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The eternal train  作者: 齋藤翡翠
2/10

The fault'll change to the gratitude tomorrow.

遂に第二話です。

前回よりも登場人物が幅広く増えたので、混乱しないように気をつけてください!

初めて読む方も、一話一話で読み切りのような物語になっているので、十分楽しんでいただけると思います。

では、長らくお待たせいたしました。

第二話の始まり始まりー。

私はね、ずっとずっとここにいたいのーーー。



晴れた空を眺めている少女がいた。暖かな風がさわさわと少女の短い髪をさらっていった。少し日焼けした腕を額に当てるようにして、空を仰ぐ。


「今日もいい天気だなぁー。」

少女は満足そうに微笑み寝転がった。辺りは見渡す限り花、花、花のお花畑だった。

そこにはポピー、チューリップ、スミレ、ひまわり、コスモス、薔薇に蕗の薹まである。

四季折々の花が一度に見られるこの場所は、ある人にしか辿り着くことはできないー。寝転がる少女はそれを何となく感じていたが、咲いている花の香りに顔を埋めて眠りに着こうとした。

しかし、それを妨げるように頭元で誰かが少女の名前を呼ぶ声がした。


「井口華奈さん」


少女はふと顔を上げた。花びらがちらちらと舞い、フワリと甘い蜜の香りがした。

そこには、華奈と呼ばれた少女より幼いだろうか、けれど大人びた美しい少女が立っていた。

少女は真顔で華奈を見つめながら、淡々と話す。


「迎えに来ました。寄り道なんかしていては、いつまで経っても自由になれませんよ。」


華奈はあぁ、あなたか。と呟いて、また花畑に顔を埋めた。


「あなたが皆が言う“メル”さんなんでしょ?」

「えぇ、そうよ。」


華奈は、この少女を直接見たのはこれが初めてだったが、噂は常々花畑にいた他の人たちから聞いていた。


「どうして皆を何処かに連れていくの?」


華奈はメルという存在を、意味嫌っている一人だった。理由はただ一つに決まっている。花畑にいた人たちを、尽くどこか遠いところへ連れていくのだ。花畑に今さっきまでいた人たちが急にいなくなったのは、メルが来たからだとようやくわかった。


