取締の仮面 Ⅰ『 ノーフェイス』
――俺は、平和を愛する男だ。
俺の生きる世界は、生まれた時点で階級が付く階級社会だ、母と父は一般的で平凡な会社に勤める社会人であり、幸せな家族である。
階級社会などなければ、至って普通の家庭なのだろう。
しかし、階級社会である前にこの世界は少し……いや、大分イカれてる。
俺が生まれるずっと前に発見された特殊な鉱石により急激に発展した科学によって、物を永久的にその場から浮かす等といった科学技術が発展。
それを生かし事は無いかと議論され、今まで都市や工場で無くなってしまった自然や今ある自然を残したいと数多くの願いから人間が住む場所だけを空に移したのだった。
空に移したと言っても、漁業や農業はそのまま続けられている。
都市が無くなった土地でも新たに農業が始められ、自然豊かな自然が広がった。
ここまでの説明だと、人間社会が大きく発展したのは分かって貰えただろう。
しかし、神が与えた特殊な鉱石は何も恵みだけでわなく、厄も振り撒いたのだった。
春であれば様々な花が咲き乱れるものだろうが、ここは空の上である。
人間が生きられる高さの限界は五千メートルを優に越えた場所には、草1つ無い。
そして、酸素が薄いところでは人間は生きられなかった。
所が、今の人間は違った。
特殊な鉱石の恵みの1つに物を無制限に浮かせだけでなく、鉱石の発する特殊な磁場内だと人間の限界領域が格段と上がることが分かったのだ。
エレベストの山頂ですら、防寒具無しで一時間は活動でき息継ぎ無しで深海八千メートルまで潜れるとの結果が出たのであった。
しかし、それは鉱石が確実に磁場を発する事が前提であった、それを判明した時には既に実験で数多の登山者、プロダイバー、学者が亡くなった。
それ以降、そんな馬鹿げた実験は行われなくなった。
そんなある日、一人の女子大生が歪な仮面を身に付け大暴れしたとのニュースが報じられそれ以降、各地で仮面騒動が起こり、対には警察や軍隊。
世界の各国要人までもが仮面が自らの顔から現れる現象が世界を震撼させる。
数多くの難かったの検討により、その現象は鉱石の発する磁場が人間の欲望や願望、本能を仮面へと変化させ突如として現れさせたとの事だ。
その仮面の詳しい情報やデータは後世に引き継がれていき。
『仮面』
そう呼称され呼ばれていた、世界各地の児童育成機関で仮面の使い方や扱い方を厳しく学ばせる事が義務付けられ。
さらには、『仮面危険視法』という法律ができると、仮面が発現した子供には仮面の徹底した解析と分析を行った。
それから10年の月日が流れると、子供が成長していきと親に反抗的する者や、学校を辞めた者達が仮面の能力を使い。
『暴力』『窃盗』『恐喝』『組織での犯罪』等と多くの事件が起こり、政府は『対仮面能力者鎮圧部隊』略して『反仮面』を組織した。
反仮面の行動により、仮面を悪さに使う子供は減りそれを利用していた大人も次々と逮捕されて行く。
しかし、根本的な仮面を悪さに使わせないと言う解決に至らなかった。
そこで政府は、圧倒的な力を入れて持つ仮面能力者を――『王』又は『女王』として、新たな浮遊都市を造りそこにまとめたのだった。
――いわば、王国を作ったのだった。
世界各国の能力者を分け、多くの領域を作る事で階級社会を徹底した。
そのため、この世界には。
『連邦国家』『貴族』『平民』『農民』そして……。
――暴力と殺しに心を染められた『一級危険仮面能力者』
に階級が分けられていた。
――そして、昔話的な走馬灯が終わり、今に至る。
「ハァ……ハァ……」
無我夢中にただ走る、後ろからは狼の仮面を付けた男が俺を追いかける。
繁華街を通り過ぎ、裏路地のゴミ箱を飛び越え、男との距離を伸ばして行く。
男の姿が見えなくなった瞬間に脇の路地に入り込み壁を巧みに登り瓦製の屋根に登る。
「どこだぁ! くそ坊主!」
男は少年を見失い真逆の方へ走り去る。
