復讐
今回は、短いです
復讐・・・彼はそう言った。
「簡単だったよ。少し優しくすれば、のこのこここまで着いて来て・・・」
「違っ・・・!!」
「お前も他の女と変わらない・・・俺が俳優になった途端、目の色を変えて近付いて・・・」
「私は本当に、廉の事が好きだった・・・廉を傷つけて、あんな最悪な別れかたして・・・」
「もう、昔の話しなんかどうだっていいんだよっ!!!」
彼の怒号が、店内に響き渡り、その後・・・静寂が訪れる・・・。
「俺は目的を済ませた・・・もう、お前に会う必要もない・・・否、会う事もないだろう」
「目的・・・」
「あの時馬鹿にしたような言い方で、俺を見下したお前の目・・・俺は忘れていない」
「違っ!!私は謝るつもりだったよ!!謝って、本当の気持ちを伝えるつもりだったっ!!!!」
「もう・・・帰れよ。言い訳なんか、聞きたくない」
「廉・・・」
「帰れっ!!!・・・もう、俺は忘れる・・・」
「廉が忘れても、私はずっと忘れない。ずっと好きだった!!!」
「そんな言葉で、俺を掻き回すなよ・・・」
苦しみにも似た、沈痛な顔・・・。私が彼を、ここまで追い詰めていたんだ・・・。
「マスター、支払いを・・・」
「待って!!」
帰る気配のない私を見て、彼は素早く会計を済ませ、ドアに手をかけた。呼び止める私の声を無視して、足早に外に出る・・・。
「廉っ!!」
呼んでも呼んでも、振り返ろうとはせず、どんどん遠くなっていく・・・。
このままではいけない!
本能が私の身体を動かした
レン・れん・廉っ!!・・・
「待って!!」
なおも歩き続ける廉の腕を掴み、振り返った廉の顔目掛け・・・。
バシィ・・・ッ!!!!!!
無意識のうちに放った、平手・・・。外灯の下、廉の頬が赤みを帯びてゆく・・・。
「私が悪いのはわかってる!!謝んなきゃいけないのだって、わかってるよ・・・っ・・でも、嫌だよ・・・っく、嫌・・離したくない・・・よぉ」
「・・・なんで、泣くんだよ・・」
掴んだ腕を振りほどくような事をせず、廉は呟く・・・・。
「私は・・っく、廉・・・を、っ・・・裏切った訳・・・じゃない・・よぉ・・・」
「何が言いたいんだよっ!!」
「本当・・は、照れ・・・っ・・臭くて・・・っうぅ、素直・・に・・・なれ・・なくて・・・」
もう、廉は何も言わなくなった・・・。ただ黙って、私の言葉を聞いてくれている。
「うれし・・かっ・・・た・・だから、入学式の・・・時に・・好きっ・・・て・・言う・・つもり・・・だった!!」
「・・・・・」
「傷・・ついた・・・のは・・廉・・・だけ・・じゃ・・・ない!!・・・私・・だって・・・辛・・かった・・・」
「・・・椿・・」
「いきなり・・好き・・・な・・人・・・が、いなく・・なった、私の気持ち・・・なんて・・あんたにわかる訳・・ないっ!!」
気が付くと、私は走り出していた・・・。呆然と立ち尽くす、廉の顔なんて・・・見ないまま。
さよなら・・・
私の好きな人・・・
そして・・・
好きだった・・・人・・。