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ノーフェイス・スラッガー  作者: 遊木昌
3/10

取締の仮面Ⅲ 『欠点』

 桜華玲奈は先月の一件以来自分の弱さに気付き、自分の心身をさらに鍛え始める。

 「玲奈ちゃん。前よりも鍛えてるよね…大丈夫からしら?」

 「まぁ…10代は色々あるんでしょう。そっとしとくのが一番ですよ」

 玲奈を心配する女性隊員は、いつ倒れるか分からない玲奈を気遣いながら雑務やトレーニングをする。

 しかし、集中できる筈もない。


 「…バカ…バカ。私のッ……バカ!」

 一人言が周囲にだだ漏れなうえに追い討ちと言わんばかりに、玲奈が走るランニングマシンから煙が出始めていた。

 「ちょちょッ! 玲奈ちゃん止めて止めて! 煙!」

 「ふぇ?」

 玲奈がマシンを止めると同時にさらに煙が立ち込め、その場にちょっとしたパニックが起きる。


 「ホントに……申し訳ない有りませんでした」

 玲奈は上官の男に頭を下げる。

 隊の備品を1つ駄目にした件で呼び出しを食らい、上官の前に立つと素早く頭を下げて謝る。

 しかし、上官が玲奈を呼んだ理由はそんなものではなかった。


 「私に…先月の一件で現れた、謎の仮面集団の調査ですか」

 玲奈は不思議に思いつつも、上官の詳しい内容を聞く。


 「私が…謎の仮面集団を調査しろって……ほぼ宛もないのに無理ですよ」

 玲奈は今晩の晩御飯を買い出しをするため、近くのスーパーに立ち寄る。

 別にコンビニ弁当でも良いと思ったが、食費の節約と食材を使った方が用途も多く保存が利く。

 カゴを手にスーパーの中に入ると、目の前に桜色の髪を生やした男とバッタリ会う。


 「(さくら)真昼(まひる)先輩」

 「やー…桜華(おうか)ちゃんも、買い物? ()()()()()なのに自分で料理するって凄いね」

 真昼の発言に玲奈は疑問を抱き、真昼の手首を掴み自分の目の前に引っ張る。

 「ちょッ! なに?」

 突然な事に真昼は慌てるが、玲奈は真昼の目を見詰め尋ねる。


 「真昼先輩は……何で()()()()()()()()()()()()()()()()()? 友達にさえ言ってない事を通学のバスと学校で数回だけしか会った事がない先輩が、何で私の事を知ってるんですか?」

 「そ…それは……そう! 桜華の家の近くを通った時に、たまたま近所の人が話してて、そこで知ったんだ……」

 真昼は咄嗟に言い訳をでっち上げるが、玲奈は真昼の嘘を見破りさらに言い寄る。

 「どうして…ご近所さんが私の住所と部屋番号離しをするんですか? ご近所の方でも、そうそう話さないと思うんですけど?」

 真昼はどんどん墓穴を掘り、どんな言い訳をした所でも玲奈の疑問は増すばかりか、言い訳すら思い付かない


 しかし、奇跡と言ってもいいほどのタイミングで、店内から悲鳴が聞こえる。


 店内の商品棚が倒れ、何人もの仮面を被った少年少女達が店内で暴行と窃盗を行い店員から金を奪い逃走を謀ろうとしていた。

 ――当然『反仮面(ノーフェイス)』である玲奈は少年少女達を捕まえるべく、真昼を掴む手を離し走る。


 ラッキーと内心笑みを浮かべる真昼はその場から逃げる、しかし。


 「お母さーん…お母さーん!」

 頭から血を流す母親を揺する小さな子供、見た感じ5歳位の小さな子供。

 「るせぇんだよ……ガキが」

 ネズミの仮面を着けた男が子供目掛けて鉄パイプを降り下ろす。

 それの光景に真昼は


 「そんな! ダメ……!」

 咄嗟に仮面を装着する玲奈だが、仮面を着けても男を止める事は出来ない。

 子供の頭に鉄パイプが降り下ろさせる、玲奈は目を背けようとする。

 たが、子供の泣き声が聞こえその直後に玲奈のすぐ横から金属音が聞こえてくる。

 振り向けば、少年少女達が積み重なって気絶していた。


 「たく……。『反仮面(ノーフェイス)』なら咄嗟な状況にでも対応出来る人材ぐらい、しっかり育成しとけよ」

 赤色の模様が入った虎の仮面を被った真昼が、玲奈の直ぐ横で気絶した少年の胸ぐらを掴む。

 玲奈は咄嗟の事で子供か少年達の確保かの2択で迷ってしまった。

 それに対して、真昼は少年達の確保と子供救出の両方を成し遂げる。

 反仮面の部隊員でない、一般人の真昼が咄嗟に対応したのにも関わらず。

 訓練を受けた玲奈は目を反らしてしまった。


 その事に玲奈の心は深く傷付き、同時に咄嗟に反応した真昼への妬みに変わる。


 (なんで……なんで、先輩は咄嗟に反応できたの? 訓練を受けてない一般人が……)

