表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

シスコンの兄が通常の恋愛ができるわけない。

作者: ヒーハー
掲載日:2020/02/01

受験勉強の間を縫って書きました。

ぜひ読んでくれると嬉しいです。

文が拙いかもしれませんが、我慢してください(>_<)

「お前は一体何回言えば分かるんだ。」

昼休みの職員室に怒りと苛立ちを含んだ声が響いた。

その声の主は、人差し指をトントンと机を叩き足を組んで俺を睨みつけた。

その目はまるで鬼の様で結構怖い。

「す、すみませんでした。」

「……田中。お前のその言葉を聞いたのはこれで二十二回目だ。」

「で、でも好きなものを我慢するのは厳しくて……」

「その言い訳を聞くのも二十二回目だ。」

そういうと、呆れた顔をして自慢の綺麗な黒髪をクシャクシャにして机に突っ伏した。

「先生。そういうことしてるとせっかくの美人がもったいないですよ。」

先生というのは俺の担任の空田楓先生のことだ。年齢は自称二十四と言ってはいるが、この学校に赴任してきて今年で五年目だというので真っ赤な嘘だろう。

しかし、見た目は大学生と言われたら信じてしまうほど若く見える。そしてなにより美人だ。

腰まである長い綺麗な艶のある黒髪、不自然すぎるほど大きな瞳、スタイルもモデル並みでまさにボンキュッボンってやつだ。

「そうだなぁ。田中、最近はストレスのせいかやけ食いが多くてなそれが原因で太ったんだ。あとは、ニキビもできるし、下着は盗まれるし、財布は落とすし、給料減るし、終いには一年間付き合ってた彼氏から今朝別れのメールは届くし!!」

空田先生は泣きながら俺の胸ぐらを掴んだ。

「私が一体何をしたっていうんだ!?なんで、こんなにも不幸が続くんだ。」

「そ、そうなんですか。」

「おい、田中ァ。お前のせいだぞ。私がお前のクラスの担任を持ち始めて、お前の指導を始めた時くらいから不幸が続いているだ!!どうするんだ!?私がこれからも不幸になり続けたら!!責任とれよぉお!」

いま、なんとなくだけど彼氏にフラれた理由がわかった気がした。

「すみません。俺は心に決めた愛する人がいますので。」

「はぁ…私は一日に二度もフラれるのか。」

空田先生は胸ぐらを掴んだままその場に泣き崩れた。

クソめんどくさいな。この人。

「あ、あの。話終わりました?そろそろ昼休みも終わるし戻りたいんですけど。」

あぁ、この長い愚痴のような説教もようやく終わりに近づいたと思い少し油断した。

「あ?なんで私がめんどくさがられないといけない?お前、なんでここに呼び出された分かっているだろう?」

しまった。地雷を踏んでしまった。

先生は俺の言葉に反応し泣き崩れたまま俺の方を向いてさっきよりも険しい表情で睨んだ。

「そもそもお前のその歪んだ性癖のせいだろうが!!」

空田先生は大声で俺を怒鳴りつけた。

「口を開けば妹好きとしか言わないし、中等部の女子更衣室に隠しカメラをつけて妹の生着替えを撮影しようとするし、終いには妹に近づいた男子すべてをボコボコに殴り飛ばし………。」

「いやぁ。まぁやっぱり好きなものは好きじゃないですか。」

俺は少し笑いながら頭をポリポリかいた。

その態度がいけなかったのか、先生の眉がピシッと音を立てた。

「やはり、お前には力による指導しか残されてないようだ。私の愛の鉄拳でその歪んだ性癖を、矯正してやろう。」

そういうと、空田先生は立ち上がって拳をポキポキと音を立てながら握った。

ちょ、マジで怖いって。

恐怖による錯覚か、先生の拳に炎が灯ってみえる。

「ギブ!キブ!すみませんって!もうしませんって!」

俺は必死に謝ったが先生に止まる気配はない。

「はァっっっっ!!!!!!」

ドゴッッッ!!!

