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飛べない飛行機が作った未来。  作者: 杏月 要
変えられた未来。
4/21

4

私は、父方の兄夫婦の元で引き取ってもらうことになった。

兄夫婦なので名字を変えることもなく、ただ少し遠くに転校するだけだった。

そして兄夫婦には一人息子がいた。

朝日奈薫。14歳。

私の1つ上の兄という立場になり、同じ学校に通うことになった。

薫は私のことをとても気にかけてくれた。

良くいえば面倒見がいい、悪くいえばおせっかいだ。

私にとっては、どちらかというと悪いふうにしか捉えられなかった。

かまって欲しい訳では無い。ただ、普通に生活ができればそれでいい。


そんなふうに思っていたせいか、新しい家族は、少し居心地が悪かった。

私のことをかなり気にかけてくれる人達。もちろん嬉しいけれど、私はただご飯を作ってくれて、寝床を与えてくれる人さえいればよかった。

ここに、温かみを求めに来たのではない。

温かみなんて、そんなものがあるから裏切られた時に痛むんだ。

最初から期待なんてしていなければ、温かみなんてものを与えられていなければ、人を信じないし、裏切られても何も感じない。


暗い性格なら、人は寄ってこない。

暗い性格なら、人に期待されることもない。

暗い性格なら、誰にも気にかけられることはない。


一人がいい。一人になりたい。


そんなことばかりを考えていて、私は学校以外の時は部屋にこもるようになった。

薫や兄夫婦は私のことをとても心配していた。

ご飯の時だけ降りてくる私に、“何か欲しいものはある?”“何かして欲しいことはある?”などと、とにかく質問攻めだった。

ただ暮らせる家があればいい、そう思っている私は3人を突き放して、よけいに部屋にこもるようになった。

こんなことになるなら、いっそのこと私もあのときの飛行機に乗ればよかった。

そしたら、一緒に死ねて、今頃天国で楽しく過ごせているに違いない。

私も一緒に連れてって欲しかった。夫婦水入らずなんて、そんなの余計なお世話だったのだ。

お母さんとお父さんと、どんな場所であれ一緒に生活できればよかった。

毎日笑顔が絶えなければ、自分が死んだなんて出来事忘れられるかもしれない。

一緒にいたい、笑いたい、話したい……会いたい。


この怒りのやり場はどこへ向ければいいのだろうか。

誰が悪いという訳では無い。私の身の回りの人が悪いんじゃない。

だったら、その人に当たるのはおかしい。

いくら暗くなった私の脳でも、それくらいのことは考えられた。

……じゃあ誰が悪い?誰が両親を殺したの?

……それは、飛行機だ。操縦士だ。

まだ完全に操縦士のせいと決まったわけではなかったけれど、ほぼ確実だとニュースでも言っていた。

あの飛行機を操縦するのがあの人でなければ、両親は助かったのかもしれない。

今頃明るい生活をして、毎日が楽しかったに違いない。

全ては飛行機のせいだ。

飛行機が、私達の未来を壊したんだ。

飛行機なんて要らない。人が死ぬものなんて要らない。


……両親を、返して。



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