 玲奈はよろけながら立ち上がり、真昼の袖を掴み尋ねる。

 しかし、玲奈の背後から突然、とてつもない殺気と威圧が迫り玲奈の体は小刻みに震えそ始め場で固まる。


 「おいおい! コレはどういう事だ?」

 玲奈の正面には、女と男の形をした歪な仮面を着けた男が玲奈を真上から見下ろす。

 「あんたがやったのか? 俺の可愛い子分共を」

 男が口を開く度に玲奈の全身に寒気が走り、震えが止まらなくなる。

 男の瞳を見詰めれば気が狂いそうになり、頭が激しく揺さぶられるような感覚に陥り吐き気が止まらない。


 「そ…それ…は……」

 「あー?」

 男がさらに玲奈に詰め寄る、見かねた真昼が男と玲奈の間に割って入る。

 透かさず、玲奈の額を小突き倒れた玲奈を抱き抱える。


 「お前…俺の獲物を横取りか? 調子に乗んなよ!」

 男が腰を捻り真昼の顔目掛けて蹴りを叩き込もうとするが、体が上手く動かずその場に倒れる。

 「な…なんで?」

 不思議がる男に真昼は人差し指を立てて忠告する。



 「自分の力を過信しちゃー行けない。それに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 真昼は玲奈をお姫様抱っこの状態のままスーパーを後にする、その後に駆け付けた反仮面の部隊に少年達は捕まり、その混乱に乗じて男はスーパーから外の人混みに身を投じる。



 玲奈は目を覚ますと、そこには見馴れた同期の面々と25区にある支部の医療棟で目を覚ましていた。

 混乱する玲奈の周りには自然と支部の仲間が押し寄せる。


 特に男子が――


 玲奈は水を一杯口に入れ、まだ回復しきれていない体を女性隊員に支えられながらベッドから起き上がり、ここまで運んで貰った真昼の元に向かう。


 「真昼先輩…あの…」

 口ごもる玲奈を察した真昼は右手を軽く挙げて、その場から去ろうとする。

 しかし、何か重大な事を思い出したのか振り向き支部の代表に指を指し忠告する。


 「新人達によーく伝えときな。いついかなる時も、『(キング)』と『女王(クイーン)』の専属(せんぞく)には手を出すなとな……俺は忠告したぞ」

 真昼の発言にその場に居合わせた者の大半は理解できていなかったが、支部の代表だけが冷や汗をかき真昼に深々と頭を下げる。

 その直ぐ後に玲奈を含んだ全部隊の隊員が召集され、支部長自ら再度隊員達に忠告した。



 「ねぇ…玲奈さん。支部長の話って本当かな? 私信用できなくて」

 玲奈の同期の数名からも、支部長の話を素直に受け入れられない者も多数いた。

 「そりゃ、そうだよね。私達の仕事は危険な仮面能力を逮捕することであって、()()()()()()()()()()()()為にいるんじゃないっての!」

 女性隊員がゴミ箱を蹴り飛ばし、辺りにゴミが散乱する。

 「でもさ、『市民』階級の私達が『貴族』階級の人達に文句とか言ったら、それこそ私達の立場だって危ういよ……」

 椅子に座ってコーヒーを見詰める女性隊員は、ため息をこぼす。

 「『王と女王が支配する区域内で、王達の専属が起こした騒ぎや事件は危険視法の処罰の対象外である。もしも、専属やその王に楯突いた場合は、どんな理由があろうと死刑はまぬがれない』だって……反仮面(ノーフェイス)が危険な仮面能力者を捕まえたとしても、それが専属だった場合。逆に私達が処罰されるとか…可笑しいでしょ」

 玲奈は女性隊員達を横目に、休憩室の扉を開け女性用の更衣室から自分の服を取り袖を通す。

 鞄を取り25区反仮面支部の扉を勢い良く開き駆け出す。


 「…犯罪者を捕まえるのが、犯罪。――こんな世界間違ってる!」

 一直線の道を形振り構わず走り抜け、交差点に差し掛かった所で信号は赤へと変わる。


 「死にたいのかな? ――お嬢さん」

 車に引かれそうだった玲奈の手を掴み、交差点を走り抜けようとした玲奈を止める。

 「あ……えっと…ありがとうございます…」

 目の前の美形青年に玲奈は目を奪われる。

 宝石のような瞳は見るものを魅力し、その甘い声は聞く者の心をトロけさせる。

 その青年の周りには、大勢の女性で溢れ返っており人混みに押されるように玲奈は男から離れる。

 「あれ? 私何してたんだろう」

 「ちょッ! ――ちょっと!」

 青年が玲奈に声をかけようとするが、玲奈は信号が赤から青へと変わった事を確認すると、向かいの道路へと向かって行く。

 青年の呼び声は玲奈の耳には聞こえず、そのまま角への消えていく。



 「――邪魔なんだよ……メス豚がァ!」

 青年は玲奈に無視された事に腹を立て、周囲にいた女性達を一瞬で失神させる。

 「凄いねぇ…『獅子』の仮面能力。雄叫び1つでこうも出来るとは……」

 男は声の方へ振り向き、フードで顔を隠した男を睨み付ける。

 「なんの用だよ……お前ら見たいな平和ボケした組織とは違って、俺らの王は戦いを求めてるんだよ」

 青年は赤色の模様をした獅子の仮面を顔に纏い、フードの男目掛けて飛び掛かる。

 しかし、フードの男は仮面を身に付けていないのにも関わらず、生身の状態で男の動きに合わせるように後ろへと待避する。

 「―クソがッ!」

 青年は赤色の炎を掴みフード目掛けて投げつけるが、フードの男はすんなり躱わし青年の正面に立つ。


 「――しまッ!」

 青年は死を覚悟したが、フードの男は青年の額を小突き小声で青年を脅す。


 「――平和ボケした組織ってバカにしたのは黙っててやるから、さっさと失せろ。次はお前らの『(キング)』の首を狙うぞ?」

 青年は顔色が真っ青に変わり、その場に座り込む。

 青年の戦意が削がれたことを確認した、フードの男は車の往来が激しい中を平然と進み。


 人知れず、姿を消していく


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