メルは華奈の問いに冷たい受け答えをする。


「それが私の仕事だからよ。」


それを聞いて、華奈は頭に血が登った。足元の花を蹴散らしているのを気にも止めず、立ち上がり、メルの目の前で怒鳴った。


「意味わかんない!仕事なら何をしてもいいって言うの?!皆ここにいたがっていたのに…ここで楽しく過ごしていることの何がいけないの?!」


メルは依然として真顔だった。


「それが貴女たちのためだからよ。」


華奈は、はっ。と呆れた声を出した。


「私たちのため…?だったら私はここにいることが一番幸せで、一番私たちのためだと思うわ!そうじゃなきゃ、“私たちのため”なんてただの綺麗事よ!」


華奈はその場から駆け出していた。

遠くから華奈を心配して、見守っていた花畑の住人たちが「華奈ちゃん」と叫んでいるのが聞こえたが、振り返ることもなく華奈は走り去った。


「はぁ、ほんと面倒な仕事を引き受けちゃったものだわ。ー…人間って本当に面倒だわ。」

メルは華奈を追いかけることはせず、ただ走り去っていく少女の背中をみつめていたーーー。




華奈が走って走って走りきった先は、見慣れない場所だった。

今まで来たことがない場所に着いた華奈は、終始困惑した。


「迷っちゃったの…かな?」


そこは、静かな木々が生い茂った場所だった。時折、風が吹いて木々が葉を揺らし、木漏れ日が華奈を優しく照らした。

華奈は不思議と迷ったことなど忘れ、森の中へと突き進んだ。


ー…サラサラサラサラ…

木々の葉が音を鳴らす度、華奈は囁かれているような気持ちになった。


大分進んで足に疲れを感じたとき、前方に光が射しているのが見えた。

耳を澄ますと、水の音がする。


ーサァァアアアーー…


「…川?」


華奈は光が射す方へ向かった。近づくにつれ、光はどんどん眩しさを増す。眩しさに目をつぶりながら華奈が最後の一歩を踏み出した。


すると木々が開けたその場所には、大きな大河が流れていた。足元は砂利になっていて、華奈が歩く度にジャリジャリ音がなった。


「あら、若い子ねぇー」

華奈の後ろの方から声がした。後ろを振り返ると、六十から七十歳ほどの、いかにも優しそうなおばあさんが腰に手を当てて立っていた。


「あなた、お幾つ?」


いきなり、おばあさんに話しかけられ華奈は驚いたが、穏やかな笑みを作って答えた。


「十九です。」


「あらまぁ、お若いのねぇ。まだそんな年でこんな所に来てしまうなんて、可哀想に。」


おばあさんは眉を八の字にして、顔を歪めた。華奈はおばあさんの様子を伺って、おばあさんに聞き返した。


「ここは何処なんですか?可哀想って、私そんなに悲しい顔でもしていましたか?」


おばあさんは、ゆっくりと華奈に歩みよりその場に座るように言って、自分も華奈の隣に座った。

二人は目の前に広がる大河を見ながら語りだした。


「ここはね、三途の川と言ってねぇ、私たち死んだ人がいずれ皆渡らなきゃいけない川なのよ。」

華奈は目を見開いておばあさんを見た。


「死んだ人って…じゃあ、私たち死んでるの?」

おばあさんは悲しそうな目で華奈を見つめた。


「そうよ…。まだ知らなかったのね、ごめんなさいね。」


華奈は、いいえ、大丈夫です。と言い、でも…と付け加えた。


「私、薄々気づいていたので。今まであの森の向こうの花畑にいたんですけど、そこには四季折々の花が一度に見れて…。何だか変だなって思ってたんです、正直。」


「そうなの。」

とおばあさんは、寂しそうに呟いた。


「おばあさんは、いつからここに?」


華奈はおばあさんに聞くと、おばあさんはそうねぇ、と言いながら自分のことを話始めた。


「もう昼と夜を三回繰り返したくらいいるかしら。ここは三途の川で一番深い“深瀬”だから、渡るのが億劫でねぇ。あぁ、そう言えば私の名前を言ってなかったわね。私は節代と言うの。季節の節に、時代の代でときよ。男だったらどこかのグループ名みたいな名前になるところだったの。」

と節代さんは楽しそうに笑った。

けれど、すぐさま顔色は悲しみに影を落とした。節代さんの視線は三途の川に移る。しかし、その目は遥か遠くを見つめている目だった。


「私ね、丁度あなたほどの孫がいてねぇ。死に別れる前に喧嘩しちゃったの。孫はねぇ、それはそれは良くできた子だったんだけど、ある日初めて私と口論になって…なのに変な意地はってお互い仲直りせず、私死んじゃったの。」


