別れと再会
なんか、違う方向へと進んでる気がします・・・(苦笑)
復讐は、成功した。
筈だった・・・
芸能界という荒波に揉まれ・・成功した俺。本当の気持ちを知ったうえで、彼女を失意のどん底に突き落とす。
それは過去に、俺が受けた傷・・・。同じ方法で、俺は復讐を企て、成功した・・。
なのに・・・
どうして・・・
こんなにも胸が、痛いんだ・・・。
走り去った椿を引き止める事が出来なかった・・・。それを悔いている自分に、苛立ちが募る・・・。
消したかった過去・・・消せなかった・・・『想い』。
まだ俺は・・・
椿の事が、好きなのか・・・
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目を覚ました私の視界に入って来たのは、見覚えのある天井・・・。
そこは・・・
私の部屋・・・
「っつ・・・」
まだ、お酒が私の頭の中で、主張している・・・。酔って、走って・・・泣いて・・・。終わってしまった、私の初恋・・・。悔いがないというのは、嘘になる。
でも、廉をあんなにまで変えたのは、私・・・
「ごめん・・・」
もう、泣かない・・・
だって私は・・・
素直な気持ちを、伝える事が出来たから・・・。
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三ヶ月後−−−−
コートを必要とする季節が近づいて、秋は終わりを迎えている・・・。
そう−−冬がもう・・・すぐそこまで来ている。
「黒野君、この書類を会議用に人数分コピーしてくれ!」
「はい」
冬が近付くと、仕事も増える・・・。それは、出版会社では当たり前の事。特に、地元情報誌を扱ううちの会社は、他社より速く色々なイベントに目を付ける。今回は、特に忙しい。
恋人達の一大イベント
そう・・・
クリスマスだ
といっても、表紙を飾るタレント、もしくはイケメン・美女の写真すら見つかっていないんだが・・・。
「ダメ元で、頼んでみるか・・・」
「誰にですか?」
ぼやく編集長に、何気なく訪ねる・・・。返って来た言葉は・・・
「黒宮廉」
は?今、なんて・・・
「冗談でしょう?」
「いや、ちょっと電話してみるか・・・」
ちょっ、ちょっと待って!!
「あ、もしもし?将ちゃん!?お願いがあるんだけど・・・・」
一通りの会話を済ませ、編集長は、電話を切った。
「ふぅ・・・決まったよ!!」
「えぇ〜っ!?ホントですか!?」
同期入社の恵理が、思わず声を上げる。今でも廉は、テレビ・雑誌などのメディアには欠かせない人物。業界では、彼を一面に載せた新聞や雑誌の表紙で、売上が二倍にも、三倍にもなるという。
「撮影は、どこでやるんですか?」
「二日後に、ここのスタジオである。後、インタビューは、このフロアの応接室でやるつもりだ」
「っていうことは・・・黒宮廉に会えるっ!!!?」
「まぁ、そうだな」
「でも編集長、よくOKしてくれましたね?」
「あぁ、あそこのプロダクションの社長と俺は、同級生だからな」
サラっと凄いことを言ってのける編集長だったが、このフロアにいる全員が、話を流す・・・。少し、かわいそうだなぁ。
「椿、あの黒宮廉がここに来るんだよ!!」
「あぁ・・・うん・・・」
「嬉しくないの?」
「あ、うれしいよ!!」
無理に作った笑顔・・・。ホントはもう、忘れなきゃいけないのに・・・。
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二日後−−
「失礼します。今日はよろしくお願いします!」
廉が、やって来た。レザーのロングコートを羽織り、いつの間につけたのか、黒曜石のピアスが妖しく光っている。少し見てない間に、痩せた・・・かな?
「編集長の岩瀬です・・・こちらは、編集部の・・・」
「椿・・・」
「お久しぶりです」
「知り合いだったんですか?」
不思議そうに表情を崩す編集長に、廉は『幼馴染み』ですと、あっさり言ってのける・・・。今この場に恵理がいなくてよかった!!
「まずは、表紙に載せる被写体からでよろしいですか?」
「もちろんです。よろしくお願いします」
私に声をかける訳でもなく、ただ私の隣を並んで歩く。
こんなに近くにいるのに・・・遠い存在・・・。
バッカだなぁ、私・・・
まだ廉の事が・・・
好きなんだ・・・。