「――あっぶねぇ……死ぬかと思った……」
キレイな桜色の髪の毛に銀色の指輪をチェーンで首から下げ、チェック柄のパーカー姿でその場で倒れる。
「危ねぇー仮面能力を理解した奴だったら、殺されるところだったよ。――さて、学校行くか」
この男の名は、『桜 真昼』
ごく一般的な学生である、人助けの心で女性がナンパされていた所を助けた、までは良かったのだが。
所が、その女もグルだった事は予測しておらず、その女は自分をカモに金を持ってそうな奴を釣ろうとしていた所を真昼に邪魔をされた。
そして現在に至る。
真昼は右手で自分の顔の前を扇ぐ。
すると、アゴから青色の炎が現れ、その後に炎と同じ色の模様をした仮面が生成されていき顔を覆う。
形は先程の男と同様の狼の仮面を身に付け、屋根を足場に跳躍。
辺りの家屋や看板を足場に、学校方面の道へ向かう。
真昼が付いた頃には、学校は2限であった。
「学校へのやる気の無さはいつも通りなのは分かった。しかし、時間を良く見て行動しろ!」
それだけ言われると、真昼は職員室から自分の教室に向かう。
「やる気の無さって……学校はめんどくさいだよ。百歩譲って直しても良いとしても、遅刻した言い分け位させてくれよ」
トボトボ教室に着き扉を開けようとするが、授業中にしてはやけに中が騒がしかった。
「何だ? 何かあったのか?」
真昼はドアトブに手を掛け扉を開けると、全員窓から外を眺めていた。
「この学校、ホントにトラブル多いな……」
真昼は親友の『宮本 賢治』の肩を叩く。
「おぉ! 真昼じゃねぇか、おはよー」
「おう!」
二人は手を軽く挙げ挨拶を交わすと、真昼は本題に入る。
「何の騒ぎだ、これ?」
真昼は賢治の前に顔を出すと、驚きのあまり険しい顔になった。
「出てこいゃあ! 桜ァ真昼ゥ!」
今朝がた追い掛けられた、男が何人も仲間を連れて校門前で叫んでいた。
「桜君の……お友達ですか?」
担任の『鈴崎 未琴』は教師になって日が浅いと言う事で現状に困惑していた。
女性教師という事もあり、男子からは小動物見たいな挙動に心を射ぬかれた男子生徒が後を立たない。
そして、今の現状でも賢治を含めクラスの男子心を射ぬかれ倒れた。
真昼は校門前で叫ぶ男達を確認すると、男と目が合う。
直ぐに隠れるが、隠れるには遅すぎた。
「兄貴……居ました。写真のガキです」
手下が真昼のいる教室を指差すと、男は仮面を付けて真昼の教室まで跳躍して、窓枠に乗っかる。
「皆さん、窓から下がって!」
未琴先生は足を震わせながら窓を見詰める。
「私の生徒に何か用ですか? 用が無いならお引き取り下さい」
未琴は震えたまま男と正面から対峙する。
「仮面付けてない分際で、でしゃばるな女……後ろのガキに用があんだよ」
男は机を蹴り飛ばし、未琴先生の首を掴み窓から外へ放り投げる。
「――ッ!」
「なッ!」
窓から落ちる未琴先生に生徒は固まるが、咄嗟に賢治が窓から身を乗り出し未琴の腕を掴み取る。
「――ナイスキャッチですぜ。未琴先生……」
賢治が未琴先生を助けたと同時に男に殴り掛かるが、腕を掴まれそのまま顔を殴られる。
「狼は殺気に敏感なんだよ」
真昼に襲いかかると思いきや、真昼の真上を巨大な鉄球が飛び壁を諸とも男は校門前まで飛んで行き、地面で寝そべっていた。
真昼は後を向くと、自分の通ってる学校の中等部の制服を着た女の子が立っていた。
女子生徒は狐の仮面を付けていた所よりも、腰のスカートとシャツの間から生えている巨大な尻尾にビックリしていた。
だが、この尻尾こそが彼女の能力だと理解した。
女子生徒は仮面を取り外すと鞄の中を覗き、ようやく引っ張り出した物を真昼達に見せた。
「対仮面能力者鎮圧部隊『反仮面』です!」
女子生徒は警察が使ってる物と同じ手帳を突き出す、自分の顔写真と反仮面の所属先が書いてあった。
「皆さんはここより避難を、能力者が暴れだすかも知れません。さぁ、早く!」
女子生徒は狐の仮面を再度付け直す。