そう話した節代さんは、我慢できず目頭を押さえた。華奈は優しく背中をさすった。


「それは悲しいですね…。私もきっと同じ境遇だったら、川なんて渡りたくなくなります。」


「そうね、それもあるわね。だからあなたを見たとき、孫を見ているようで悲しくなったのかもしれないわ。」


節代さんは、でもね、と言いながら華奈の目を見て話した。シワだらけの顔にあるつぶらな瞳は、輝いていた。


「あなたに会ってこうやって話していると、少し元気がもらえたわ。ありがとう。」

そう言って、目尻を拭い微笑んだ。


「華奈ちゃん、あなたは何があったの?私より若いからさぞかし辛いでしょうけど、話してみてくれないかしら。」


華奈は少し黙った、実を言うとあまり生前の記憶がないのだ。でも何故だか花が好きだったのを覚えている。


「ごめんなさい、私あまり自分の記憶がないの。でも、花が好きなことだけは覚えてるわ。だからか自分の名前に華という字があるのが、すごく誇らしくてー…。」


言いかけて、華奈は息を飲んだ。


花瓶に生けられた花、独特の匂いがする和室、そしてー…


「どうしたの?華奈ちゃ…」


「華道だ…」


節代さんが華奈を心配する隣で、華奈は悟った。

「…思い出したわ、私華道家の家に生まれて、私はその家を継ぐことが嫌で…。友達と遊んでるうちに崖から落ちちゃって…ー!」


華奈は泣き出した。自分がした過ちと、何も考えずにしていた行動を振り返り、悲しみに暮れていた。

節代さんは華奈に返すように背中をさすった。


すると、背後から華奈を呼ぶ声がした。若い少女の声だった。


「華奈さん」


振り向くと、あの少女がいた。華奈はぎょっとして、身構えた。節代は華奈の様子を見て、怪訝そうに少女に問いかけた。


「あなた、前の人じゃない。何しに来たの?」


メルは節代を見て、貴女もですか。と溜め息をついた。


華奈は節代さんに「知り合い?」と聞くと、「この子がここに連れてきてくれたの」と答えた。


「私は華奈さんを迎えに来ました。貴女こそ三日も経っているのに、何をなさっているのですか?早くしないと手遅れになりますよ。」

節代は虚を衝かれて黙ってしまった。


すると隣で華奈はそうか、と理解した風な顔をした。

「あなたは私をあの世に連れていくために来たんじゃないの?なら私にはもう用はないはずよ。それに、節代さんはあの世に行こうと決心している最中なのに、そんなに急がなくてもいいんじゃない?」


メルはいいえ、それは違うわ。とすぐに言う。


「貴女はここに来てそう経っていないから言えるのでしょうけど、ここは言わば彼方と此方の世界の中間点。だから不十分な世界に貴女たちが長く居てはいけないの。それに貴女は特に早く帰らなくちゃ、帰れなくなる。まだ、生きているのだから。」


「えっ」「えっ」


華奈と節代は同時に顔を見合わせた。


「そ、それは、本当なの…?」

華奈は固まって口が思うように動かなかった。


「本当よ。私の仕事は死者を送るだけじゃない。さ迷う貴女のような生者も送り届けなければならないの。生きている人は、長くいるとそれこそ死者に近づいて結局死んでしまう。逆に死者の場合、長くいると生きていた時の未練が残って、悪霊になるケースがほとんどなの。だから、二人とも急がないと…」


メルが言いかけると、節代は華奈の背中を押した。


「っ!節代さん?」


華奈は驚いて節代を見る。


「華奈ちゃん、生きているのなら尚更、早く帰りなさい。ここに居てはあなた、死んじゃうわ。」


華奈はでも、と言うが節代は華奈のポンポンと肩を叩いた。


「私は大丈夫よぉ。この川ちゃんと渡ってみせるから、華奈ちゃんも戻ったらうまくやるのよ!お互いに約束しましょ?」


そして節代は小指を華奈の目の前に立ててみせた。指切りのポーズだ。


華奈はわかったと言うように頷き、節代が差し出した小指に自分の小指を絡めた。


そして指切りの儀式が終わった後、節代は川の中へ進んでいった。

メルは華奈の手を引っ張り、急ぐ合図をした。

華奈はメルに引っ張られながらも、節代の小さな姿が川にゆっくり沈んで行くのを見えなくなるまで見続けていたーーー。



気が付くといつの間にか森を抜け、花畑に出ていた。


花畑の住人たちは物陰からこちらの様子を伺っていた。

すると、一人がメルに向かって「やーい、死神!」と指差した。小学生くらいの男の子だった。

メルはそんなことは気にもせず、どんどん進んで行く。

華奈はその様子を不思議そうにした。


「何か言い返さないの?」


メルは静かに口を開く。


「こんなことで怒ったって、今度連れていかなきゃいけないときに余計手間がかかるから。」


と大人っぽく言い払った。


「見た目によらず、大人みたいなこと言うのね。」


と言って、華奈は笑った。


「見た目によらずは、一言余計。」


とメルは真顔で、けれど少し微笑んだように見えた。




花畑を大分歩いて、二人は駅についた。

駅の看板には“お花畑”という駅名が書いてある。


駅には青と白のツートーンカラーの電車が止まっていた。


すると駅のプラットホームの奥から走って来る、一匹の猫が見えた。全身は黒いが足先だけ、白い靴下を履いたような柄の猫だった。何故か首輪ではなく藍色のスカーフを洒落こいて巻いていた。


