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飛べない飛行機が作った未来。  作者: 杏月 要
夢は覚めれても、現実は変わらない。
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2

家に着くのは私が一番早い。

兄夫婦は共働きだから、夜の8時くらいにいつも帰ってくる。

薫は、バスケ部だから部活動が終わったら帰ってくる。

バスケ部は部活動に力を入れているところだから、いつも帰ってくるのは下校時刻ギリギリだ。

六月である今の完全下校時刻は6時なので、家に帰ってくるのはいつも6時20分くらいなのである。

今の時間は5時30分前。雨が降っていて帰るのが少し遅くなってしまった。


薄暗い室内。誰かがいた痕跡はあるものの、実際には自分しかいない家。

最初は、こんな孤独感を味わう度に両親のことを思い出していた。

お母さんはいつも家にいて、私が帰ってくると笑顔で“おかえり”と言ってくれる。

その笑顔につられて、学校でどんなことがあっても私も笑顔になることが出来たのだ。

自分の部屋があるにもかかわらず、リビングで宿題をやってお母さんにおやつを貰う。

そんなのが日常となっていた。

問題があっていればお母さんはたくさん褒めてくれるし、初めてテストで100点をとった時は泣きそうなほど喜んでくれた。

それから、私はお母さんの笑顔が見たくて一生懸命勉強したのだ。

ほぼ毎回100点をとれるようになってからもお母さんの喜びは絶えなかった。

“また頑張ったね”“お母さん嬉しいな”

同じような言葉でも、私は嬉しかった。

お母さんを喜ばせることが出来て、私も成績が良くなって。


晩ご飯前にいつもお父さんが帰ってくる。

お父さんとお母さんと、私。

最初は一人っ子が嫌だったけど、その分両親は私にたくさんの愛情を注いでくれた。

3人で毎日を過ごせるのが幸せだった。

こんな毎日が崩れるなんて思いもしなかった。





こんなの、私が望んだことじゃない。

飛行機が墜落して、両親が亡くなるなんて望んでない。

兄夫婦の家に住まわせてもらって、こんな生活をするのは望んだことじゃない。

今まで通り、本当のお母さんとお父さんと一緒に暮らしたかっただけなのに。

こんなことになるはずじゃなかった。

高校生になって、“制服似合ってるよ”って両親に言ってもらいたかった。

“大きくなったね”って言って欲しかった。


なんで私は両親を失ったんだろう。

なんで両親はあの飛行機に乗ってしまったんだろう。

なんで……私たちの未来は壊されてしまったんだろう。


「……っ」

久しぶりに、こんなことを考えた。

いつも何も考えることなく、この家で生活していたのに。

また辛いことを思い出してしまった。

あぁ、涙が出る前に忘れてしまおう。



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