鈍い音がした。床を殴った音だ。

………間一髪っ。助かった。

「ふぅ。外してしまったか。まぁいい。次は当てる。」

助かってない!やばい。やばい。

先生の口からフシューとかいう音もでてるし。

逃げないと。

俺は職員室を出ようとドアまで全力で走った。

その瞬間後からハサミが飛んできた。

そのハサミは俺の頬をかすり目の前にあったドアに突き刺さった。

「待てよ。」

先生のソプラノの声が、鬼のようなド低い声に変わって聞こえた。

やばい。まじで殺されるって。

どんどん近づいてくる先生に俺は汗を垂らしながらつばをごくりと飲み込んだ。

マンガとかアニメの世界でよく腰が抜けるとか言って動けなくなるけどあんなの嘘だと思ってた。けど実際腰が抜けるとまじで動けないものなんだな。俺、死ぬかも。

先生は俺目の前で立ち止まり、俺の顔のすぐ横に拳を打ち込んだ。

人生初壁ドンがこんな恐怖に満ちてるなんて…。

「おい、田中。」

「はっはいぃ!!」

「今から言うことを繰り返して言え。」

「はっはいい!!」

「二度と問題を起こすな。」

「二度と問題を起こしません!!」

「二度と私に迷惑をかけるな。」

「二度と先生に迷惑をかけません!!」

「破ったら……」

「や、破ったら…?」

「コロス」

ヒィいい!!マジで怖いって!!死ぬって。これはガチだ…ガチすぎる………

「よしっ!」

先生はさっきの鬼のような顔から一転し、まるで天使のような笑顔で俺の肩に手を置いた。

「もう行っていいぞ?早く戻りたいんだろ?ちゃんと課題やっておくんだぞ?」

「もっ、もちろんです!失礼しました!!!」

俺は急いで職員室を出て1mで遠く職員室から離れるように逃げた。

「ふぅ。疲れたわー!あら?鈴木先生。そんなに怯えてどうかしたんですか?」

空田先生は机の下に隠れていた体育科の鈴木先生に話しかけた。

「こ、殺されるっ!だれかぁ!!助けてぇええー!!!」

鈴木先生は目にも止まらないスピードで職員室から逃げていった。

「えっちょっと!もうなんなよ!!!」



* * *



職員室から逃げて行き着いた先は食堂だった。

うちの学校は中高一貫の私立校で、食堂は全生徒が使うためとても賑わっている。

今もざっと見た感じ500人くらいは食堂にいるだろうな。

俺が周りを見渡しているとどこから名前を呼ばれた。

「おーい。トモヤー。」

声が聞こえた方を見ると、そこには唐揚げ定食を食べている一人の男がいた。

「島田じゃん。何してんの?」

俺は彼に近づいて隣の空いてる席に腰をかけた。

「見ればわかるだろ。飯食ってんだよ。」

「あー、なるほど。」

「おい、ナチュラルに俺の唐揚げ奪うな。」

「いいだろ。一個くらい。」

「それが、最後の一個なんだよ。」

こいつの名前は島田ショウタ。

幼稚園からの腐れ縁だ。物心ついたときから一緒にいるせいか、こいつには遠慮がなく接することができる。

「なぁ。さっきお前空田先生に呼び出されてたよな?何の用だったの?」

「いつもと同じ。」

「あぁ。サキちゃん関連か。」

島田は笑いながら言った。

サキとは、俺の愛すべき妹の田中サキのことだ。

年齢は15歳。中学三年生だ。ちなみに俺と同じこの私立徳永学園に在籍している。まぁ同じと言ってもサキは中等部で俺は高等部だけど。

「お前さ、そろそろシスコン卒業したら?」

「は?シスコンじゃねぇし。好きになった人が偶然妹だっただけだし。」

「そういうのをシスコンっていうんだよ。」

島田は呆れながら言った。

「お前は、せっかく顔も悪くないんだし、運動神経だっていいのにその歪んだ性癖が全てを台無しにしているよ。」

「そんなこと、サキと比べればどうでもいいさ。」

「この前もお前せっかく陸上で結構でかい大会に出場できたのに、すっぽかしたんだって?」

「あぁ。その日はサキと買い物に出かけたんだ。そりゃあ日本選手権とサキとの買い物なら迷わずサキとの買い物を選ぶだろ。」

「こいつ。もう手遅れだ。」

