不確かな誓い
夢中で走ってたどり着いたのは高校で、校門をよじ登りいつでも入れるように鍵を開けていた窓から高校内に侵入する。
3-A教室に入り窓を背に息を吐く。
「っ、澪、大丈夫か…?」
「う、ん…ありがと、一樹。手、握ってくれて…」
「いや…。」
まだ繋がれたままの右手。一樹がぎゅっと力を込めたから、私もきゅっと握り返す。
こんな状況だからこそ、誰かの体温が心地よく安心できて、ほっと息をついた。
「てか、あのパンダなんなんだ?」
「わかんない…ゲームだって言ってたけど。それに、おばあちゃんが…っ」
目の前であっという間に死んでいったおばあちゃんの姿が脳裏に鮮明に映し出される。
大好きなおばあちゃん。
笑顔が可愛いおばあちゃん。
さっきは出てこなかった涙が、ポロポロと流れ出る。
「澪…」
「っ、ご、ごめ…なんで、今更…!」
ゴシゴシと目元をこすっても涙は止まらなくて、
怖くて、
悲しくて、
不安で、
辛くて。
いろいろな感情が出てきて、不安定でボロボロの私を一樹がギュッと抱きしめた。
「あ、一、樹…」
「ごめん。」
「え…?」
「かっこよく、泣けよとか言えねぇ。俺も、めちゃくちゃ怖い。…でも、守るから。怖くても、死にそうになっても…守るから。」
「っ、う、ふぅ…!」
根拠のない誓いだった。
それでもこの状況で、一樹の言葉は確かに私の支えになった。
私の背中に回されている手の震えが伝わって、それでも私のために格好を付け続けてくれる一樹がありがたくて、縋るように腕を回した。