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その日の帰り道、当番の日だけはかんなと二人で帰っている。
帰ると言っても、かんながついてくるだけで会話もかんなの一方的なペースである。
駅前に新しいパフェ店が出来たとか、可愛く撮れるプリ機が入ったなどの私とは無縁の話ばかり。
一緒に行こう、と誘うわけでもなく、正直何で私にそのような話ばかりをするのかと思っている。
今回もそのような話ばかりだったのだが、いつもとはまた違うような会話が入った。
「そういえば、遼くん来てたけど突き指大丈夫かな?」
視線を一瞬だけかんなに向けて、また前を向き直した。
「遼くんってね、バスケ部でもうエース候補って言われてるらしいよ。小学校からバスケ一筋だったとか聞いたことあるんだよね」
「……詳しいね」
無意識に、口からポツリと出た言葉。
自分でも無視をしようかと考えていたところだったから、少し驚いてしまった。
かんなも珍しく返事をされたことに気分が上がったのか、ニヤニヤと笑って話し続けた。
「学力もそこそこ高いらしいし、既にもう10回以上は告白されてるんじゃないかって噂!」
それこそ、どうでも良かった。
彼の学力が高かろうが、何回告白されていようが私には関係ない。
その事で私に何か起こるというわけではなさそうだし。
「彼女は作らないらしいけど、何か理由があるのかな?」
「……」
そんなこと、本人に聞くいがいに答えがあるというのだろうか。
自分達で勝手に推測してそれこそ本人にとっては迷惑なのではないか。
理由があってもなくても、そういうことには首を突っ込まない方がいい気がする。
……なんて、私にはどうでもいいのだけれど。
「はるちゃんは、好きな人とかいないの?」
急に尋ねられたその質問に、動揺をせざるを得なかった。
ここからどうしてその質問にたどり着くのだろうか。
この流れからしてきっと彼の名前を出して欲しいのだろうけど、好きな人なんて私には皆無である。
首を横に振ると、かんなは苦笑した。
「やっぱりいないかぁ。遼くんとかドキッと来ない?」
何を言うのかと少し呆れた目で睨むと、かんなはおろおろとして笑った。
「ごめんごめん、冗談だよ。……実はさ、私…遼くんに告白したことあるんだよね」
その衝撃的な発言に、何も言わなかったが、心では動揺していた。
少し頬を赤らめて恥ずかしそうに言う姿は嘘だとは思えない。
何でそんな大事なことを私なんかに話すのだろうか。
「小学校から遼くんとは仲が良くてね、中学生になった時に勇気出して告白したの。……だけど、振られちゃったんだよね……」
何てリアクションをすれば良いのか迷ったけ結果、何も言わなかった。
まだ引きずっているようにも見えないし、私になぐさめて欲しいというような感じでもなかった。
「もう、友達として好きって気持ちに変わったけどね」
その笑顔は本当の笑顔なのか、私は疑ってしまった。