再会・・・
椿目線で書いたものです。今作以降は、椿目線でストーリーを進めて行きます。相変わらずの拙い文章ですが、一生懸命頑張りマス!!
第一話
「椿、俺は、幼馴染みから、一歩先へ進みたい・・・だから、俺と付き合って下さい!!」
「はぁ!?なんで私があんたとなんか付き合わなきゃいけないの!?バッカじゃない?」
・・・
それは、今から五年前の出来事・・・。
2008年−八月
今、私の前にいるのは・・・紛れも無い、黒宮廉。私の初恋・・・そして、今なお想い続けている相手・・・。物心ついたときからいつも私の側に居てくれた。幼稚園・小・中・高校・・・そして、本当なら大学も、一緒だった。
でも・・・
大学入学式、廉はいなかった・・・。
嫌な予感が、私の胸を締め付けた・・・。
「廉は、東京へ行ったわ」
突き付けられた現実・・・。嫌な予感は、的中した。
言いようの無い喪失感・・・あの時、素直になっていれば・・・。
後悔・・・
行き場を失った想いと、今なお締め付ける罪悪感・・・。
浮かない気持ちで出席したクラス会・・・奇跡は起きた!!
遅れてきた私の目に飛び込んできた、一人の男。当時と変わらない爽やかな笑顔が、私の鼓動を速くする。
「廉・・・!!」
「・・・椿」
一瞬、廉の笑みは消えた・・・そんな気がした。でも、まるで昔の事なんて何もなかったかのように、当時と変わらぬ笑顔で接してくれた。
嬉しかった。少しだけ、胸を締め付ける罪悪感が、拭えた気がした。
「元気だったか?」
「当然!あんたなんかいなくても、全然現実だったよ!」
嘘だ。また、心にも無い事を言ってしまった・・・。素直になるって心に決めたばかりなのに・・・。
「変わんないな、そういう所」
「何、もしかしてまだ、私の事が好きなわけ?」
きっと、この先の事はわかっている。『んなわけねぇだろ』だ。
「今でも好きだけど?」
「え・・・ええぇぇぇっ!!?」
嘘でしょ!?え、ホントに!?ど、どうしよ!!!?突然言われてテンパってる。しかも大きな声を出したせいで、みんながこっちを見てる!!は、恥ずかしいぃ・・・。
「ホ、ホントに?」
「うん」
お願い、そんな照れた顔しないで!!や、ヤバイ・・・反則だょ・・・。そんな事言われたら、本気にしちゃうじゃん!!
今なら・・・
言えるかもしれない。
『好き』の一言を・・・
「ね、ねぇ、廉・・・」
「ん、どうした?」
「・・・わ、私・・・」
『えー、クラス会も盛り上がって参りましたが、お借りしてるホールを使用する時間も残り少ないので・・・』
言いかけた私の言葉を遮って、幹事を勤めていた元クラス長の大杉がホールに響く・・・。
「椿、お前はどうする?」
「あ、え?何が?」
「ハァ・・・聞いてなかったのか?これから二次会」
「あ、廉はどうする?」
「俺?俺は行かない。ちょっと近くのバーで少し飲んで帰る。・・・来るか?」
「いいの?」
突然の誘い・・・久しぶりに積もる話しをしたくて、二つ返事で廉と一緒にバーまで歩く。会話は無かった・・・でも、二人で歩く時間は、凄く優しくて、温かい・・・。
ついて行った先には、こぢんまりとした小さなバー。ドアを開けると、狭いながらもオシャレな雰囲気。店内はマスターらしき人以外は誰もおらず、ほとんど貸し切り状態だった。
「・・・そんな事もあったなぁ」
「・・・なんか懐かしいね、前は二人で遊んだりしてさ・・・」
昔話に花を咲かせ、当時の思い出を頭に浮かべながら、カクテルを口に含む。
「それが今では俳優だもん・・・ホントにびっくりしてるわよ!!」
「ハハッ・・・俺自身、その事を驚いてるけどね」
照れ臭そうに頬を指でかく仕草も、変わっていない。
「あのさ・・・」
「ん?」
「私・・・本当は、廉の告白を聞いた時、凄く嬉しかった・・・でも、照れ隠しで廉を馬鹿にして、傷つけて・・・。大学入学式の時に、謝って、私の本当の気持ち・・・伝える筈だった」
「・・・・」
「東京に行ったって聞いて、後悔した。ずっと廉の事が好きだったのに、あんな事言って・・・苦しかった、辛かった。いつも私の側に居てくれた廉が居なくなって、本当に寂しかった」
「・・・なんで俺が五年間も、熊本に戻って来なかったか、わかるか?」
「・・・ううん」
ゆっくりと口を開く廉の視線は、どこか遠くを見つめ・・・。
「それは、一人の女に対する報復めいた好奇心ってやつさ・・・」
「どういう事?」
「簡単さ・・・椿にフラれた俺は、傷心旅行のつもりで東京ヘ行き、そこでスカウトされた。・・・これも一つの運命だと思った。俺は、世間に認められる俳優になる・・・そして、再び椿に会うと決めていたんだ」
嬉しかった。今なお想い続けてくれる廉に、私の鼓動は一層、速くなる・・・。でも、次の言葉が、私をどん底に突き落とす・・・。
「今の俺を支えてくれたのは、椿ヘの想いじゃない・・・そんなものは、五年前に卒業と同時に捨てた。俺を支えていたものは、お前ヘの、復讐だ!!」