仮面ラ◯ダー好きの友達
(妹ミオ視点)
ミオと友達、赤坂シロウの妹「赤坂ユイ」が登場。赤坂兄妹の名前は仮○ライダー龍騎のカンザキさんが由来。
いつもと同じ校門をくぐって、いつもと同じチャイムが鳴る。
私にとって学校はどう言う場所か、と聞かれたら、「安息の地」だ。
私の家族(お兄ちゃん)はちょっと変わっている。家に帰れば家事があるのに、お兄ちゃんにミラプリの服を着せられたり、早朝からトレーニング(?)につき合わされる。
だから学校の生活は私からすれば心が安らげるんだ。
教室に入り、何人かと他愛無い話をして、一番の安らぎスポットである、自分の席に着く。
「昨日バカ兄貴が作った薬品を近所の犬に飲ませたら、でかいヌートリアになっちゃってさー」
「ヌートリアってなんじゃ??」
「外来種だよ。解毒薬を作って飲ませようとしたら、川を下って逃げられた時はマジ駆逐してやろうと思ったよね。」
「マジやばかねー。」
「4km先で捕まえて、元通り犬に戻した後、バカ兄貴にお隣さんに謝りに行かせた。」
「妹に苦労かける兄貴は許されんね。」
愚痴を話す相手は、友達の赤坂ユイちゃん。春に福岡から転校してきた、小柄で元気な女の子。ユイちゃんにも困った兄がいるらしく、共通の話題ですぐに仲良くなった。
「ミオちゃん、歴史のノート見せてほしいっちゃん!」
「うん、いいよー。」
「ありがと!ミオちゃんは勉強も運動もできて、スーパーヒロインやけんね!」
「ユイちゃん、恥ずかしいからやめてよぉ…」
実際、お兄ちゃんの方が成績が良かったし、運動神経も高いからね。
あと、時々カッコいい…いやいや、そんなわけ無い無い!
今日の5限目は体育。
私とユイちゃんが女子更衣室で着替えていると、クラスメイトの視線を感じる。
(何を食べたら黒月さんみたいな童顔モデル体型になるんだろう)
(赤坂さんも体格の割に出るとこ出てるよね)
(ウチらも同じ日本人の遺伝子の筈なのに…)
女子にも憧れの視線を向けられている事を私とユイちゃんが知るのは、少し先だった。
…
バレーボールの授業、楽しかった。
球技の回は当たりだなぁ。
「5限目の体育、きついけん…。」
「食べた後の運動は血糖値を下げるらしいよ。」
「うむむ、健康思考っちゃ。」
他のクラスメイトは先に更衣室に向かい、ユイちゃんと五十嵐さん、須藤さんと私の4人は、体育で使った用具等を片付けていた。
「黒月さん、施錠確認したよ!」
「お疲れ様、五十嵐さん。ユイちゃんも、帰って着替えよっか。」
「あれ、こんな所に三角コーンあったっけ?」
須藤さんの近くには、確かにそれがおいてあった。バレーボールで三角コーン使うっけ?
「須藤さん、離れて!」
1番早く反応したのはユイちゃんだった。
三角コーンに黒いオーラが集まり、みるみる大きくなっていく。
私と五十嵐さん、須藤さんは突然の事に動けずその場で立ち尽くしている。
『オレを片付けローー、イツモ忘れルナーー』
バスケのポストを超える程巨大化した三角コーンから手と脚が生え、近くで震えている須藤さんを捕まえようとした。
「危ないっ!間一髪やったね。」
「あ、ありがとう赤坂さん、、」
ユイちゃんが須藤さんを抱え、入り口までダッシュする。
「五十嵐さん、体育館の外に出よう!」
「う、うん…わかった!」
呆然としていた私達も、それを見て漸く状況を判断した。
幸い、怪人の足は遅く、みんなが体育館の外まで逃げ切れた。
ところが、ユイちゃんがひとり三角コーン怪人に向かって逆走し始めた。
「ユイちゃん、何してるの?!」
「ウチは怪人を倒して皆んなを守る。ヒーローの出番っちゃ!」
ユイちゃんはお兄さんの影響で、TVで見た仮面ライダーに憧れている。
正義感と勇気が人一倍強いんだ。
五十嵐さんと須藤さんに近くの生徒を避難させるよう伝えて、私もユイちゃんの後を追いかけた。
「おらぁ!これでも喰らえ!」
ユイちゃんが怪人を連続で殴りつけ、「バゴォーン」と音が反響している。
小さな拳で、身体の何倍もある怪人を弾き、ついに膝をつかせた。
ユイちゃん強いなぁ、勝てるのでは?
