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皇帝権限奪還 97 皇帝護衛隊4

エランは元老院で演説する

 

 帝都出撃当日未明。

 

 ここは元老院議事堂。エラン達は議事堂第一控室にいた。


「エリーはうまくやっているでしょうか?」

 エランが少し不安そうな顔をする。

 

 トッドはソファーに座る紫色のドレスに着替えたエランを見て微笑む。

「エリー様なら心配する必要は御座いません。それよりエラン様は自分の事に集中して下さい」

 エランは若干顔を緩ませる。

「そうですね。理解しています」

 

 エランの隣にはセリカが白色の新調した皇帝護衛隊の軍服を着用し立っている。

「セリカさん、凛々しく決まっていますよ」

 エランがセリカの軍服を眺めて嬉しそうに言った。

 セリカは直ぐに頭を下げる。

「エラン陛下、ありがとう御座います。この軍服は儀礼用ですか? 刺繍が入っていて少し派手な気がしますが」


 エランはソファーから立ち上がりセリカの手を握って言う。

「いいえ、護衛隊の通常軍服です。昔の王国時代使用していた近衛士官の軍服の改修仕様です。本来は宮廷内用だったようですが、セリカさんは私の側近としてアピールしなければなりませんからね。これにしました」

 

 セリカが少し不思議そうな顔をしてエランに質問する。

「陛下、側近としてアピールとはどういった事なのでしょうか?」

 エランはセリカの瞳を見つめて答えた。

「エリーにユーリさんがいるように、私にはセリカさん、あなたが担うのですよ。身辺警護はもちろん、直属諜報情報統括官としての任も受け持ってもらいます」


 セリカは少し戸惑った顔をしてエランを見つめる。

「私などにそのような大任が務まるとは思いません。どうか再考をお願い致します」そしてセリカは頭を下げる。


 エランはセリカの頬に手を触れて優しく言った。

「これは決定事項です。もはや変更は出来ません。セリカさんは勅令を拒否するのですか? 国家大罪ですよ」


 セリカは困った顔をしてエランを見る。

「分不相応と思うのですが。勅令とあらばお受け致します」

 そう言ってセリカは深く頭を下げた。


 エランは嬉しそうにセリカを見る。

「護衛隊隊長階級は大佐ですが、帝国軍では少将待遇としておきます。それくらいにしておかないと実務に支障が出ますからね」


 セリカは目を細めて少し嫌な顔をする。

「将官待遇ですか、それは妬まれますね」


 トッドと他の商会傭兵部隊員は黒のスーツを着用して準備している。

「そろそろ議会場へ向かいましょう」

 トッドがエランに微笑み言った。


 エランは頷き部屋の中のメンバーを見渡して言葉を発する。

「皆様、どうぞわたくしエランを支えて下さい。宜しくお願いします」そして深く頭を下げる。

 

セリカが慌てて声を上げる。

「陛下! 皇帝がそのように頭を下げるべきではありません!」

 エランはセリカを見て少し口を緩ませ答える。

「そのような事どうでも良いではありますんか。お世話になるのに礼を遺する訳にはいきませんからね。新生ベランドル帝国のために・・・・・・」


 控室のドアがノックされる。トッドがドアを開けると50代くらいの品の良い金髪の男性が入って来た。男性は頭をエランに深々と下げ一礼する。

「エラン陛下、議場の準備は整っております。どうぞご入場ください」

 元老院議会議長、ライドベルガーである。

 エランは頷きライドに微笑み答える。

「はい、先導をお願いしますね。ライド議長」

 トッドがエランの耳元により囁く。

「警備は議場内適所に配置しています。ご安心を」

 エランはトッドを見て頷き部屋の出入り口に歩き出した。


 エラン達は長い廊下を歩き議場の議長席背面ドアから議場へと入った。エラン達が議場へ入ると議員席から視線が集まる。議長席は議員席に向かい合わせて設置され3mほど高い位置にある。エランは入場すると議長席後方にある一段高い皇帝席へ横にはセリカが控える。


 ライド議長が議員達に声を発した。

「エラン皇帝陛下がご入場されました! 皆様もいろいろな噂を耳にされているものと思いますが! 陛下はここにおられます。我が帝国の希望! エラン陛下が無事帰還されたのです」

 議員達が立ち上がり一斉に拍手が起こる。そして直ぐに帝国制令に基づいて緊急動議が議員より発議された。それは摂政による政局運営の停止、新政局運営組織の発足、連邦国との和平交渉の3件だった。


 議場内のいる議員数は90人ほど、定員は120人だから議会可決は成立する人数が出席している事になる。

 中段ほどにいる議員が声を上げる。

「今回の件! 速やかに決議して帝国を建て直さなけばなりません! 時間が無いことをご理解の上ご協力をお願い致します!」

 エランは皇帝席から議場内を眺めている。(ここまでは打ち合わせ通り進行している。反摂政派がここまでいるとは思わなかった。まあ摂政は元老院を形式上の決議議会と軽んじていたからこうなったのか? )


 3件の決議項目は議決要項を満たし全て可決された。そしてエランは立ち上がり議長席の横に立つと、視線はエランに集まった。そしてエランは一礼して議員達を見て声を発した。

「元老院議員の皆様! 速やかなる決議、感謝致します。皆様も今の帝国を憂いていることがよく理解出来ました。今後も皆様のご協力をよろしくお願いします。そしてわたくしも摂政の独断を止められなかったことに深く反省をしております」

 そう言ってエランは深く頭を下げる。議場内では響めきが起こっている。

「今後摂政を廃して、わたくしだけではもちろん政局運営は困難です。皆様のご協力を再度お願い致します。そして可決された新しい政局運営体制を早期に確立しなけらばなりません。皆様の中からも部門責任者もしくは大臣任命者がおられます。これからの帝国のためどうか力を合わせて尽力致しましょう!」

 エランは言い終わると深く頭を下げる。議員達は立ち上がり拍手を始める。そしてエランは頭を上げて議員達に微笑み手を上げて答えた。

 横のライド議長が声を上げる。

「これをもって本議会の閉会を宣言する!」 

 ライド議長がエランを見て言う。

「エラン陛下、さっそくですが組閣人事の発表をお願いします。あゝ、そうですね皇城の制圧は先ですね」

 エランはセリカを直ぐに見て問う。

「エリーのほうはどうですか?」


 セリカは首を横に振って言う。

「いいえ、まだのようです」


 エランはライド議長を見つめる。

「早朝にラジオ放送でしたね。段取りをお願いします」

 

 ライド議長はエランに頭を上げる。

「はい、準備は整っております」

 

「はい、ありがとうございます。皇城の結果を待ちましょう」

 そう言ってエランは議場を出て行った。


 


最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!


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