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TOKYOダンジョン  作者: 佐世 保
秋葉原サバイバル
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3月25日 (3) 魔法が使えたら、最強でしょ

「朝はおにぎりに味噌汁、昼はペスカトーレ。いやーこんな時でも美味しい食事を頂けるなんて、あたしは幸せモンだね」

「料理人は偉大~」


 キッチンの中から、イタリアンの女性オーナーシェフである島津シェフが二人に声をかけた。


「夜はデザートにジェラートも出すからね」

「島津さん愛してる!」


 カオルとアユは昼食を食べ終え、アイスティーを飲んでいた。ジェラートに魅了チャームされたカオルは、島津シェフに愛を告白していた。

 島津シェフはキッチンの中から、苦笑しつつも手を振って応えてくれた。


 そこに涼子が昼食をとりに降りてきた。


「涼子~こっちこっち~」


 アユが涼子を手招きした。


「二人とも、もう食べ終わったの?」

「幸せの余韻に浸ってるところだね」


 涼子は二人がいるテーブルについた。


「アユ、弓の試作品ができたそうね」

「うん、この後試射する~。他にも色々作った~」

「え、そうなの」


 涼子はカオルを見た。


「うん!アユは凄いよ、まずは魔槍ゲイボルグ……」

「鉄パイプの槍~」

「神の戦棍、メイス・オブ・ゼウ……」

「鉄パイプに建物の金具を付けただけ~」

「偉大なる狙撃の王も使った、黒カブ……」

「パチンコ。スリングショットとも言うよ~」

「アユは凄いわね」


 涼子は素直に感心する。一方、カオルは項垂れた。


「アユアユは容赦無いし……」

「よしよし」


 項垂れたカオルの頭をアユが撫でた。

 涼子の前にペスカトーレ、サラダ、アイスティーが運ばれてきた。


「美味しそう」

「絶品だよ!」

「うまうま~」


 涼子が昼食を堪能していると、阿部が顔をのぞかせた。


「アユちゃん、そろそろ試射を始めたいって滝本さんが言ってるよ」

「は~い」


 アユが席を立つ。

 カオルもついて行こうとしたが、涼子が呼び止めた。


「カオル、ちょっと話があるの」

「アイマム、アユアユ先に行ってて」

「わかった~」


 アユは手を振って、阿部と一緒に地下一階に向かった。


「で、話しって?」


 涼子が昼食を食べ終えるのを待ってカオルは話を促した。


「……カオルって、その、いわゆる中二病よね」

「がーん、まさかの告発!」

「あ、ごめんなさい!えーと、イマジネーションが豊かよね」

「はい。ナイスなフォローかたじけない」

「それでね、武器が揃ってきたのもいいんだけど、何か足りないと思わない?」


 カオルは首をかしげた。


「何かって……何?」

「えーと……魔法、とか……」

「……」

「……」

「何ですとー!」

「ち、ちょっと。声が大きいよ」


 店内にいた全員がカオルたちを見ていた。

 思わず立ち上がったカオルは慌てて椅子に座った。二人は声をひそめて話を続けた。


「ゴブリンやオークなんてファンタジーの世界の魔物がいるのよ、魔法があってもおかしくないと思わない?」

「確かに」

「だからさ、練習してみない?」

「おおっ、修業ですか。でも、あたし呪文とか知らないよ?必殺技の名前ならいくつでも言えるけど」


 カオルが中二病を発揮するが、涼子は首を横に振った。


「魔法に大事なのは具体的なイメージ…イマジネーションよ」

「そうなの?」

「ラノベによくある設定ね。詠唱は補助強化するものだって」

「うーん微妙に納得できない」


 今度はカオルが首を振った。


「でもさ、カオルが魔法を使えたら……」

「使えたら?」

「最強でしょ」

「キターッ!カオルちゃん無双キターッ!」


 カオルが大きな声を出してしまい、また店内の視線が集まった。二人は他の人達に平身低頭謝り、再び声をひそめる。


「練習してみる?」

「するする、修業するよー。あたし超電磁砲的なやつがいい!」

「あれは魔法じゃなくて超能力でしょ」

「きっと大丈夫、なんとかなるよっ!」

「そうね、じゃあ夜に地下駐車場で練習しましょう」

「イエスマム!」


 二人は夜の約束をして地下駐車場に向かった。


 地下駐車場の一方の壁に土嚢袋が積まれ、紙に描かれた手作りの的が貼り付けてあった。土嚢袋には何本もの矢が突き立っていたが、的に当たっている矢は多くない。

 ちょうど滝本が弓を引いているところだった。弓鳴りの音が響き、矢が放たれた。的には当たったが、中心からは大きく外れていた。


「タッキー、どんな感じ?」

「タッキーって言うな。難しいな、威力は十分あるだろうが、当てるには練習が必要だな」


 塩ビパイプの弓は長さが1m30cmほどで、真ん中に20cmのグリップがある。パイプの両端を熱して柔らかくし、型にはめ平らに潰してあった。張られた弦は墨坪の糸で。ナイロン糸とアラミド糸を撚ってある丈夫な糸だった。

 矢はアルミパイプ製でやじりには釘の頭を落としたものが捩じ込んである。矢羽は二枚でクリアファイルから型抜きしたものが使われていた。


「今はこれで十分だ、水越は頑張ってくれたよ」

「えへへ~」


 滝本に褒めれてアユは嬉しそうだった。

 滝本は他の武器も二人に見せた。


 槍は二種類あった。

 一つは太さが5cm、長さが3mもあった。単管と呼ばれる、足場材に使われるパイプだ。もう一つは太さが3cm、長さが1m80cm位の配管用の鉄パイプ槍だった。どちらも先端が斜めに鋭くカットしてある。


「長い方は太過ぎて扱い辛い。グリップを取り付けて二人がかりで使うつもりだ。でかい相手用だな」


 メイスは細い鉄パイプ槍と同じパイプを80cmにカットし、先端に配管固定用のサドルバンドという金具で、木材柱に使われる筋交い補強金具を十字形に取り付けたものだった。


「こいつが一番使いやすそうだな」


 滝本が片手で振り回して見せた。見た目もメイスにかなり近かった。


 最後にアユがアルミパイプを曲げて、エクササイズ用のゴムバンドを取り付けたスリングショットを撃って見せた。弾はボルトだ。5mの距離から撃って、弾は土嚢袋にめり込んだ。


「気休め程度だが武器も揃った。後は訓練あるのみだな」

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