紫色の炎は全身を包み込み妖艶な雰囲気を醸し出す、女子生徒の腰から生えた狐の尾は次第に数を増していき、窓から外へ扉を出した時には、外で待ち構えていた数名の能力者と正面から相手していた。
「どうした、真昼? 何か気になる事でもあったか?」
「いや。――何でも無い」
真昼はただ一点を見詰める、一人で奮闘する女子生徒の後姿を。
校舎から別館の体育館へと遅れて避難してきた真昼と賢治は足早に扉を開けようとしたが、扉の向こうにある。
巨体な殺気に感付き動きを止める。
「―――ハァ。嫌だ嫌だ…俺は平和を愛する男なのになー」
「厄介事持ち込んだ張本人が何言ってんだよ。ほれ、早く挨拶しなー」
賢治に尻を蹴られ、よろめきながら扉を開ける。
目の前には、先程の人数の倍の人数が体育館で避難してきた生徒と教師を取り囲む。
タイミングの良いことに、能力者以外全員気絶している事だけが雄一の救いだった。
「あぁ……ありがとう神様。――今日と言うこの日にアンタが俺に味方してくれた事に感謝するよ」
真昼は両手の指の関節を鳴らし、犬歯が見える程頬を上げた笑みを浮かべる。
「全員……やっちまえ!」
「おお!」
体育館に響き渡る声に少々驚くが、真昼は大軍に向かって歩みを止めない。
その頃、女子生徒が息を上げて体育館に少し遅れて到着する。
女子生徒は狐の仮面を付け直し、開いた扉の隙間から勢い良く体育館に入る。
「そこまでです。全員仮面を…外し…なさい」
そこには、気を失った能力者達が溢れており、女子生徒が入って来た入り口では賢治と真昼が座っていた。
「よッ! ……お嬢さん」
「遅かったじゃん、待ちくたびれたよ」
「キャッ!」
自分の隣で存在を隠していたのか、賢治と真昼の呼び掛けに思わず驚き女の子らしい声を発し赤面する。
「……脅かせないで下さい。先輩方」
「先輩……俺らが?」
「はい、私は上役からここ。『私立公明学園』中等部へ転校してきましたから」
女子生徒は仁王立ちで二人を見下ろす、良く見ると、黒色のショートヘアーは風に靡き健康的でスベスベとした肌は男からすればキレイと言える分類の女性だった。
胸は大きくなく少なくもない、水色で透き通る様な目は少しだけ見とれてしまう。
「上役って…」
「じゃあ君が、先日転校してきた。美人の『桜華 玲奈』ちゃんか……可愛いなー」
玲奈は賢治の可愛い子を見た時の表情に悪寒を覚える、スケベ心丸出しの賢治にため息を溢す真昼は玲奈を見詰める、玲奈も真昼の目線に気付き真昼を見詰める。
それを見ている賢治は、ニヤニヤと笑みを浮かべていたが気を失っていた生徒が起き上がってき来た所で賢治と真昼は起き上がり、玲奈に後を任せた。
「んじゃ…事後処理は任せますね」
「本物の『反仮面』なんて初めて見ただぜ」
そんな二人の後を眺めていた玲奈は不思議に思っていた。
「普通の人だったら、突然襲われたら怯えるものなのに……先輩方は訓練を受けてるのでしょうか?」
そんな疑問を浮かべながら、辺りに倒れる能力者の顔を覗き混む。
「アイツ……反仮面だってよ。どうする?」
「さぁ、俺らには関係ない事だ」
賢治と真昼は校門を抜け、住宅街を通り過ぎて行く。
地上行きの貨物や商業系の特殊な飛行船や貨物船が停泊する、巨体なトラックヤードへと向かい、物流で賑わう人だからを抜けて、小さなバーへと入っていく。
「はいはい、ここは青少年立ち入り禁止だよ」
葉巻を吹かした刺青だらけの店長とフリフリ衣装の看板娘が二人を出迎える。
「今日はどのような御用でしょうか? 真昼さん。賢治さん」
看板娘の子は、二人に言い寄り二人を困らす。
「んじゃ、いつも通り……舞踏会といきますか?」
賢治はポケットに手を入れ、店の奥へと進む。
「――真昼さんは?」
真昼は笑みを浮かべ、店の奥へと進む。
「俺は平和を愛する男だ、しかし。――明日っからはどうだろうな?」
店の奥は暗く、灯り1つ無い所を真昼はゆっくりと進んで行く。