私とどこか行く?
あれから海菜を家まで送ってから僕は特に何事もなく自分の家に着いた。
次の日。
僕の通う高校である渚ヶ丘学園を目指して歩いていると、後ろから声をかけられた。
「昨日はありがとー悠太」
幼馴染の波菜だった。
すごい明るい。お昼なのに光りっぱなしのイルミネーションかな。
「おお」
だから僕は少しだけ圧倒されてそれだけ返した。
そして少し落ち着いてから、
「デート、してたんだって?」
「してたよ」
波菜はニコッと笑って、
「あ、私まだ宿題できてなくて早く行ってやんなきゃだから急ぐねー」
そう言って走って行ってしまった。
僕はそれを立ち止まったまま見送ってから、また歩き始めた。
学校について教室にはいるとすぐ、僕に話しかけてくる人が。
「昨日小学生と二人で歩いてるの見たよ。あれ妹?」
同じ放送部の、綿原舞花だった。
「妹ではない。波菜の妹」
「あ、そうなんだ。なんで一緒だったの?」
綿原が訊いてきたので僕は軽く説明した。
「えー、よくないな波菜、妹とのお買い物の約束なしにしてデートするなんて。私から怒っとこうかな」
綿原は腕を組んで言った。
そして少し経ってから、その腕を解いて、
「それにしても、デート好きな人は好きだよねえ、最近イルミネーションもすごい明るく光ってるし」
僕と同じようなことを言うので少し驚いた。
「僕も昨日似たようなこと思ってた」
「そっか。私とどこか行く?」
「なんでそうなった」
「いや、なんとなく」
「すごいなんとなくそう」
「うん。波菜の彼氏、私の幼馴染なんだよね」
「あ、そうなの?」
だからなんだって話だけど。
まあでも小さい頃一緒にだらだら遊んでた人がめっちゃ恋愛してると、恋愛ってなんだろなあ、なんかすごそうだなあって考えるのかも。
実際少し考えた。
そして、綿原と二人で出かけることに決まったのは、それから二十分後のことだった。