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飛べない飛行機が作った未来。  作者: 杏月 要
夢は覚めれても、現実は変わらない。
8/21

4

事が起きたのは、6月中旬に入った頃。

放課後先生に仕事を頼まれて遅くなってしまった。

時間は6時30分過ぎ。

完全下校時刻ギリギリまで仕事を手伝っていたため、先生にはかなり頭を下げられたが、大丈夫だと言って帰路を急いでいるところだ。

いくら夏といえど、外いつもより薄暗くなっていて、多分薫は今頃家にいる頃だろう。

でも周りを見れば同じ学校の生徒や、他校の生徒達がたくさんいた。

少し歩けばここら辺には遊ぶ場所が沢山あるから、そこでこれから遊ぶのだろう。

急ぎ足で帰っていると、俯いていたせいか、誰かに当たってしまった。

「……っ」

数歩後ろに下がって顔を上げると、他校の生徒らしき男子が3人横並びに歩いているところだった。

その真ん中の人に当たってしまい、向こうも最初は驚いた顔をしていた。

「す、すみません……」

いくら他人と話すのが嫌いとはいえ、自分からぶつかってしまったのだから最低限謝ろうと声を絞り出すと、真ん中の人が顔を覗き込んできた。

「びっくりした、でもよく見ると可愛いね」

ナンパなのか、と怪訝な顔で彼を見ると、3人は何か話して私の腕を掴んだ。

「せっかく近くにゲーセンとかあるし、これも何かの縁だから遊びに行かない?」

ぐいっ、と引っ張られて頭で理解するよりも先に体が引っ張られてしまう。

力で反抗しようとしてもうまく手をはらうことができなくて、ドクン、と胸が嫌な鼓動を立てる。

「は、放してください……」

3人にうまく囲まれてしまって、完全に逃げられなくなってしまった。

どうしようかと、辺りを見回した。

「少し遊んでくれるだけでいいからさー。付き合ってよ」

ニヤニヤと笑う顔が私の心に恐怖を植え付ける。

何とかして逃げなくちゃ、と思い私は彼の腕を力いっぱいにつねる。

「いたっ!?」

男子が私の腕を放した瞬間、精一杯彼らから離れるように走った。

後ろを見る勇気もなくて、ただ遠くに逃げようと走る。

足が震えて、うまく走れない。

息が切れる。

怖い。





どれくらい走ったかわからない。

近場の公園まで走って、初めて彼らが追いかけてきていないことに気付いた。

もう時間は7時をまわっていて、公園にはほとんど人がいなかった。

いるとしても、ランニングをしている人や、犬との散歩をしている人ぐらいだった。

家からは遠ざかってしまって、帰るには歩いて15分はかかりそうだった。

連絡くらい入れようかと思ったが、そこまで心配されていないだろうと思い、連絡をするのはやめた。

息を整えるためにベンチに座り、汗をぬぐった。

夏が近付いているからよけいに汗が止まらなかった。

洋服をパタパタとして風をなんとか受けるも、生ぬるくて全然気持ち良くない。

さっきの出来事で深くため息をつく。

うつむいて放心状態になっていると、どこからか声が聞こえる。


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