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宿題は自力でやろう

白金ユウナ目線

プログラミングの課題をやる話

彼女は脳筋なので命令言語が「muscle」になってしまう。

どうも、白金ユウナです。

〇〇学園高等部1年です。

趣味は筋トレ、日曜日の朝のアニメを見る事。

はい、少し緊張、してるかな?


「それじゃ、始めますよ」


男のたくましい身体が近づいてくる。

私は興奮して、荒い吐息が胸板に反射して顔にかかった。


男の硬そうな手が私の襟元へ伸びる。

「ーー遅い。」

その手が触れる前に、手首を左手で掴んだ。

「っつ!」

左手に握力を込めると、男の顔は痛みに歪む。

些細な痛みを実践でいちいち気にしていては、どうぞトドメを刺してくださいと言っているようなもの。

男の伸びた右手を引っ張り、身体を回すと巨体が浮かび上がった。遠慮なく、『一本背負い』で投げ飛ばすと、男の体は勢い余って地面をバウンドして止まった。

(受け身くらいちゃんと取りなさいよ)


「勝負あり!でござる!」

郷田がカメラを止めると、倒れた男の元へ駆けて行った。


「無事でござるか、里田殿、、白金殿は手加減を知らないゆえ。」

「私は大丈夫です。日本にはこんなに強い人がいるのですね。インハイ優勝の実績に甘んじる事なく、鍛錬を続けます!」

「学生空手日本一の里田殿ならきっと、世界一になれるでござるよ」


郷田は里田を軽く手当てした後別れ、道場の隅に置かれたPCで動画の編集に取り掛かった。


「流石でござる白金殿、絶対バズるでござろう。」

「私からすれば手応えなさすぎたけどね」

「ところで、どうして動画配信なんてするでござるか?」


私はPCが苦手だ。

家では動画を見るくらいしか使わないし、長時間見てるだけで目眩がする。


「プログラミングの課題が出たじゃない。課題を提出できなければ進級できないの。」

「まさか、、課題が難しくて学校を辞める気でござるか?」

「そう、高校中退したら動画配信者になるしかないの。

生きていくために必要な事なの。」

「白金殿…もっと他に方法がござろう。」

「え?私に身体を売れというの?

しょうがないわね、そのカメラで私のいやらしい動画を撮ってちょうだい。

ノーブラ生着替えでも、水着でヨガでも、生活のためなら何だってやるわ!」


「そうじゃなくて!課題を終わらせるでご・ざ・る!」


2階にある私の部屋にて、タブレットPCを使って郷田に課題を教わっている。


「うーん…これが、えーと…。」

「どうしたのよ郷田、あなたは課題終わっているのよね?」

「も、もちろんでござるよ、、」

歯切れが悪いわね、、と思っていたら、突然、窓ガラスの割れる音がした。

『〇〇市教育委員会だ!

郷田くん、無駄な抵抗はやめて投降しなさい!』


えー、なにこの人たち、土足で入ってきたんだけど…

てゆうか、私の家のガラス、弁償してくれるのかな?


「郷田!あなた、何したのよ!」

郷田は両手をあげて全力で首を振っている。

「せ、拙者は何も身に覚えがないでござる!」


『自覚がないようなので、説明する。

君、プログラムの宿題に生成AIを使ったね?』

「う、、認めるで、ござる。」


『詳しくは署で聞こう。』

「白金殿、拙者を信じてくだされ!

必ず帰ってくるでござるうぅ!」


郷田はクソだ。

やけに上から目線で教えるくせに、要領を得ないと思ったわ。


「郷田、あんたの友達で教えるのが上手いやついる?」

「黒月殿が得意でござるぅ!」

郷田は連行され、一週間の停学になった。


げ、よりによってあいつか…

でも自力で宿題を提出できなければ、私の完璧な成績に傷がつくし、チャットGPTを使えば郷田みたいに捕まる。


「背に腹は変えられないか…」

寛大な私が学園の落ちこぼれから教わる事になろうとは。



1時間後ーー


『ピンポーン』

玄関を開けると、黒月カイトがいた。


「クズのくせに学年首席の私を待たせるとはいい度胸ね。

呼ばれたら5秒以内に駆けつけなさい。」

「これは生徒会長さん。お招きありがとうございます。

いやちょっとですね、お宅の使用人さんから連絡もらったんですが、ミラプリを見てまして…」


遅れた理由がアニメだとしても、腹を立てない寛大さが私が学年首席たる理由。


「ミラプリの途中だとしても、1話20分そこらでしょ?」

「今週の放送を見直してたんだけどさ、シリアス回を見たらコメディ回も見たくなってー。」

「あー、それわかるー」



さらに1時間後ーーー


「いけない、こんな所で話してる場合じゃ無いわ!」

「ところで、何で呼ばれたんだ?」

「実は、プログラムの宿題が…」

「そうか、今あまり期待するなよ?」


つい玄関でミラプリの話題を出したら、長話になってしまった。

黒月のくせに私に無駄な時間を使わせて…

もし宿題が提出出来なかったら、責任を取ってもらうんだから!



「はい、終わり」

「まさか…本当だ、実行出来たわ。」

「この宿題の範囲は、ほぼ期末に出るから、後で復習しておけよ。」

「なに先生みたいなアドバイスくれてんのよありがとうございます。」

「それじゃ、俺は帰ってアニメの続きを見ようかなー」


「待って!」

立ちあがろうとする黒月の袖を、私は無意識に引っ張っていた。


「ものすごく強い力で引っ張られる!

腕がもげそう!」

そのまま黒月は私の上に転び、私も仰向けに倒れた。


「いたた…」

上体を起こそうとすると、胸にヤツの顔が挟まっていた。

「何すんだメスゴリラ!」

黒月は顔をあげて、ガシッと私の胸を鷲掴みにした。

「触るな変態!」

反射的に右拳を突き出すと、バゴッと音を立てて黒月が壁に激突する。

力加減を間違えちゃった、、


頭をさすりながら起き上がった。

「咄嗟に後ろに飛んで無かったら死んでたぞ…」

「ごめん…つい、

それより、もう帰っちゃうの?」


「なんだよ、俺は早く帰りたいって言っただろ。」

「あ!ミラプリグミ買ったんだけど、一緒に食べない?」

「食べる!!」


ミラプリの事になると反応早いな…

ちなみに、ミラプリグミとは番組内でCM放送されている子供に大人気のお菓子で、決して高校生が好んで飛びつくようなものでは無い。


「知ってるか?今作のミラプリグミは翼がモチーフで、こうやって合わせるとハートの形になるんだぜ!」


ちぎったグミを弄って遊んでいる姿はまるで少年のようだ。

「かわいい…」

「そうだろ!このパッケージは期間限定で水着衣装なんだ。可愛いよなあー、」



本当にこいつはミラプリの事しか頭にないクソ野郎だ。

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