『アルパカ級宙防艦』『後期型サザレ級』
内容がかなり密接しているので2回まとめて投稿します。
後に『アルパカショック』と呼ばれるそれは、ヒエイーザ星系における戦争が避けられないものとなった現実を民主国宇宙軍の人々に直視させた。
アルパカ級宙防艦は神君国がかの悪名高き武器商人『宇宙の眼』から購入した大気圏内外汎用艦である。特殊粘性金属を用いたその装甲は通常時にはステルス性を考慮した平面であるが、大気圏突入時には空気抵抗を最適化する曲面を描く。このような機能は当時の技術では大型艦には搭載できず、必然としてアルパカ級は航続距離や実弾武装を抑えた軽量小型の粒子ビーム宙防艦となった。
この大変高価な買い物の費用がどこから捻出されたのかは未だに謎が残るところだが、一説によると『宇宙の眼』が実戦データの収集のために無償で提供したという。本級の配備は750年の神君国宇宙軍設立とともに始まり、756年のヒエイーザ戦争開戦時には8隻が稼動状態にあった。わずか6年でこれほどの軍拡を進められた要因のひとつには神君国が遺伝子改造と人工子宮による『生まれながらの兵士』の生産を積極的に行ったことが挙げられる。これらの技術は民主国において禁忌とされており、両国の関係悪化の原因ともなった。
さて、この強力な宇宙戦力に対抗するために民主国宇宙軍は従来の兵器国産化政策を一時的に修正。民生品の取引で友好関係にあったアポロン自由星系同盟から『レインボーミサイル』を購入し、改良を加えたサザレ級に装備した。これが後期型サザレ級である。
レインボーミサイルは当時最新の技術であった超多層光波認識装置を搭載した追尾型艦対艦ミサイルであり威力、速度ともにアルパカ級を撃破するに十分なものだったが、いかんせん高価で開戦時に民主国が保有していた基数は13基に過ぎなかった。そしてヒエイーザ戦争終結までの期間は銀河中立国規定に則りアポロン自由星系同盟からの兵器輸入が停止したため、民主国宇宙軍はこの13基を虎の子として8隻のアルパカ級と対峙した。
民主国の兵器でアルパカ級を捕捉・撃破できるのは実質的にレインボーミサイルを装備した後期型サザレ級3隻(一番艦カドミウム、二番艦ハイドロギウム、三番艦コペルニシウム)のみであり、また神君国にしてもアルパカ級の粒子ビーム砲はサザレ級の人工樹脂外骨格構造との相性が悪く撃破するには上手く露出したスラスターなどを狙い撃たなければならなかった。
開戦前から予想された膠着状態を打開するべく民主国は『プランR』を計画し、神君国は『レセップス作戦』を実行するのだが、それはまた次回に軌道列車砲の紹介を交えて解説しよう。
『アルパカと虹・代理戦争の姿』 終
ビーム兵器にも色々な方式があるわけで、未来兵器の装甲選びは大変だろうなと考えて質量の暴力という強引な重装甲を作り、サザレ級に戦艦っぽさを出したつもりです。
宇宙の眼は星系間航行能力を艦隊規模で持つ敵に惑星国家が対抗するために出しました。国家ではなく多国籍企業のようなものなので、自由気ままに武器を売りさばいています。