皇帝権限奪還 第102話 皇帝護衛隊9
エリーはエド中将と対決する。
帝都出撃当日朝。ここは帝都西区、第五師団本部前。エリー達は反乱軍鎮圧に出動していた。
エリーはレンベルTYPEⅡの脚を折りたたみ跪かせる。レンベルのコックピット内では警報が鳴り響き、ゆっくりとコックピットシールドが上に開放していく。
エリーは固定ベルトを外しヘルメットを脱いで、素早く髪を整えると黒縁メガネを掛けた。そして収納ボックスから軍刀をとりだしてコックピットから身を乗り出す。
見上げていたエド中将がエリーを見て少し微笑み声を上げる。
「驚きました! 思っていた以上にお若い! 失礼! 私は第一軍管区司令官、エドです」
エリーは直ぐに機体のフレームに沿って滑り降りる。そしてエド中将に一礼した。
「申し遅れました! エラン皇帝護衛隊、中尉、ローラベーカーです」
エリーは神眼スキルを発動周囲を感知する。(奥の3階建の屋上に狙撃手2名、手前の門塀裏に1個小隊ですね)
エリーはエド中将に微笑み言う。
「狙撃兵は下げてもらえますか? それと裏手の待機している将兵も、殺気が感じられます」
エド中将は呆れれた顔をしてエリーを見て言う。
「ローラ中尉! わかるのかさすがだ。やはり簡単ではないようだな」
エド中将が振り返り右手を上げ声を上げた。
「待機している者は下がれ! 一切の手出し無用! 手出しした者は厳罰に処す」
エリーは軍刀のフックを腰につけて鞘からゆっくりと軍刀を抜いていく。それを見てエド中将がハッとしてエリーを凝視した。
「アイクルをやったのはその剣ですね?」
エド中将は魔導剣を鞘から抜くと直ぐに上段正面に構えてエリーを見据える。
「いいえ、違います」
エリー微笑み答えた。
エド中将は魔導剣の剣先からエリーを見て言う。
「嘘はいけませんよ。わかるんですよ。私には、あなたはかなりの実力者です。見た目には騙されませよ」
エリーは身体強化スキルを発動して魔力を二段階ほど上げた。そして体が薄紫色の光に包まれ輝き出す。エド中将を神眼で視感して確認する。
(なかなか出来る・・・・・・、でも驚くほどでは無い。まあ、実力者ではある。何か隠しているかもしれないから用心はしとくけどね)
エリーは軍刀に魔力を通して左斜め下段に構えた。
エド中将は魔導剣を構え魔力を通しエリーと対峙して動く気配が無い。
(飛び込むのを待っているの・・・・・・)
エリーは上体を沈めてエド中将を視感する。
「では! 行かせて頂きます!」
エリーは声を上げると一気に右足を蹴り出しエド中将の正面に飛び込んだ。そして腹部へ斬撃を放つ。エド中将は魔導剣をエリーの斬撃軌道へ沿わすように入れると魔力量を上げ外へ逸らした。
エリーは外へ軍刀を引いて直ぐさまエド中将の脇腹目掛けて突きを放つ。
エド中将は足を引き上体を横に逸らして下方に魔導剣を振り下ろしてエリーの軍刀を横にいなした。
エリーは一旦後方へ退がり間合いをとる。
「ローラ中尉! その程度ではないでしょう! あなたは私をどう見ているか知りませんが、その程度で仕留められると思っているのですか」
エド中将が魔導剣を中段正面に構えて声を上げた。
エリーはエド中将の顔を見て嫌な顔をする。
(ここで派手に目立つのもな・・・・・・、エランお姉様を立てないといけないんだけど、でもエド中将はこれでは仕留められないですね)
エリーはふーーっと息を吐くと全身の魔力量を上げる。そしてエリーを包み込む光の色が青紫色に変わった。エド中将はそれを見て嬉しそうな顔をして言う。
「やっと本気のようですね」
エド中将は魔力量を上げて全身から白色の光を放つとエリーへと猛烈な速度で飛翔した。そして上段からの斬撃を放つ。
エリーはすぐさま上体を後に逸らし斜め方向に体をずらして右方向に斬撃を放ち、エド魔導剣と軍刀がぶつかりエド中将がたまらず退いた。