「でも、さっき空田先生にもう二度と問題を起こすなって釘刺されちまってさ。もう好き勝手にサキに愛を伝えられなくなったんだよ。」

「いや、その方がいいよ。」

島田は諦めたような顔で頷いた。

「くっそぉ!もうやけ食いだっ!!」

俺はそう言うと、島田が食べていた唐揚げ定食を無理矢理奪い取ってバクバクと食いあさった。

やってられん!くっそ!てかこれ結構上手いな。今度機会があれば食べてみるか。

島田は最初こそ抵抗はしたものの、途中からはもう無理だと悟ったのか何も言ってこなかった。

「ん?」

俺がやけ食いしてる途中に島田がなにかに気づいたのか声を上げた。

「あれって、サキちゃんじゃない?」

「………はっ!?」

島田は食堂の奥の方を指さした。

その指の先には、たしかに中等部の制服の女の子が誰かと昼飯を食べていた。

遠目で見た感じ、肩ぐらいまである髪型で少し茶色がかってる。そして、細身でとても可愛らしい見た目だ。

たしかに妹とピッタリだ。

「あぁ。本当は今すぐ会いに行きたいけど、空田先生との約束があるからあいにいけねぇじゃねぇか。」

俺はガクッと肩を落として机につっぷした。

「珍しいな。空田先生との約束をお前が守るなんて。」

「今回は別だ。まじで殺されかねないからな。」

「マジか。」

くそ。ていうかまじで辛い。

これが我慢ってやつなのか。

妹にちょっかいかけるのを我慢するのがこんなにも苦痛だったとは…。少し想定外だ。

「お前も小六まではまともだったのにな。」

島田が落ち込む俺を見てられなくなって話しかけた。

そうだ。俺は小六まではまともだったんだ。だけど、あの日俺の世界に一人の女神が光臨した。



* * *



ーー五年前

8LDKの広い一軒家に親父と俺のたった二人。二年前に親父とおふくろが離婚してからは、もともと五人家族だった田中家は親父と俺ペアとおふくろと姉二人のペアに別れた。姉の二人はおふくろについて行ったことで、親父にもついて行ってあげないと寂しいかと思い俺は親父についた。それからは賑やかだった俺の家は、嘘のように静まり返り飛ぶかう会話と言えば「おはよう」「いってきます」「ただいま」「おやすみ」くらいだ。そんなまるで昔のテレビような白黒な世界は突然色づいた。


ピンポーンっとインターホンが鳴った。

俺は「どちらさまですか?」と親父に教えられたように画面の向こうの見たことない女の人に聞いた。

「秋山です。」

聞いたことない名前だった。誰だろう?

親父からは特に何も聞いてない。俺は疑問を抱えながら玄関まで行きドアを開けた。

ドアの先に立っていたのは、年齢は三十代くらいの女の人とその後ろに隠れている一人の女の子だった。

「君が、トモヤくんね?お父さんっているかしら?」

大人の方の女の人が俺に話しかけてきた。

「あ、はい。いますよ。今呼びますね。

お、おとうさんー!」

俺が大声で呼び出すと、いつも着ているジャージ姿ではなくビシッとした姿で親父は現れた。

「いらっしゃい。秋山さん。」

「あ、田中さん。お邪魔します。」

「トモヤ、紹介するぞ。お前の新しいお母さんになる秋山桜子さんだ。」

そういうと、大人の女の人はニッコリと笑って俺を見つめた。

え?新しいお母さん?聞いてないんだけど。どういうこと?

「誰だよ!!俺のお母さんは二人もいない!一人だけだ!!」

俺は、ショックと混乱で自分が何を言ってるかも分からないまま思ったことをそのまま叫んで逃げた。

家を出て、近所の公園も走り抜けて気づいた時には知らない場所にいた。

どこだ、ここ。

だんだんと恐怖がわいてくる。

知らない場所にたった一人。

当時小学生の俺にとったら結構ヤバいピンチだった。なんだって小学生だぜ?

想像してみてほしい。小学生の自分を思い浮かべて知らない場所にたった一人。

これ以上に怖いことなんてあるか?

いや、無いはずだ。

とにかく怖かった。

次第と日は暮れていきもうじき夜になる。

もう一生家に帰れないかも。なんて思いながらポツンと近くの電柱によたれかかった。

…………?

あれ、目がぼやける。なんで?