『ワレラの恨み、思い知レ!』
追い詰められた怪人は三角の頂点をこちらに向け、黒い光線を放ってきた。
「ちょっと!飛び道具なんて聞いてないんだけどー!」
「か、体が動かんたい!」
射線上にいた私も巻き込まれてしまい、身体が痺れて言う事を聞かない。
『ワスレ去られる悲しみを知るがイイ!』
三角コーン怪人は私たちの上に覆い被さり、私とユイちゃんは怪人の中に閉じ込められてしまった!
…
身体の硬直はとれた。三角コーンの中は薄っすら外の光が入っているが、音も人影も見えない。
誰か助けに来てくれるだろうか?
「ミオちゃん…あの…」
「気にしないで、ぼーっと見てた私の自己責任だから!」
「ちがくて、その…」
ユイちゃんがもじもじと脚を擦り合わせている。
「もしかして…おトイレ?」
「どうしよう、体育の時我慢してて…」
女の子が狭い空間で2人きり、体操着のみで閉じ込められてしまった。
「ユイちゃんの力でコーン持ち上がらない?」
「あまり力むと、漏れちゃう…」
困った。実は私も我慢しているが、言い出しにくい。
コーンの内側を叩いてみるが、やはり外からの反応はない。
「ヒーローは、んんっ、おしっこなんて…も、漏らさないっちゃ、あぁ!」
ユイちゃんが涙目になり、変な声を出すので、いつもより可愛く感じた。
5限目終了のチャイムも聞こえず、どれだけ時間が経ったかわからないけど、1秒が長く感じる。
「あのさ…ユイちゃん。」
「な、なに…?」
「実は私も我慢してるんだよね…」
ユイちゃんの焦りを浮かべた顔が一瞬こわばる。
「でさ…誰も見てないなら、
…一緒におしっこ出しちゃう?」
顔を見合わせ、無言で頷いた。
「み、見ないでね?お互い背を向けよう」
「あ、うん…」
体操着のハーフパンツに手を掛ける。
下を見ると、体育館の木の床が見える。
バレーボールじゃなくて、屋外の競技だったら土で誤魔化せたのに。
【黒月カイト】
悪感情を感知し、6限の授業を抜け出した。
俺は日々ミラプリのような事件がないか探し求めていたおかげで、第六感で感じ取ることができる。
おそらく妹の通う中学校の方角だな。
敵の怪人を見つけた。
体育館には人払の結界が張っており、誰も中に入れないようになっていたが、ぶち壊して侵入した。
「燃える輝き・ミラプリレッド!(自称)倒されたくなかったら、かかって来い!」
……
三角コーンがモデルであろう怪人は無視を決め込んでいた。
名乗りを無視された俺は、怒りに任せて殴りつける。
「てめっ、こらっ、固えなちくしょう!!」
邪悪なオーラは感じるが、手も足も出さない。ただ体育館の中央に佇んでいるそれを怪人と呼べるのだろうか。
放っておこうかな…
と、思ったが、プライドが許さないのと中学校の人が迷惑なのとプライドが許さないので破壊することを決めた。
カバンからペットボトルを取り出す。
俺がヒロイン達の必殺技を再現するため、科学のすいを集めて作り出した発明品だ。
それを怪人に向かって投げる。
「ミラプリファイナルレーザーーー改!!」
巨大な三角コーン上部に着弾したペットボトルから、幾何学模様の液体が降りかかる。
劇中で必殺技を受けた敵が跡形もなく消滅するのを再現した。
(ヤメロ!タスケテ!ダレカァァ!)
あ、声出した。断末魔が酷いな。
怪人が消滅し、後には通常サイズの三角コーンと、
「ミオ?」
「! お兄ちゃん!」
「お前、閉じ込められていたのか!」
薬品が怪人の中に掛からなくて良かった。危うく妹を溶かすところだった。
「遅いのよバカ兄貴!…ありがとう」
「まあな、当然の事をしたまでだ。
ん…?」
ミオの後ろにもう1人の人影が見えたので、心配になり回り込んだ。
「おい、大丈夫か?君は肌溶けたりしてないか?」
そこに居たのは活発な見た目とは対照に、涙を浮かべ庇護欲をかきたてる様な顔をした女の子。
「は、はい、、大丈夫でしゅ。」
女の子の身体にケガはないか、顔を近づけて全身を注意深く観察する。
「顔が赤いな。外傷は無いみたいだけど、ミオ、保健室に一応連れて行ってもらえるか?」
「もう!お兄ちゃん、ユイの身体じっと見過ぎだよ!」
「すまん、セクハラで捕まったりしないよね?」
「ユイは連れて行くから、お兄ちゃんもさっさと帰ってね。」
中学校を出た俺は、授業に戻らず、6限なので家に直帰した。
「お兄さん、カッコよかとね…」
「え?何か言った?」
「ううん、なんでもなか!」
お兄ちゃんを帰らせた後、私たちはお手洗いへダッシュした。
「あ、短パン下ろしたままだった」
トイレの中で、兄に下着を見られたことに気づいた。
隣からユイちゃんの悲鳴が聞こえた。