皇帝権限奪還 第100話 皇帝護衛隊7
エリーはドール城内戦闘終了後、束の間の休憩をとっている。
帝都出撃当日明け方。ここはドール城内。
エリーは皇帝居住エリアの皇帝居室内のベットに寝そべってぼーーっとしていた。エリーは予定より魔力消費量が多かった。
(流石に、アイクル摂政が初手から全力だったら私は立ち上がれなかった。油断していた訳では無いけど危険予知も発動しなかった。お姉様の波動再現スキルで他のスキルが影響を受けていたのでしょうか?)
アイクル摂政との戦闘後、死亡を確認してアイクル摂政の顔が悲壮な表情だったので魔力で顔を穏やかな表情にしてあげた。
エリーは思っていた。
(アイクル摂政も極悪人ではない。方法は間違っていたかも知れないが帝国のために尽くしていた。そしてアイクル摂政の背後に何かしらの力を感じたのは気のせいか?)
皇城内戦闘終了から二時間ほど経過して今は5時少し前くらい、居室ドアがいきなり開いて、誰かがもの凄い勢いで駆け寄って来てベットの上のエリーにダイブした。
〈ぐーーっ!〉エリーから声が漏れる。
エリーの上でエランが満面の笑みで言葉を発した。
「エリー! よくやった! ありがとう!」
エリーは機嫌の悪い顔をして上に乗っているエランの顔を見る。
「エランお姉様・・・・・・、ひどいですよ。一応負傷したのですよ」
「えーーっ! どこを?」
エランが慌ててエリーから体を離して確認する。
「一応、治癒スキルで完治はしていますが、ひどくやられました」
エリーが少し疲れたような顔をしてエランを見る。エランはベットから降りてエリーに頭を下げる。
「ありがとう。エリー・・・・・・」
エランはエリーの手を優しく握って言う。
「第一段階は成功しました。これから第二段階に着手します。エリーもよろしくお願いしますよ」
エリーは上体を起こして背筋を伸ばしあくびをする。
「ユーリさんが準備を進めています。問題ありません」
ドアがノックされて部屋にセリカとビアが入って来た。2人は深く頭を下げて一礼する。
「おくつろぎのところ申し訳ありません」
セリカがエリーを見て微笑み言う。
「エリー様、この服にお召替えをお願い致します」
そう言うと護衛隊の軍服をエリーに差し出す。
エリーはそれを受け取り言う。
「城内で動きやすくするためですね」
「はい、さすがにエラン様と同じ容姿のエリー様がいたのでは混乱を生じますので。身分証も準備しております」
セリカが身分証をエリーに差し出した。
〈ベランドル帝国皇帝護衛隊 第五分隊長 中尉 ローラ ベーカー 21才〉
エリーが少し嫌な顔をして身分証を見る。
「この名前覚えがありますが・・・・・・セリカさん、まあ良いですけど」
そしてビアから黒縁のメガネを渡される。エリーは受け取り言う。
「これを掛けろと? 偽装ですね」
エリーは直ぐ下着になり護衛隊の軍服を着用する。
「これ派手ですね。白だし汚れが直ぐに目立ちます」
エリーは肩のモールを整えてボタンを留めた。そしてメガネを掛けて髪留めをつけて髪をまとめる。そして姿勢を正してセリカに敬礼した。
「ローラ ベーカー中尉! 只今、着任致しました!」
セリカが困った顔をして頭を下げて言う。
「ここでは普通で結構です。エリー様!からかわないで下さい。お願いします」
エランが慌てて言う。
「そろそろ、準備しないと。セリカさんお願いします」
セリカは直ぐにエランを見て頭を下げて部屋から出て行った。
「なんですか?」
エリーがエランに近寄り言う。
「ラジオの放送をするのですよ」
エランが少し嫌な顔をしてソファーに座った。エリーも隣りに座った。
「お姉様の声が帝国中に轟のですね」
「ええ、まあそうですけどね。緊張しますよ」
エリーはエランの手を優しく包み込み朱色の瞳をの見る。
「帝国民にエランお姉様の意志をきちんと伝えてくださいね」
そう言うとエリーはソファーから立ち上がり声を上げる。
「お腹が減ってます! 食事をお願いしますよ」
エランは顔を緩めて笑い声を上げる。
「エリー! わかったわ。何か準備させます」
エランは立ち上がりビアに言う。
「ビアさん、侍女を呼んで頂けますか」
ビアは頭を下げて直ぐに部屋を出て行った。
「エリー、少し待ってね」
エリーは嬉しそうにエランを見て言う。
「ええ、待ちますよ。これから一緒に食事をしたら、朝から残党狩りに出撃します。お姉様は放送頑張って下さい」
◆◇
ここは帝国領バーグア市、帝国軍第三軍司令本部、司令官室。
マーク中将は微笑みミリアを見る。
「第一段階は成功との事ですね。乾杯でもするか? まあ酒はダメだな。紅茶だな」
ミリアはテーブルの反対側のソファーにゆったり座り足を組んで眠そうに言う。
「ええ、次は組織再編が行われます。マークも政局運営組織の重要ポストが決まっているようですが。エリー様からはどんな役職かは連絡はありません。発表待ちですね」そう言いてミリアは立ち上がり紅茶の準備を始めた。
司令官室のドアが激しくノックされて、すぐにブラス参謀長が慌てて入って来た。
「大変です! 帝都でアイクル摂政が!」
マーク中将はブラス参謀長を見て微笑み言う。
「あゝ、もう把握している。午前中には新体制の発表が皇帝陛下からあるそうだ」
ブラス参謀長は不怪訝な顔をしてマーク中将を見る。
「マーク閣下はこの時間に司令官室にいらっしゃるということは、事前に把握されていたのですか?」
マーク中将はブラス参謀長から視線を逸らしてミリアを見て言う。
「ミリア! ブラス参謀長の分も頼む」
「はい、わかりました」
ミリアは微笑み答えた。
マーク中将は少し機嫌の悪い顔をしてブラス参謀長を見る。
「いいや、眠れなくて司令官室でミリアと2人話していただけだ。それより、国家非常事態宣言が二時間ほどしたら発令される。その前に我ら第三軍は皇帝陛下に叛意は無いと直ぐ表明する。ブラス参謀長、段取りして直ちに対応してくれ」
ブラス参謀長は敬礼して司令官室から出て行った。
「ミリア、紅茶いらなくなった」
ミリアがマークに姿勢を正して敬礼する。
「マーク閣下! これより忙しくなりますね。エリー様のために頑張って下さい!」そして頭を下げた。
マークはミリアのそばにより肩を抱き寄せ言う。
「これから忙しくなる。エリー様そして帝国皇帝エラン様のために力を尽くそう」
ミリアはマークを見上げて頷いた。
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