精霊と人間
「エルは何がしたいだい?」
食事が終わり、暖炉でおばあさんと一緒に温まっていると唐突に聞かれた。
何がしたい。したいこと…今まで考えたことはなかったけど、この世界のことを知りたいと思った。そして世界を旅をしてみたいとこの世界にきて改めて思ったことを思い出した。
「私はこの世界のことを知るために旅がしたいです。」
おばあさんは「そうかい」というと立ち上がり、おばあさんの部屋から一冊の本を持ってきた。
「何ですか?これ。」
「それは昔ばなしみたいなものさ。」
本をめくると絵本のようなもので絵と文字が書かれていた。
しかし文字は読めず、内容が何もわからなかった。
「おばあさん、私文字が読めないのですが…」
「そうだと思ったよ、旅をするなら文字ぐらいわからないとね。今日からその本を使って文字の読み書きの練習を毎晩この時間にするよ。昼間は私の手伝いをしながら生きるすべを教えてあげるからねぇ。」
「ありがとうございます。何から何まですいません。」
「いいんだよ、子供は甘えるものさ。それじゃ、今日は本の内容を大まかに話していこうかねぇ。」
おばあさんが話してくれたことをまとめると精霊と人間の話だった。
世界には精霊と人間がいる。精霊は世界の力を操ることができ、管理する存在だった。人間は日々の生活を歩んでいた。
そんなある日、女の子が精霊と会話をし、見ることのできる能力を持って生まれてきた。
彼女はほかの人には見れないものを見れてしまっている故、人間からは嫌われてしまっていた。
一方で精霊からはとても愛された。理由は彼女の持つ力だった。見えるだけではなく、膨大な力を体内に宿していたからだった。膨大すぎる力は精霊たちに分け与え、世界をよりよくするように彼女は精霊たちと共に世界中旅をした。
その旅の途中で彼女はとある精霊と恋に落ち、やがて二人の子を産んだ。一人は精霊を見ることができ、体内の力を分け与えられる能力を持った少年。
もう一人は精霊を見ることができないが、世界の力を操れる少年が生まれた。
精霊たちは、子供たちを同じように愛したが、家族の中で唯一精霊を見ることのできない少年は孤独だった。
そして少年たちが大人になると精霊が見える少年は家族や精霊たちと一緒に森に小さな村を作った。精霊が見えない少年は家族のもとを離れ、世界中を旅をしてとある土地に村を作った。
「その精霊が見えない少年が作った村が今は大国としてこの大陸を支配しているのさ。」
「精霊が見える少年が作った村はどうなってるんですか?」
「精霊が生まれてくる精霊樹の近くに村を作ってひっそりと暮らしていたんだがねぇ…まぁこの話はまた明日しよう。もう寝る時間さぁ。」
なんだか、話をそらされてしまったが、おばあさんの言う通り自分の眠気も限界だったため、続きは明日聞くことにした。
「わかりました。明日もよろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくねぇ。」
そんな会話をし、おばあさんは自分の部屋に行き、私は二階に上って藁のベットに潜った。若干ちくちくするが暖かく、息を吸い込むと草のにおいがして自分は異世界に来たんだと実感した。
これからどうなるのか、不安とワクワクした気持ちを抱えながらその日は眠った。
読んでくださりありがとうございました。今回は説明回なので分かりずらかもしれません。後々になってわかる部分が多いのでエルと一緒にこの世界のこと知ってもらえたらと思います。
良ければ、評価や感想お待ちしております。