表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スペオペ妄想兵器のワゴンセール  作者: オーメイヘン
1/9

『サザレ級一等戦略艦』

(SFジャンルでは)初投稿です。

「我々は戦艦のようなもので戦った。」

ワビサビ民主国首相はサザレ級一等戦略艦についてこのように書き残している。


ケンタウリ入植暦756年、ワビサビ民主国は惑星国家成立以後初の惑星国家間戦争、ヒエイーザ戦争に突入した。この際、民主国国防航空宇宙軍(以下、宇宙軍と表記)が主力としていたのがサザレ級である。本艦は701年に宇宙軍の主力艦として採用されたスターダスト級戦艦を国産化したもので、列強の宇宙戦艦とは比べ物にならないほど低い性能しか持たなかった。しかしながら、大型無重力造船所を持たない民主国が建造できる唯一の恒星間航行艦であったために86隻が開戦時に保有されていた。


サザレ級一等戦略艦の構造を見てみよう。本級はワビサビ星系に豊富に存在する小惑星にエンジンとワープ装置をつけて武装しただけの軍艦、と思われがちであるがそれは必ずしも正確ではない。小惑星は一般的に考えられている以上にもろい構造をしておりエンジンをただ取り付けただけではその推力に耐えられず崩壊してしまうのだ。資源採掘のために小惑星を輸送する際には磁場フィールド展開牽引艦を使用するが、サザレ級は軍艦としての機能を重視して人工樹脂外骨格構造を採用した。要するに接着剤で外側を塗り固めたのである。


輸入艦であったスターダスト級から受け継がれた人工樹脂外骨格構造は大出力エンジンに対応しにくい、銀河共通規格の宇宙港を利用できないなどの欠点があったが、ベースとなる小惑星の質量を活かした重装甲を低コストで実現できたため重工業が未発達なまま軍備の充実を急ぐ当時の民主国の国情に最適であった。事実、ヒエイーザ戦争はサザレ級なくして戦い抜けなかっただろうと多くの軍事研究家が分析している。


本級の初陣は744年開戦のセトーチ宇宙海賊討伐戦争であった。ワビサビ星系の完全統一を果たした民主国がヒエイーザ星系に進出する際に神君国から門戸開放の条件として要求されたのが、神君国の主惑星ヒエイーザ3(現地名ゴクラック)の軌道上に一大勢力を築いていた宇宙海賊セトーチ衆の討伐であった。セトーチ衆は当時既にヒエイーザ3の北大陸を統一していた神君国の宇宙進出を阻む強力な武装集団であり、列強の通商船団さえ戦わずに通行料を払うほどであった(列強同士の牽制により滅ぼせなかったという事情もある)。民主国は神君国と通商条約を結ぶためにこの依頼を受け、スターダスト級2隻とサザレ級6隻からなる外征艦隊を派遣。2年の歳月を費やしてセトーチ衆を降伏させたのである。


この勝利によって民主国は最恵国待遇といくつかの租借地、それにヒエイーザ3における軌道エレベータ建設権を得て神君国の自国経済圏化を進めていく。だが宇宙軍は戦勝の喜び以上にサザレ級の性能不足を感じさせられていた。当時のサザレ級は31年式ビーム砲(テラ式低縮粒子砲)3門と34年式汎用ミサイル発射管12門が主兵装だが、これはセトーチ衆の高速艦に命中させることが困難だった。高速艦は列強が開発したモンキーモデルが宇宙海賊の手に渡ったものであり、この技術的敗北は民主国宇宙軍の兵器国産化路線を動揺させた。


そんななかで開発され、756年のヒエイーザ戦争で重要な役割を担ったのが後期型サザレ級、別名カドミウム級だがその説明は次回に譲る。後期サザレ級の主兵装である『レインボーミサイル』を理解するためにはまず神君国寺院軍の宙防艦アルパカ級を知らなくてはならない。


『列強の合間で・ヒエイーザ戦争への道』終




サザレ級は人工樹脂外骨格構造とか言っていますが骨組みくらいは入っていると思います、たぶん。太陽系の実在する小惑星は案外モロくて簡単には動かせないようですが、未来の人工樹脂の力で上手く塗り固まっているのだとお考えください。木製飛行機とか氷山空母のように材質にこだわった宇宙船を考えるのも案外楽しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