「メル~!遅いよ!」


華奈は目を見開いた。走り来た猫から声が発せられたからだ。


「なっな、ね猫が、しゃべったぁ?!」


驚愕している華奈をよそに、メルは平然として猫に話しかける。


「申し訳ないけれど、それはこの子に言う台詞。私を責めてどうするの。」


華奈は自分がバカにされているのを知っていたが、開いた口が塞がらず、怒り出せなかった。


「残念だけど、僕はメル以外の女性に怒ることはしないのさ♪」


猫は十歳ほどの、まだ声変わりしていない少年のような声で、おじさん臭い言葉を並べた。ビードロ玉のような透き通った水色の目が、キラリと光る。


メルはもういいわ、と呆れた口調で黒猫をあしらったあと、華奈に向き直る。


「それより出発しないと。早く電車出して、ルアー」


「わかったよっ」

と渋々ルアーと呼ばれた黒猫は運転席へ走っていく。


華奈はメルに促されて、電車に乗った。

すぐにアナウンスがなる。


『只今より、回送致します。

ドアが閉まりますので、お気をつけください。』


華奈はドアが閉まる前に振り返った。花畑から香る花の匂いがした。


やがてドアがプシューという音を立てて閉まり、電車が走り出した。


駅から離れると、花畑が見えた。

よく見ると、花畑の住人たちが手を振っているのが見えた。

メルに罵声を浴びせた男の子は、無理やり住人の一人に手を持たれてブラブラ振っていた。


しばらくすると、花畑は見えなくなり、昼間のどこかの街並みになってしまったーーー。




「華奈さん起きて。」


回送が終わったのか、眠っていた華奈は叩き起こされた。と言っても、メルは声を大きくしたり、荒げたりはしなかったが。


「…ここ、どこぉ?」


眠そうに目を擦る華奈にメルは言う。


「またのご利用、お待ちしております。」


そして、華奈をドアまで連れていくと思い切り華奈の背中をつき押した。

「わっ!」


と叫んで、華奈は目をつぶったまま意識を失ったーーー。




ーサワサワサワサワ…


なんだろう…どこかで聞いたことのある音がする。


「…っあ!そうだ!」


華奈は叫びながら飛び起きた。


すると周りにいた人たちが驚いていた。


病院の病室らしい部屋に多くの人たちが、華奈を囲んでいた。


華奈は周りの人たちと同じように目を丸くした。


「あれ…?私一体…」


すると周りにいた人の中の一人が華奈に泣きついた。


「かなぁっ!よかった、よかった!」


華奈は訳がわからず、抱きついている人の顔を見た。母だった。

「母さん、どうしたの?それにみんなして」


周りの人たちも嘘だろ、と驚きを隠せないようだった。母と同じように泣き出している人もいた。


泣きじゃくっている母に代わって、華奈の姉・優香が話した。


「華奈、あんた一ヶ月も昏睡状態で、今さっき急に容態が変わって、心肺停止になってたのよ。」


それが息を吹き返して急に飛び起きたものだから、もう死の間際を見届けるために集まった人たちが驚かないわけないじゃない。と姉は付け加えた。

華奈は心配をかけてしまった人々を見回した。

すると、人々の中に見覚えのある顔があった。華奈は、あっ!と言ってその人に話しかける。


「あなたは、節代さん?」


話しかけられた女性は、一瞬固まったが華奈の問いに首を振った。


「いいえ、違います。」


華奈はその女性をよく見ると、節代さんより若く違う人物だということに気づいた。しかし、その女性が次に発した言葉に華奈は耳を疑う。


「あ、でも私の祖母が節代です。祖母は先日なくなりましたが…」


「…あなたはなぜここに?」華奈は恐る恐る彼女に聞いた。


「え、あぁそうですね。華奈さんが眠っている間に井口家の家政婦に来たものですから。私の祖母も昔、井口家に家政婦として来ていたんですよ。確か華奈さんが五歳くらいの時までいたと思うのですが…」

その時、華奈は幼い頃のことを思い出した。


三途の川で会ったときは、もう年老いていて見た目はすっかり変わっていたし、下の名前も知らなかったので、節代さんが昔の家政婦の七瀬さんだとは全く気づかなかった。

小さい頃にも母からの厳しい稽古が嫌になり、家を飛び出したとき、家政婦の七瀬さんーつまり節代さんが私を慰めてくれたことがあった。その時、花が嫌いになっていた私に綺麗な花畑に連れていってくれたことがあった。


