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求めていたのは温かさ

遅くなってしまい申し訳ありません。一週間に一回は投稿していきたいと思います。

目を開けると木目調の木材でできた天井があり、微かにラベンダーのようないい匂いがした。ここはどこだろうか。自分の部屋ではないことは間違いない、確か森の中で精霊たちに出会って…そんなことをぼんやりと考えていると「ぎぃ」と扉が開く音がした。


「目が覚めたんだねぇ。」


しわがれてはいるが、のんびりとして優しさと温かさのある声がした。声のする方向を見ると、白髪頭をお団子結びでまとめ、深い青色のワンピースと白いエプロンを身に着けた、腰がだいぶ曲がっている80代ぐらいのおばあさんがいた。


「おや、瞳も黒色なんだねぇ。これは驚いた。だけど、だいじょうぶ。ここは誰も寄り付けない場所だからねぇ。安心して好きなだけゆっくりしていけばいいよ。」


そう言いながらおばあさんは私に近づいて頭をなででくれた。名前も知らないおばあさんに私は不思議と不信感は持たず、どうしてか泣きそうになった。こんなふうに誰かに優しく声をかけてもらえたのが久しぶりのせいか、それともその撫でる手があまりにも暖かくて優しい手つきだっただろうか。


「泣くのを我慢することなんてないんだよぉ。だいじょうぶ。よくここまで頑張ったねぇ。偉いよぉ」


その言葉を聞いた瞬間に私の涙腺は崩壊した。

そして、その時私は思った。この言葉を誰かに言ってほしかったのだと。誰かに頑張ったと、褒めてほしかった。認めてもらいたかった。だが、頑張っても頑張っても報われない日々に絶望していた。疲れてしまって、ついにはこの世界に来てしまったのだった。

おばあさんには、私の事情は何も知らないだろうけど、本当にこの言葉に私の心は救われたのだった。


泣き止むまでおばあさんは優しくなでてくれていた。そして「ちょっとまっててね」と言って一度部屋を出ると、数分後戻ってきた時には木のコップを持っていた。


「少し冷めて飲みやすくなったからお飲み」


持ってきたコップを私に渡した。コップの中には透明な温かい液体が入っていた。おそらく白湯みたいなものだろうか。ゆっくりとコップを口につけて飲んでみるとほんのり甘い白湯だった。


「花の蜜を少し入れてあるから甘いだろうぉ」


私が寝ていた赤こげ茶色のソファーの近くにおいてあった丸い木の椅子に座り、ニコニコしながらおばあさんは私の様子を見ていた。


白湯を飲むと少し落ち着いてきた。

あたりを見回してみると、私が今寝ている少し大きめのソファーと窓が2つ、扉が1つあり、ハーブのような草花が壁際に吊るされていた。他にも大きめの棚があり、その棚には本や瓶詰め、小さい箱が並べられている。また大きめの机がありおそらく作業か何かする部屋なのが伺えた。


「ごめんねぇ。空いている部屋がここしかなくてねぇ。」


「いえ!すいません、部屋を見回したりして…」


「気にしないで、ここは私の作業兼物置場所でねぇ。あなたの怪我を治療するにはここが1番だったから精霊さんたちに運んでもらったのよぉ」


私はハッとした。そういえば、崖から落ちて怪我をしたはずの体がどこも痛くないのだ。


「あの…おばあさんが私の怪我を治療してくださったのですか?」


「そうよぉ」


「精霊が運んだというのは…?」


「あぁそれはねぇ…」


『ボクタチノコトダヨ!』


おばあさんが説明しようとすると幼い声が響き、倒れる前に見た蛍のような生物「精霊」が現れた。


『コマッテル、ニンゲン、タスケタ!』


『エライ…?』


いくつか淡い光がおばあさんの周りを飛んでいる。


「ええ、ありがとうねぇ。」


おばあさんが精霊に向かって微笑むと精霊たちは『ヌシサマニ、ホメラレタ!』と嬉しそうに飛び回っていた。


「え?おばあさんが精霊のヌシ様なのですか…?」


「そうだねぇ〜なりゆきでこの子達と一緒に暮らしてるのよぉ」


『ボクタチヲ』

『タスケテクレタ』

『ダカラ、ヌシサマナノ』


「ヌシ様なんてたいそうな人間じゃないんだがねぇ。だけど、この子達はそう呼んでくれるから好きにさせているのさぁ。あなたは気軽にエミーおばあちゃんと呼んでねぇ」


「エミーおばあちゃん…」



…どうやらこの世界で出会った最初の人間は森の優しいおばあちゃんだけではなく、精霊たちのヌシ様をやっている割とスゴイ人なのかもしれない。



読んでくださり、ありがとうございました。

テンポ遅いですかね。良ければ感想、評価お待ちしております。

よろしくお願いします。

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