自宅
「うーん……」
「起きたか」
室内にコーヒーの香りがふわりと踊っている。
ソファーの上でニコが目を擦りながらゆっくりと起き上がった。
バンダはコーヒーを飲みながらPCに向かっている。
「……ここは」
「俺ん家だ。さっさと顔を洗ってこい」
「ふぁい……」
まだ意識はハッキリと覚醒していないようで、ニコはソファーから離れ、フラフラと洗面所に向かっていった。
その間もバンダは画面をスクロールし、何かを確認している。
「あー、よく寝ました。何してるんですか?」
「仕事の依頼のチェックだ」
「……そういえば、バンダさん仕事何をしてるんです?」
「言ってなかったか。荷運びだよ。ポーター。カントウエリアに点在する開拓村やフクオカエリア、ホッカイドウエリアの人類生存圏に物資を運んだりする」
「大変そうですね」
「んな事ないぞ。建材やらの大きな荷物は船で運ぶから、俺の所に来るのは細かい物資の詰め合わせや食料品なんかが多いからな。大して重くないし、比較的野生生物に出会わないルートもある程度は確立されてる。ポーターに求められてるのは『それ以外のやれる事』だな」
説明しながらPCをシャットダウンし、コーヒーカップを流し台に持って行く。
2杯目を注ごうとして、横から強い視線をひしひしと感じた。
「……飲むか?」
「はい!」
バンダが飲んでいるのはインスタントコーヒー、大して時間もかからず2杯のコーヒーを注いだ。
ニコのカップはカフェオレになっている。砂糖たっぷりだ。
「あまい! おいしい!」
「そうか、そりゃよかった」
その様子を可愛らしい猫を見るような目で見ながら、換気扇の下でタバコに火を付けた。
「飲み終わったら出かけるか」
それを聞いた瞬間、ニコの表情が緩いものから一転して真面目なものになる。
直接的に言われずとも分かっていた。
今の状況でその言葉がどういった意味を持つのかを。
「分かりました」
「修行した事、覚えてるな?」
「もちろんです。蹴られた事も、2日目の事も、しっかりと!」
「身体はどうだ」
「貰った薬が効いたみたいで……飲む前も飲んでから寝るまでも激痛でしたけど、今は問題無いです」
「よし」
タバコの火を消して、コーヒーを一息に飲み干した。
「いいか、お前の格闘術はまだまだゴミだ」
「はい」
「でもな、それを補って余りある身体と根性がある」
「はい!」
「お前にゃ銃も効かねえ」
「……そこはちょっと本当か怖いですけど」
バンダが軽くニコの額をぺちんと叩く。
「ここまで来たら信じろ馬鹿野郎」
「っ、はい!」
「よし、じゃあ出かけるか」
「行きましょう!」
「喧嘩も復讐も楽しく行こうぜ」