「私、祖母が亡くなる前に喧嘩したんですが、亡くなって祖母の机の引き出しに華奈さんの写真を見つけてー…それで、祖母に謝罪と言ったら甘ったれですけれど、井口家の家政婦をしたいと思ったんです。」


華奈の目は涙を留める事ができなくなり、頬をつたっていった。


「皆、ありがとうー…。」


病室の窓際から風に揺られる木漏れ日が、楽しそうに揺らいでいたーーー。




ー回送を終えた電車が、また走り出していた。



『メルー、久しぶりに肩の凝った仕事だったねぇ。』

アナウンス越しにルアーが話す。


「また、アナウンス越しにー…、はぁ、もう色々疲れちゃった。」

メルは目をつぶり、また深いため息をついた。


『あー、そんなに溜め息つくと幸せが逃げますよー』

とふざけたように、ルアーがアナウンスした。メルはぽつりと一言、


「溜め息する人ほど頭がいいんだよ」


メルは静かに言ったつもりだが、耳のいい猫には全部聞こえていた。


『えっ!メル、いつからそんな蘊蓄(うんちく)言うようになったの!?』


ご近所のおばさんみたいに、キャーキャー喚くルアーの声を無視するように耳を塞いだ。


「まぁ、よくしゃべる猫さんだこと。」


メルの隣でケタケタ笑うおばあさんの姿があった。


「節代さん、笑わないでください。あいつ調子乗るので。」メルは真顔のままだが、眉間にシワを少し寄せた。


節代は少し透けていて、周りにも何人か似たような人がうっすらと現れていた。


「ごめんなさいね、あまりにもおかしくって。あっ、それよりありがとねぇ。華奈ちゃんが戻らなくて心配してたら、死んだ直後にあなたに会えて、よかったわ。」


メルは、いいんです。と一言返して、


「あんな“深瀬”に行くというご覚悟は素晴らしかったです。」


と節代のことを感嘆した。


節代は

「自分で言うのもあれだけど、私もなかなか演技が上手いから、次生まれ変わるときは役者にでもなろうかしら。」

と冗談混じりに、でも嬉しそうに笑った。


いつの間にか(二人の会話を聞いて)静かになったルアーが、アナウンスをした。


『次はー、橋駅ー、橋駅です。』


「たまには、人間も悪くないわね。」


「?何か言った?メルさん」

節代は不思議そうにメルを見た。メルは黙ったまま首を横に振った。


電車は先の見えないレールを走っていく。永遠に回り続ける輪廻のレールに乗ってーーー。



ーーーー第二話ENDーーーー

お疲れ様でした!今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました!


今回は、前回と比べて複雑な物語になってしまいました(汗)


けれど、書きたい物語になって来た気がします。

しかし、ちょっとメルが意地悪というかなんというか…冷酷な少女みたいになってきちゃいましたが、正直もう少し優しい子にしたかったので、自分で書いてて焦りました(笑)その代わり、ルアーという何とも小憎たらしい、けれど憎めないキャラを登場させたことで、メルが普通は見せない一面が書けた、かな…?(自信ないw)と思います。ルアーは一言で言うと、ユーモラスですよねぇー(笑)


まだまだ、メルと今回わかった運転手のしゃべる猫・ルアーの謎は深まるばかりですが、何となくこんなやつらなんじゃないかな~と推理して、楽しんでいたたければ幸いです。


今回はネタバレは無しにします。

あ、ただ、今回登場した節代さんは、最後に電車が向かっていた三途の川の一つである“橋”を渡って、天国に行ったことだけお伝えします。


ここで一話の後書きに、「乗ることはできても、降りることはできない」と言ってしまいましたが、あれは生き返る人のみの話です。死んでしまう人、死んだ人はいろんなところを行き来可能です(笑)


節代さんは華奈ちゃんに一歩踏み出してほしくて、渡らなくてもいい“深瀬”をわざと渡ったんですね。


彼女はきっと、天国から華奈ちゃんと孫を見守っているでしょうね。



では、また三話目で会いましょう!



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