好きな世界と現実
貴方の体温に溶かされたい……
ずっと抱きしめていて。そばにいて。
束縛して?貴方の印を愛でて貴方の帰りを待っているから。
あなたの考えがわからない、こんな私を好きでいる理由も。
寒さのせいかな。無駄に澄んだ空が憎らしくて溜め息をつくと白い息が出た。
靄のかかった息のせいで盲目なのね。
通学路。いつも道。いつもの駅。
寒さが襲う。冷たくなった手に息を吹きかける。暖かい飲み物が自動販売機に置かれているが、今買うのももったいないなと思い暖かいであろう電車に乗り込む。
今何しているの?
スマホを片手にイヤホンを耳にさして大音量で音楽を聴く最近の子女子高生。
マフラーを口元に押し当てた。
横に座る人は眠そうで、電車の温かさと揺れと誰かのあくびで眠気に襲われた。
帰りたい。
でも帰っても親とは喧嘩しかしないだろうし、今日も学校が終わっても家に帰らず寒空の下でその辺りをブラブラするだろう。
今日は始業式で、授業がないため午前だけだ。
首筋が寒いのは長い髪の毛を括ってしまったせいね。
腰まで伸びた髪の毛は少し鬱陶しくて括ってしまっていた。
その瞬間、首に冷たいものが当たった
「ひゃっ!」
その正体が人の手だってことは直ぐにわかった。いつもの笑顔を浮かべた私の友達。
恋愛感情はないが、好きである男友達だった。
「冷たい手で触らんといて!」
いつもの様に戯れた。
「ん?なら温かい手ならいいんだな?」
「だめ!首弱いの知ってるやろ!?」
ククッって笑う友人を睨み、頬を膨らます。
「可愛いかよ」
たまにこういうことをゆうから、女遊びがすごいと言われんやぞ。
「うるさい!」
彼は私のことを娘のように見ていて、愛でるように、頭を撫でる。
それを嫌だということはなくて、黙って俯く。
「で、なんだ?また考え事か?」
「ん?なに?」
「いや、暗い顔してただろ?」
なんでこうも彼には見透かされるのだろうか
「気の所為」
「そうか。」
ボスっと私の横に座って言葉を交わさずに学校の最寄り駅に着く。
「ねぇ、2人で登校するから勘違いされるんやないん?」
「あ!そっか!お前天才?」
そして直ぐに離れてスマホを見る彼。
どこかあどけなくて笑ってしまった。
下駄箱では靴をはきかえて、先生や友達におはようございます、おはよ!寝た?等と軽い挨拶をして教室に入る。
机の上に鞄を置くと
「おっはよー!」
元気のいい声が私の背中にのしかかる。
「もうなに?」
ふふっと笑いながらいつもの会話。
「私課題まだ!」
「早くやれよwww」
男気の強い彼女は私の腰や頭をつついてはからかってくる。
ごく普通の女子高生。少しわけアリの家に生まれ、人並みに恋をし、人並みに勉強をした。
いや、それは無いよね…少し不幸自慢してもいいですか。
私は、九条薫。高校2年生。
母は専業主婦をしているが父親は大手メーカーの社長で、私はお金持ちの子供なわけだ。
そんな中一人娘として生まれた
私の記憶がある限りは親からのひどい虐待しか記憶が無い。お金も顔もある権力を手に入れた母親は、幼少期の幼く拙い私を傷つけて、お喋りで笑う時期は消え去った。
だが、泣くのも許されなかった。殴られて蹴られて泣いても「煩い!!」と頬を引張叩かれては玄関から追い出されて、暑い夏も寒い冬も一夜を外でこしたことがあった。
だけれど、新しい男とヤれた時の母親は機嫌がよかった。
今思えばただの不倫。
母はこう言った
「貴方も男を受け入れる体に…」
この後からの記憶はない。
ただ覚えてるのは母親の腕が伸びてきたこと。
父親は殆ど家にいなかった。
帰ってきて、母親とヤり、私を殴った。
「お前なんていなければ」
”ごめんなさい…生まれてしまって”
そのあとの言葉が優しかった。
「ありがとう。お前がいてよかったよ。」
優しく私を撫でた
母親は新しい男を連れ込んでは淫乱な雰囲気を漂わす部屋で喘いでいた。
1人で幼い私はご飯を食べた。
ご飯と言えるのだろうか…あの食べ物はなんだったのだろうか。
私の感情はここで途絶えたのだろう、
それから、小学校入った頃には感情とは顔に貼り付けるものだと思っていた。
そして友達は暇潰しの玩具でしか無かった。
喧嘩をした相手のグループの破壊を楽しんだ。
まぁ感情なんてなかったからただの優越感だろう。仲の良かった人の心をズタボロにして、助けて私に依存させた。
小学校を卒業するくらいには人の操り方を覚えてしまった。
”ごめんなさい、遊んでしまって”
中学三年間は体を売った。
背の低くて細い体を、どこかの金持ちに愛された。
あれもきっと愛。歪な。
私は愛されてるよ!ふふっ!!
