
「あゝ、大任だが勤めを果たしてみせる。君らの事は忘れん。世話になった」
そう言ってマーク中将は敬礼すると、当直士官達は頭を下げる。マーク中将とミリアはその横をゆっくりと歩いて通り過ぎた。
「マークは慕われていますね」
ミリアが歩きながら呟くとマークはミリアの手を握り締め言う。
「あゝ、奴らも期待している。頑張らねばならんな」
そして司令部建物から出ると警護下士官2人が直ぐに2人のそばに来て敬礼する。
「閣下! 警護任務も最後です! ありがとうございました!」
そう言って前と後ろに付き宿舎まで無言で付き添った。
マークが宿舎の入口に来ると警護下士官に声を掛けた。
「ありがとう世話になった」
「はっ! ご健闘をお祈り致します!」
警護下士官が揃って敬礼した。
そうしてマーク中将とミリアは宿舎のゲートを開けて宿舎内へと入って行く。
マーク中将は嫌な顔をして言う。
「ミリア! やはりいまから料理は勘弁してくれないか」
ミリアが微笑み言う。
「ダメですよ。お腹減ってとても寝れませんから、少しでもよいから作って下さい」
「あゝ、わかった。ミリアは宰相とて関係ないのだな」
マーク中将がガッカリした顔でミリアを見る。
「ええ、そうですね。マークはマークですよ。私を下に見ているのですか? 私はエリー様の従者ですよ。立場は同じはずでは有りませんか?」
マーク中将は困った顔をして言う。
「下とか上とかなんだ。ミリアのことを見下したことなどないぞ。可愛いと思った事はあるがな」
ミリアが少し嬉しいそうな顔をして言う。
「マークが宰相に任命された事は嬉しいです。でも、心配でもあるのですよ。今まで以上に危険が増しますからね。万が一の時は私が盾になって守る覚悟はしています」
マーク中将がハッとして言う。
「ミリアが盾などとそんな事はさせない。心配するな!」
宿舎内ドアの鍵を開け2人はリビングに入ると目を見合わせて微笑み抱き合った。
「ミリアに会えてよかった・・・・・・」
マークが呟くとミリアも少し嬉しいそうに呟く。
「ええ、私もです」
そしてミリアがマークを両手で押して体を離すと言う。
「早く食事をお願いしますよ。私、お腹が空いてたまらないのです」
マークは少し寂しい顔をしてミリアを見る。
「ミリア・・・・・・、いま作るよ。少し待ってくれ」
マークはキッチンへと入り食事の準備を始めるのだった。
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