「凄まじい力ですね! やはりあなたですね。我が友、アイクルを葬ったのは」
「いいえ、違います」
エリーはそう言うと更に魔力量を上げた。エリーの全身が濃い紫色に光輝き迸り始める。
エド中将はエリーを見て諦めたような表情になり声を上げる。
「これで最後ですね! それでは参ります!」
エド中将は魔導剣に全ての魔力を注ぎ込みエリーの間合いに飛び込むとエリーの脇腹目掛けて渾身の斬撃を放った。
エリーは神眼でその様子をスローモーションのように見て軍刀をエド中将の斬撃の軌道上へと入れた。そして軍刀の刃先が触れた瞬間エド中将の魔導剣が砕け散る。
エド中将の顔が引き攣る表情してエリーを見ている。エリーは直ぐに軍刀をエド中将の腹部へと突き入れた。軍刀は刃先が貫通して背中から出ている。
〈ぐーーっ!〉エド中将がよろめきエリーにもたれ掛かる。
エリーはエド中将を片手で支えてゆっくりと地面に膝をつく。
「魔力で傷口は抑えています。あなたを殺したりしません」
エド中将は顔を強張らせてエリーの肩にもたれ掛かった。
様子を見ていた第五師団の将兵達が騒ぎ出す。それを見て後ろで待機していたユーリスペシャルから上空に向けてライフル弾が発射される。〈バン、バン〉
エリーが叫び声を上げる。
「あなたがたは、エド閣下の約束を反故にするおつもりですか!」
将兵達は押し黙り静かになった。
エリーはエド中将の腹部に左手を当てて軍刀をゆっくり抜いていく。エリーは白色の光に包まれながらその光はエド中将も包み込む。軍刀を抜き取ると治癒スキルを発動してエド中将の患部に魔力を通して治癒していった。
そしてエリーは治癒は完了するとエド中将をゆっくり地面に寝かせた。
エリーはバリケード側に向かって声を上げる。
「エド閣下の約束に従い、バリケードの撤去、全員投降して指示に従って下さい!」
エリーの前に第五師団中佐がやって来て敬礼して言う。
「ローラ中尉! 貴官の指示に従い武装解除、全員投降する。管理部隊が到着するまで私が責任を持って遂行する」
「エド閣下は残念だったがしょうがない・・・・・・」
中佐は悲しい顔をしてエリーを見た。
エリーは中佐の顔を見て微笑み言った。
「エド閣下は大丈夫ですよ。今は寝ているだけですよ」
エリーはエド中将の手を持ち上げ中佐に持たせる。中佐は驚いた顔をしてエリーを見て言う。
「剣が閣下を貫いたはずでは・・・・・・」
そして跪きエド中将を見てから、再び立ち上がりエリーに頭を下げる。
「皇帝陛下には大魔導師様がお付きになられていらしゃるのですね」
そして中佐は跪き頭を深く下げる。
「ローラ様、我々に慈悲を掛けて頂きありがとうございます」
そして中佐は立ち上がり後ろの将兵達に声を上げる。
「エド閣下は生きておられる! この慈悲深く偉大なる大魔導師! ローラ様に感謝せよ」
エリーは中佐を見て嫌そうな顔をする。
「私は、皇帝護衛隊のローラです。大魔導師などではありません」
バリケードの前でエリーに声を上げた士官が走り寄って来て跪き頭を深く下げる。
「さきほどの無礼な振る舞い・・・・・・、どうぞお許しください!」
そう言って頭を地面に擦り付けた。
エリーはそれを見て機嫌悪そうに言う。
「大人しく従ってもらえればそれで結構です。皇帝陛下のお飾り部隊などともう二度と言わないでくださいね。私達は皇帝護衛隊! 精鋭中の精鋭ですから」
「はっ! 十分に理解しました」
士官は強張った顔をしてエリーを見上げた。
これにより噂はあっという間に広がり帝都の反皇帝派の動きはほぼ鎮静化していく。そしてエリーは皇帝の付きの大魔導師ローラ様と呼ばれ名前が広がることになった。
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