ここで私は依存したいと思った。
中学入ってから"彼氏"とゆう存在を作ったが、体を売る私に、彼は鬱になってしまった。
理解ができなかった。
私はこんなにも沢山の人に愛されてるのに。
彼氏である貴方が喜ばないのはどうして?
それでも私は細い腰を掴まれて体を揺らし続けた。
白濁とした液体を覚えた。中に入れるのは拒んだが、口の中は許した。
母親の機嫌がいいのが分かった
愛を囁かれながら、「好き」と紡がれる言葉の呪縛に私は快感を覚えた。
好きって2文字なのにとても重い言葉。
恋は盲目
……愛は育むもの。
「愛して」
中学卒業…気づいた。
これは愛じゃない。ただの遊び。
そして壊れた私は精神病院へ入った。
ただひたすらノートに書き綴った文字
「死にたい。」
そしてたまに
「殺して。」
「私を見ていて、愛して。」
殴られて蹴られても笑顔で…
いい成績で褒めて欲しくて…
いい子でしょう?
いい子と悪い子の定義なんて知らないくせして、母親の理想になりたくて。
先生はこういった。
「頼むから笑う前に頑張れよ。教室を引っ張れ、もっと成績を上げろ。学校の評判をよくできるのはお前だけなんだよ。お前が巫山戯て遊んでいるだけで風紀が乱れるんだ」
どうしてそんなことをゆうの?
だって、成績も良くていつも笑顔でみんなを引っ張った。笑ってはダメなのね…
”ごめんなさい…笑ってしまって”
私こそ、本当の玩具。
世界に絶望し、ごめんなさいと羅列されたノートに自分の手首から滴る赤い液体を擦り付けた。
そして、高校へ
1番最初にでてきた彼が私を光に連れていってくれた。
初めて過去をさらけ出した。
初めて人の前で泣いた。
初めて感情が生まれた。
そして、ごめんなさいがありがとうに変化した。
そこからまともな恋をして傷ついた。
親からの言葉の暴力。やめてって叫んでもやめてくれない。
人の頼り方も甘え方も知らなかった。
それから、恋をしました。
背の高いひょろっとした、肌の白い茶髪の彼に。
優しくて、笑顔が素敵な。
純粋で私とは真反対でした。
でも、人の心がわからなくなった私は恋がすごく難しいの。
甘えてもいいですか。
好きって言って束縛してもいいですか。
もっと愛して。
私だけを見ていて。
今でも許さない存在。
私の夢を弄び壊した存在。
何度も包丁を握った。
大好きな人達に出会った。
とめどなく溢れた涙。
少し溶けてしまった貰った市販のチョコパイを口に含む。
何故かとても美味しかった。
また泣くの。
いつでも買えるような食べ物がとても美味しかった。
誰かとご飯を食べるのが楽しかった。
お泊まりをして、眠そうな目を擦って
「おはよう」
その会話だけがすごく幸せだった。
色々ありそうだけれど、恋をしている彼の目がとても可愛らしかった。
まるで子供のようで、楽しい環境で育ったんだったんだろうな。
これからも彼女を愛するのかな。
そして私を見て微笑む彼女にどう対応していいのか分からなくて、ニコって笑って手を振った。
抱きしめた。暖かい……
ある人の手が冷たかったので温めるために手を握った。手は冷たいのに心がだんだん暖かくなった。優しいその人は傷ついたあの子の心を癒した。その包容力。
私たちを引っ張ってくれた。
しんどくても笑顔で大人なあの人はたくさん教えてくれた。
初めてのお店。
あまり話さないけど周りを見ていて私のことを見てくれていた彼もいた、あの子の良さはきっと誰かに伝わる。優しいから。あの子は幸せになれる。
家庭問題がある彼も、沢山の経験をするから、もっと人に優しくなれる。笑顔が柔らかくて、笑い声が好きです。キツイ言葉を投げるけれど、本当は優しいあなたが好き。
優しすぎる世界。
塞ぎ込んでしまった私を解き放つのはたくさんの人達で、またあの家に帰るのを拒んでしまった。
泣いても仕方が無い。
現実に戻ってしまうが、また会える日を楽しみにして、私は生きるの。
きっと誰かが、私に「笑って」ってゆってくれるから
人との関わりって大事ですよね
それ故に信じることも。
裏切られること覚悟で愛されるってとても怖いけれどきっとそれも人間
犠牲はつきもの。幸せは生まれるもの。
そしてそれを共有し盾とする