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エリアJ  作者: 柳澤
25/32

魔獣

「おいしかった?」

「最高でした……けぷっ」

「………………」


 ニ十分もかからず、ニコは特盛のオムライスを十皿も完食していた。

 グリムは嬉しそうに微笑んでいるが、バンダはその食いっぷりに慄いている。


「それはドラゴンの食欲ってことか……?」

「それもあるみたいですけど、大半は元々です」

「すげえな」


 そう言いながらバンダが立ち上がった。

 上着を羽織り、出入り口へと体を向ける。


「帰るんですか?」


 ニコも立ち上がろうとしたが、それを手で制止する。


「あの時は緊急時だったから泊めたが、本来なら俺の家には泊めねえよ。グリムんとこに世話になれ」

「えー!? でもグリムさんに迷惑が……」

「いいよ」

「俺になら迷惑かけていいってか?」

「そういうわけじゃないですけど……」

「とにかく、グリムの世話になるか自分で部屋借りるかするんだな。お前が道行を決めるまではここに顔出してやる。俺も冬が来るまでにはある程度貯めときたいし、そうだな……一週間だ」


 連絡先とかはグリムに聞け。

 そう言うとすぐにバンダはバーを出て行った。


「部屋一杯持ってるから、貸せるよ」

「……じゃあお言葉に甘えていいですか? お金はちゃんと払います」

「お金より……こっち」


 グリムがカウンターの裏から取り出したのは、可愛らしいウエイトレスの制服だった。

 少しニコの笑顔が引きつった。


「きっと似合う」


 白と黒のシックな制服は、確かに白髪のニコとは一体感があってよく似合うだろう。


「で、でも私何も分からないですよ?」

「大丈夫、教えるから」

「そう言われましても……」

「まかない食べ放題」

「やります」


 その返答にグリムは今日一番の笑顔を見せた。


「じゃあ明日からよろしく」

「はい!」

「これからの時期はお客さんが増えるから、助かる」

「そういえばバンダさんも言ってたけど……冬に何かあるんですか?」


 ニコの質問にグリムは少しだけ憂鬱な顔を見せた。


「……エリアJの生物は基本、野生生物と呼ばれる」

「はい」

「それは、普通の動物の姿から大きく逸脱はしていないから」

「いぬとかですよね?」

「そう。でも、エリアJには既存の生物の形から逸脱したバケモノが出現することがある。それらは魔獣と呼ばれる」

「魔獣……」

「冬は野生生物達の大半が冬眠するから、魔獣や冬眠に十分な食料を確保できなかった気の立った野生生物が闊歩する。もしくは、冬の寒さなんか足かせにならない程強い生き物たち」

「つまり、他の季節よりも危険ってことですね?」

「そのとおり」


 そのままグリムは説明を続けた。

 エリアJには想定危険度というものが存在する。その名前通り、エリアごとの想定される危険度を示すものだ。

 危険度6であれば、その周辺で出会う野生生物の最大存在強度が6であるということ。

 あくまで目安や想定でしかないが、強度3や4の人間が危険度6のエリアに行くのは推奨されない。自身の強度プラス1が適正だと言われている。

 当然、安全を取るのであればより低い危険度のエリアに行くべきだ。


「冬は危険度が上がるってことですよね?」

「トウキョウエリアは平均危険度が4。冬は7に跳ね上がる」

「な、7ですか!?」

「魔獣は個体数がかなり少ない代わりに強いから」

 

 金属生命体や群体生物、動き回る植物に骨だけの生物。

 魔獣はその個体数の少なさから生態や発生条件などが一切解明されていない。

 高い懸賞金が掛けられているが、そもそもその強さから討伐出来る人間が少なく、討伐出来たとしても大半がその素材をそのまま自身の装備にすることが多い。

 まさに騎士の鎧がその例だ。


「バンダは強いけど、流石に魔獣と連戦にでもなったら分が悪い」

「恐ろしいですね……」

「それともう1つ……冬明けの試験に向けて」

「へ?」

「冬明けに資格試験があるから。多分、頼めば鍛えてくれる。私でもいいけど」


 その言葉にニコは少し悩む素振りを見せた。


「あの、失礼ですけどグリムさんって」

「対人ならバンダより強い」

「……それってすごく強いんじゃないですか?」

「ベクトルが違うから。バンダは野生生物相手が得意」

「そうなんですね」


 少し得意げな表情のグリムに思わず笑みをこぼしてしまう。

 言っていることが本当かは分からないが、自信満々な様子を見るに誇張は無さそうだ。

 ニコはグリムの事をご飯を食べさせてくれる良く分からない人だと思っていたが、この時既に信頼できそうな人だと感じていた。


「一応、ピースさんも望むならASSFで鍛えてやるって言ってましたけど」

「それいいかも」

「そうなんですか?」

「いきなり達人になれる人なんていない。ASSFで基礎をしっかり学ぶのは悪くない」

「うーん、バンダさんかグリムさんかASSFの方たちか……」

「贅沢な悩み」


 ピースがそこまで言うとは、よほど気に入られたのだろう。

 いや、気に入っているのは自分もか。

 そう思いながら、グリムはうんうんと唸って悩んでいるニコを見つめていた。

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