俺は正体不明のぼやけを取り除こうと目を擦るがそのぼやけはどんどん見えなくなり、やがて涙となって頬から流れ落ちた。

「怖い。誰か助けて……」

俺は消えてなくなりそうな声で助けを求めた。

聞こえるはずなんてない。そもそも近くに誰もいない。…………………はずだった。



「私がたすけてあげるよ。」


「え?」


俺は驚きで声が出なかった。

おそるおそる前を向くとそこには女の子が立っていた。

この子……さっきの秋山って人の後ろに隠れていた子だ。

「もう!いっぱいさがしたんだからね!」

その女の子は、よく見ると泥やかすり傷で体中ボロボロだった。

「犬に追いかけられるわ、車に泥をはねられてかけれるわ、転んで擦りむくわ!ほんとに泣きたいのはこっちだよ!しっかりしてよね!お兄ちゃん!!」

「………っ!!」

その言葉は、弱りきった俺の心を落とすには十分すぎた。

「ねぇ。そんなに新しいお母さんはダメ?」

女の子は俺の隣に座って話しかけた。

「そりゃあ、最初は抵抗あるかもだけど私のママはすっごいやさしいんだよ!!ご飯もすごく美味しいし、特にね卵焼きがすっごく美味しいの!!あとケーキ作るのも得意でね、まぁ欠点があるといえば怒った時はめちゃくちゃ怖いんだけど…。でも!いいお母さんなんだよ!!」

満面の笑みで俺に微笑みかけた女の子は手を差し出した。

「家族になろうよ!ね?お兄ちゃん!!」

俺は女の子の手を強く握って泣いた。

上の姉は俺のことをパシリとか扱っていなかったし、優しかったおふくろはいなくなっちゃうし、一緒にいる親父とはなにも喋らないし…。

久しぶりに人の温かさに触れた気がした。

「お、俺は田中トモヤ…。き、君は?」

泣きながら震える声できいた。

「私は、あきや……田中サキ!

よろしくね!トモヤお兄ちゃん!」

あぁ、好きだ。

俺は恋に落ちた。

そこからは抵抗があった再婚も受け入れ幸せな生活が続いている。



* * *



「とっ、ここまではいい話なんだけどな。なんでこんなになった。」

島田は不思議そうに俺を見つめる。

「何がおかしいんだよ?妹が好き!これの何が悪い。」

俺は何が悪いのかわからないというジェスチャーをしながら答えた。

「別に好きな人ができるのはいけないわけじゃねぇんだよ。その愛の向き先がアウトなだよなぁ。あとその愛ゆえの行動だ。」

「はぁ?」

俺は少し不機嫌にそうにきいた。

「いやさ、考えてみろよ。おかしいだろ?ふつう盗撮や殴り飛ばしたりするか?」

「それは、俺がそれだけ妹を愛している証拠だ。」

「ほんとにこいつ。もうダメだ。」

島田はガクッと肩を落とした。

その時、周りの女子からなにやら話声が聞こえた。

「キャーっ!かっこいいよね!八王子くん!中等部なのに身長も高いし!しかも全国大会に出場したうちのサッカー部のキャプテンでエースらしいよ!」

「ほんと!すっごいかっこいいよね!でもさ、隣にいるあの女誰?見た感じ中等部だけど……」

ーー八王子タクト、うちの中等部が誇る俳優顔負けの超絶イケメン野郎だ。

しかも、神様はこいつに容姿だけではなく運動神経の才能も与えたらしく、なにやら噂だとサッカーの全国大会で優勝したとか…

やはり人生は不公平だとこの世の男どもに悟らせる存在だ。

そんな八王子が女子といるのか。

少し気になるな。

一体どんな美人なのか。

俺は興味に誘われて食堂の奥の方を見る。

そこにはキラキラといかにもイケメンオーラを放つ八王子がいた。

その隣には……………

「はっ!?」

その隣にはさっき見つけた妹がいた。

おいおいどういうこっちゃ。

「驚いた。サキちゃんがあの八王子と二人で飯食ってるよ。」

島田は驚きで顔が歪んでいた。

いやもともとかもしれない。

ていうか、そんなこといまはどうでもいい。

あっ!あの野郎。肩に手を置きやがった。振り払え!そしてそのまま手を掴んで一本背負いしてやれ!

あれ?

何笑ってんの?

なんでそんなに嬉しがってるわけ!?

……………もう我慢出来ない。

俺は気がつくと走り出していた。

後から島田が止めようと俺を掴むがそれを振り払って走り続けた。

「ト、トモヤァアッッ!!」

島田が大声で俺を止める。

しかし、俺にはその声は届かない。

俺は走ってる勢いそのまま八王子にドロップキックをお見舞した。

「俺の妹に何してくれてんじゃぁっ!!」

八王子は吹っ飛んだ。

ざまぁwwww

俺の妹に手を出すからだ!

あの世で後悔しな!

「は!?バカ兄!?何してんの!?」

俺の耳に天使のような声が流れ込んでた。

妹の声だ。

この声を録音して毎朝の目覚ましに使いたい。

「安心しろ!サキ!このクソ野郎は俺が退治した!お前には指一本触れさせるものか!」

俺はかっこよくポーズを取りキメ顔で言った。

完全にきまったな。惚れ直しただろう。

「こんの、バカ兄ィイッッ!!!!」

「…え?」

バシィイッッ!!!!

気持ちいい音が食堂に響いた。

俺の頬を妹の平手打ちが襲う。

しかしまだ終わらない。

反対方向からまた平手打ちが襲いかかる。

バシィイッッ!!!!

まだ終わらない。

バシィイッッ!!!!

バシィイッッ!!!!

バシィイッッ!!!!

いわゆる往復ビンタってやつだ。

空田先生に殴れるのは少し違ってこの痛みはなんだか気持ちいい。

俺って妹限定のマゾなのかも…

「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」

ビンタと共に罵声を浴びせられる。

そして、最後のきつい一発が俺を襲った。

バシィイッッ!!!!!!!!!!!!

間違いなく今までで一番の威力だ。

俺の体は回転しながら吹っ飛んだ。

羽生結弦顔負けのスピンだ。

「ひでぶっっ!!」

俺は変な声を上げて近くにあった机にぶつかった。

その衝撃で周りの食べ物が飛び散り、また机にがバキバキに壊れてしまい大惨事だ。

俺が気を失っている間に、八王子は復活し

妹と何やら喋っていた。

「ごめん!ほんっとにごめん!うちのバカ兄が迷惑かけて!こいつ、キモイほどシスコンなの!ほんとにごめん!今度なにかお詫びするから!」

「いや、全然いいよ。鍛えてますから(笑)」

冗談交じりで笑いながら答えた八王子。

周りの女子からは「やさしー」とか「かっこいい」とかそんな甘甘しい言葉が飛び交った。

すると、昼休みの終了を知らせるチャイムが鳴った。

もう昼休みは終わりのため生徒は自分の教室に戻っていく。

もちろんあの二人も仲良く戻っていった。

クソっ。羨ましい。



* * *



さっきまでの騒ぎが嘘のように静まり返った食堂にたった一人残された俺はぶっ壊れた机の上で味噌汁や米、おかずなどを頭からかぶっていた。

気がつくと誰もいない。

近くの時計を見ると既に五限が始まっている。

やばい。五限目はたしか世界史だったか。

世界史の担当は空田先生だ。

………殺される。

俺は急いで立ち上がった。

その時、後ろから声がした。

「おい。」

この声は、昔の教育番組でやっていた『桃太郎』の鬼役の声優にそっくりだった。

いやぁ。

あの声優めっちゃこわかったよなぁ。

この年でも未だにビビっちゃうよ。

………………え?

俺は恐る恐る後ろを振り返るとそこには笑顔でいようと努力してるのだが、うまくできなくて引きつった笑顔の空田先生がいた。

「あれ?先生。授業は?」

「あぁ。それなら、お前がいないからお前のクラスのやつに聞いたところ食堂で乱闘騒ぎがあったと聞きつけてな。急遽自習にしてお前をシバキに来たんだ。心配するな。」

「へ、へぇ。そうなんですか。」

「あぁ。言ったよな?約束破ったらコロスって……」

「あはは。言いましたっけ…?そんなこと。」

俺がとぼけて笑っていると首を掴まれそのまま宙に放り投げられた。

「やはり、お前には力しか通じないようだ。」

空田先生は拳を強く握りしめて、俺のみぞおちを的確に狙って殴り飛ばした。

「グハッあっうっ!!!!!」

俺は吹っ飛ばされた。

や、やっぱり空田先生のはなんか違う……。

俺はまた気を失った。



* * *



俺を殴り終えた空田先生を一人の見つめる人がいた。

彼女の名は菜花橙子。

今年で五六歳。

食堂のおばちゃんとして、生徒から人気のある大ベテランだ。

空田先生が気配を感じて後ろを振り返ると目が合った。

ニコッと空田先生が微笑むと、顔がどんどん青白くなった。

「こっ、殺されるゥウウウウ!!!!!」

彼女はとんでもないスピードで逃げていく。

「もう!一体何なのよ!!!」

空田先生は泣きながら地団駄して叫んだ。





感想ください!!!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